監督と選手の本音!24年ぶり4強入りの岩村田の秋~夏のチームの成長をぶっちゃけ!
シリーズ第2弾!「100キロ王子」で昨夏、一躍話題なった岩村田のエース内堀光陽の巧みなピッチングに加え、終盤の逆転劇や延長戦を制するなどの粘り強い試合運びで、2017年の長野大会で24年ぶりのベスト4を決めた長野県立・岩村田を徹底解剖!
岩村田の躍進のヒミツを「日頃の練習方法」と「チーム成長」の2つの軸から迫っていくシリーズ企画。この記事では、「チーム成長編~秋・冬・春のチームの変化」をお届けします。
▼チーム成長編「秋・冬・春のチームの変化」
▼日頃の練習編「毎日の打撃・守備・盗塁・投球練習でココが生きた!」
監督と選手の本音をぶっちゃけ!
- 8月~11月:2016年夏、新チームがスタート
- 【選手の本音】
新チーム開始直後は、みんなウキウキしてました。
練習試合でも勝てたりして、調子が良かったけど、地区大会のシード決めでサヨナラ負けしたんです。
そこでもう一度、自分たちの姿を見直すことができました。見直してみると、僕たちは練習とかでも、「隙(すき)」があることに気付きました。
その隙が逆転につながったんだなって。試合が終わってから、そこをチームとして反省して、今まで正直だらけてたなと思う部分はみんなでしっかりとやるようになりました。
練習試合も含めて、「ダメだったな」と思うところは、常に自分たちの日頃の行動に結び付けて、成長していくことができたのが良かったんだと思います。「負け」から学ぶことができた時期でした。
そこから、地区大会でも勝てて、秋は19年ぶりの県大会出場を決めることができました。
- 【監督の気持ち】
岩村田の選手たちの特徴でもありますが、とにかく真面目なんです。一人で責任を背負ってしまう子が多かった。打席でも追い込まれれば、打てずに手が止まってバットも振れなくなってしまったり。これは、学校の特性によって、生徒の雰囲気は変わってくるものなので、岩村田に就任してからは、なるべく、自分の気持ちを出せる雰囲気を作ろうと心掛けてきました。選手主体ってわけではないですが、出来るだけ選手の言葉が出てくるような。
ミーティングでも私から選手に話す時間は、前任校よりも短くしました。「俺が言いたいことがあれば、俺から言うから、お前たちは普通にミーティングしててね」って。ミーティングを聞いていて、「まだまだだな」と思っても、私は聞いているだけ。円陣には加わらずに、「言いたいことがあれば、試合中のベンチから喋るようにするから、そこで覚えていってね」って。秋の大会が終わってからは、実戦練習でも、サインを出さずに、選手の考えを引き出すことも大切にしました。例えば、今日の課題は、「1アウト一、三塁の場面を作ってみよう」だとします。
そうなると、「ノーアウト一塁で送る」じゃダメだねとか、じゃあ「盗塁して送る」とか、「ヒットエンドランをするか」という意見が出てくるわけですが、ここでこちらの考えを押し付けるのではなくて、「キミたちがどんな考えで野球をやっているか、僕が知りたい」っていう時期をすごく長く取るようにしたんです。
彼らがどんな考えで、どんな発想で、アイディアを出せるかを知るのが、この秋から冬の時期でしたね。
- 3月~6月:全く勝てなくなった春
- 【選手の本音】
練習試合が解禁になった春は、本当に、勝った覚えがないくらいでした。練習試合では、負けや引き分けばかりで、チームはどん底でした。春季大会も地区予選2回戦負け。
正直、この時のチームは本当に暗かったけど、暗くならないようにって、ミーティングだけはとにかく頻繁にやっていました。僕たちの代の場合は、練習後のミーティングが4種類ありました。秋から、ずっとやってましたが、春になってミーティングにかける時間が増えました。
【練習後に行うMTG】
1・全体MTG(仕切る人は日替わり。練習を仕切るのも日替わりキャプテン)
2・学年MTG(仕切る人は学年ごとで決まっている)
3・パートMTG(投手、捕手、内野手、外野手ごと。仕切る人はパートリーダー)
4・責任者MTG
また、他にも、春からは、キャプテン・班長・監督の3者間MTGも週1回、朝の時間で実施された。
全体MTGで話す内容は主に2点!
・「その日、良かったこと」と「改善すべきこと」を日替わりの責任者が発表し、メンバーが、一言ずつ、良かっ点と悪かった点を話、最後は握手をして終わる。毎日の練習での責任者が日替わりで決まるというのも岩村田の特徴だ。
- 【選手の本音】
自分たちの場合、飛びぬけたやつもいないんで、みんなで勝つしかないんです。
意見の共有って大事じゃないですか。みんなが同じことを認識してやらなければ、一つにはなれないと思っていたので。
技術的なこと、新しい情報、ダメなこと。それを全てチームで共有しないと、何回も同じことを言うことになって先に進めないので、ミーティングでそういったことも毎回話し合いました。毎日みっちりとミーティングをすることで、チームの変化がありました。
今までは、仕切る人と聞く人の一方通行のような感じだったけど、ひんぱんにやることで、話し合いがチーム全体にひびいている感じがありました。
あの時のミーティングがなかったら、負け続けたことで、みんなバラバラのままだったと思うんです。
また、暗くなっている僕たちが一番支えられたのは、花岡監督の言葉でした。監督は、試合に負けても怒ることはなくて、
「負けてても、あんまりマイナスに捉えるな」
「お前らの野球ができてる。どんなに点差が開いても、くらいついていく野球ができている」
「イメージ通りの試合ができてるぞ」
「あと一歩だぞ」っていつも励ましてくれました。
試合には負け続けましたが、徐々に、1点差まで追い上げて負けるとか、競って負けるとか、そんな試合も多くなっていったんです。監督は、変わらずに、プラスの言葉を掛けてくれて、「不安がないチームは、勝てない。不安があるからこそ、伸びしろがある。不安があることは当たり前だぞ」って、そんな言葉で僕たちを支えてくれました。
確かに、僕たちは、調子は悪かったけど、悪いなりの中で、自分たちの野球をすることができたから、夏の戦いにつなげていけたのかなって思っています。正直、みんな、大会に入ったら、自然と良くなるだろうって思ってましたから。
- 【監督の気持ち】
春からは、僕がミーティングに参加したのは何回あったかな。秋の段階までに、僕が伝えたいことは仕込んでおいたから、春からは3年生たちが僕が言いたいことを大体言ってくれるようになったので、流れとしてはいいかなと思っていました。
選手たちには、この頃から、ヒット1本打てても、エラーをしても、結果に対して一喜一憂せずに、自分はどんな心構えができていて狙い球が打てたとか、チームの決まり事を守れたとか、自分がどこに満足を得るかを考えてみてはどうか?ということを伝えていました。あとは、夏に向けて、自分のできることは何か?と話してきました。春前までは、自分の戦うべき武器は何か?を考える時期です。
守りの武器はあるのか?走る武器はあるのか?遠くに飛ばせる武器はあるのか?バントは100%できるのか?自分の携える武器をたくさん持て。でも、6月になったら、苦手をいくら磨いても武器にはならない。
肩が弱いなら、肩が強い人に外野を任せる。
足が遅ければ代打でヒットで出塁して、すぐに代走と代わる。
チームとしてみんなでできることと、できないことを確認し合って、ダメなものは他の人に任せましょうという時期が6月。
つまり、『戦いを略す』ことが大事なんです。自分の戦う上で略さなくてはいけないものはなんだ?省かないといけないものはなんだ?ということを夏前は話しています。
岩村田の選手たちや花岡監督の言葉から、『戦うチーム』になっていく様子が分かりますね。
グラウンド内での練習だけでなく、チーム間のコミュニケーションの大切さ、また指揮官の声掛けの重要性なども見えてきます。
皆さんも何かチームで取り入れられそうな“思考”はありましたか?
次は、実際に夏の大会でも生きた岩村田の戦い方を見てみましょう!
▼日頃の練習編「毎日の打撃・守備・盗塁・投球練習でココが生きた!」
(取材=安田未由)
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