「二段モーションOK」は高校球界にどんな影響をもたらすのか?
左から原嵩投手(千葉ロッテマリーンズ・写真は専大松戸高時代)、菊池雄星投手(埼玉西武ライオンズ)
1月11日、プロ・アマ合同の日本野球規則委員会は2018年度公認野球規則改正点について摺り合わせを実施。ここでは、申告制の故意四球(敬遠)の採用と、公認野球規則の定義38から日本独自の【注】が削除されたことが大きなニュースとなった。
端的に言えば走者がいないときに「二段モーションがOK」となったのである。では、「二段モーションOK」によってもたらす投手の影響とは?多角的に考えてみたい。
まず、この規則改正は投手にとって朗報であることは間違いない。走者がいない時に二段モーションであることを気にすることなく投げることができるからだ。投手にとって投球フォームはデリケートなもので、一朝一夕で出来上がるわけではない。ではどういう目的で作り上げるのかといえば、
「自分にとって投げやすいメカニズム、リズムで投げられ、さらに負担がかかりにくいフォームで投げるため」
に尽きる。その再現性を高めるために日々のピッチング練習に取り組み、球速アップ。投げ方に合った変化球習得に取り組む。投球フォームは投手にとって幹となる部分なのだ。自分の投球フォームが完成したとき、最大限の力を発揮することができて、活躍につながるのだ。しかしそのフォームが、二段モーションと宣告されたとき、修正をしなければならない。しかし自分の体に染みついた投球フォームから修正して、ベストピッチングができるかといえば、なかなかできるものではない。
実際、埼玉西武ライオンズの菊池雄星投手が昨年の8月24日の福岡ソフトバンク戦で、初球を投じた後に反則投球を宣告された際、菊池投手はすぐに投球フォームを修正したが、2回7失点と今までの快投とでは、信じられないようなピッチング。また、高校野球で有名な例をあげれば、2015年の甲子園で、専大松戸の原嵩投手(現・千葉ロッテマリーンズ)が先発した花巻東戦で、初回に二段モーションを指摘され、投球フォームを修正したが、本来のピッチングができず、5回途中で4失点、5四死球で降板。初戦敗退となった。2つの例から見るように、二段モーション禁止というのは投手にとって苦しいルールで、ルールが改正されたことは投手にとって朗報ともいえるニュースだ。
しかし今回のルール改正はあくまで走者がいない時のみ。走者がいるときは二段モーションに気を付けなければならないのは変わりない。そこで求められるのは自分の引き出しの多さである。投手の真価は走者を出してから問われるように、あらゆる場面を想定して、日々のピッチング練習に向き合うことである。菊池投手も二段モーションを宣告されて、一時は苦しんだものの、しっかりと修正を図り、最多勝(16勝)、最優秀防御率(1.97)の二冠を獲得した。菊池投手の修正能力の高さは見習いたい点である。
今回の規則改正がどんな影響を及ぼすのか?ぜひ高校生投手の皆さんには柔軟に対応することを期待したい。同時に、今後開催される各都道府県ごとの審判講習会や練習試合では、指導者の皆さん含め、チームの関係者はぜひ積極的に審判の皆さんとコミュニケーションを取り、お互いの技術向上に努めてくれることを切に願いたい。「野球のゲーム」は、選手たちだけでなく、指導者だけでなく、審判をはじめとする協力者あって成り立つもの。その精神を共有できてさえいれば、「ランナーなしでの二段モーションOK」の真意がどこにあるかは、自然に解るはずだ。