川畑大地(乙訓)「チームの精神的支柱。初の近畿大会4強で得たもの」
京都大会から快進撃を見せてきた乙訓。準々決勝で2年連続選抜出場の智辯学園を9対4で破り、準決勝の智辯和歌山には9回表までリードするなど、力強い戦いを見せてきた乙訓。選手たちの考え、話を聞くと、エース・川畑大地を中心としたチームであることが分かった。原動力となった川畑の歩みを振り返る。
乙訓の精神的支柱となった川畑
入学当時から135キロを投げるなど、投手としての才能は光るものを持っていた川畑。1年秋から富山とともに公式戦に登板。秋はベスト4入りしたものの、2年春は、2年夏は初戦敗退と、苦しい時期を送っていたが、それでも2年夏には最速140キロに達しており、順調にその素質を伸ばしてきた。だからこそ、新チームがスタートしたとき、選手たちは「川畑、富山の2人は守りを計算できるので、自分たちが打って、援護できるチームを目指しました」とともに投げる富山抜きでは語れないチームを目指していたのである。そして任されるのは、先発だけではなく、リリーフとして。市川博久監督は、川畑にリリーフを任せる理由についてこう語る。
「やっぱり精神的なところですね。川畑はメンタルが強く、落ち着いて投げることができる。だからこそプレッシャーがかかる後ろでは、川畑に任せることができるかなと」
そして同じく2枚看板として投げる富山も川畑のことをライバルとして認めつつも、川畑のことを信頼している。
「練習では良きライバル、試合では良き仲間として頑張っています。川畑がいるからこそ、先発で投げるときは思い切り投げることができます。練習の時は技術的なアドバイスを指摘しあうこともありますが、試合の時は、精神的なアドバイスもいただいて、本当にありがたい存在です」
京都大会では一次戦、二次戦を勝ち抜き、近畿大会出場がかかった準決勝の立命館宇治戦では、富山が7回無失点の好投を見せ、川畑が8回からリリーフとして登場し、無失点の好リリーフを見せ、初出場に貢献。決勝戦の京都翔英戦では、2失点完投勝利を挙げ、見事、京都1位で出場したのであった。
初戦をコールド勝ちして、2回戦の智辯学園戦で、2回1失点のリリーフを見せ、選抜へ前進。迎えた準決勝の智辯和歌山戦では、先発として登場した。
智辯和歌山戦で学んだこと
1回~3回までボールが高めに浮いてしまい、3失点。川畑は「準決勝、相手は智辯和歌山というところで気持ちが高ぶり過ぎてしまったところがあったので、まずは自分を落ち着かせることを意識しました」とメンタルコントロールを意識し始めてから、ピッチングの状態を取り戻す。ストレートはコンスタントに140キロ前後を計測。140キロ以上は10球以上を計測。今年の近畿大会では3本の指に入るスピードキングで、柿木蓮(大阪桐蔭)にひけをとらない平均球速を誇り、さらに120キロ後半のスライダー、120キロ台のチェンジアップ、カーブを低めに集めながら、高めのストレートで、三振に奪うなど、強打の智辯和歌山打線に対しても互角以上のピッチングを見せた。
8回まで3失点に抑えていた川畑を援護しようと、9回表、乙訓は主将の中川健次郎の適時打で勝ち越しに成功し、いよいよ勝利まであと3人となった。しかし連続四球で無死一、二塁。そして6番根来塁に、「甘く入ったところを打たれた」と打球は左中間を破る長打となり、サヨナラとなった。決勝進出は潰えたが、川畑自身、課題は見えた。
「終盤でのコントロール。ああいう場面でもコントロールを乱さず投げられるスタミナは身に付けていきたい」と語った川畑。この日は「腕を強く振ること」を意識し、終盤でも、140キロ台を計測していた川畑。投げるボール、スタミナは現時点でも高いレベルにある。強豪校相手に1試合通して投げるには、どんな組み立てをすればいいか、学んだ試合になったことだろう。
市川監督は「今後、高いレベルでは絶対にああいう場面があります。それを経験できたのは良い勉強となりました」
その場面は選抜なり、夏の京都大会なり、絶対に訪れることだろう。乙訓快進撃の原動力となった川畑大地。ここまでの投球は近畿地区でも屈指の好投手として推せる内容は示した。全国レベルの好投手へ大きな宿題をもらった智辯和歌山戦。来春、誰もが惹かれるような快投をぜひ魅せてもらいたい。
(取材・河嶋宗一)
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