Interview

シンクレア ジョセフ孝ノ助(西武育成1位) 「徳島入団半年」でドラフト指名!「将来は菊池雄星のような投手に」<インディゴソックス ドラフト指名6人全員インタビュー⑤後編>

2023.12.19


シンクレア ジョセフ孝ノ助

今年のドラフト会議で西武から育成1位指名を受けたシンクレア ジョセフ 孝ノ助投手(徳島インディゴソックス)。アメリカの大学から徳島に入団し、NPB入りを決めた異色の逆輸入の投手である。

もともとメジャーを目指していたシンクレアだが、高校で指名漏れ、短大から強豪大学を目指すも叶わず、メジャーの夢は遠ざかっていた。そこで大学卒業を機に次の夢であるNPBを目指してインディゴソックスの門をたたいたのだった。

前編はこちら
シンクレア ジョセフ 孝ノ助(西武育成1位) MLBを目指していた逆輸入の大型左腕はなぜ徳島を選んだのか?<インディゴソックス ドラフト指名6人全員インタビュー⑤>
**************

監督を質問攻め

シンクレア ジョセフ 孝ノ助(投手・徳島インディゴソックス)

シンクレアがインディゴソックスに入団したのは、今年の5月。すでにシーズン中だ。他の選手はキャンプイン、オープン戦を経て、じゅうぶんなトレーニングを積んでいた。
「インディゴソックスのみんなは、NPB入るっていう目標で動いていたんで、溶け込みやすかったです。みんなレベルが高くて、刺激し合って競争している。いい練習環境だなって思いました」
NPB入りを目指して、シンクレアは積極的にチーム首脳陣とコミュニケーションをとって自ら成長のカギを探した。
「監督の岡本(哲司)さんがNPB複数の球団で二軍監督をされてる方なんで、どんどん質問させてもらいました。あの、僕、質問するのが好きなんで(笑)。身体の動かし方などいろんなことを学ぶことができたので、すごいいい時間だったかなと思います」

まず、シンクレアはピッチングスタイルを変えた。
「大学時代は、四球でランナーが溜まって、一発や長打を打たれるみたいな感じが多かったんです。徳島ではとにかくど真ん中でもいいからストライクをいっぱい投げようっていう気持ちで投げるようにしました。三振狙うっていうよりは、打たせていかに簡単に3つのアウトを取れるかを意識していました」

そのためにフォームの修正に取り組んだ。
「足を上げてから初動の方向を変えました。右足をあげた時、体が三塁側に残ったり、きれいにホームに向かって沈むことを意識しました。それまでは腕が変に抜ける事が多かったんですけど、ちゃんとリリースが安定して、ミスするにも幅が狭くなりました」
得意としていたスライダー、ツーシームも使い分けを行った。
「四国アイランドリーグは左打者が多かったので、いろいろ使っていましたね。打者の肩口から入るようなスライダーを投げたり、真ん中から外へ逃げるスライダーを使っていました。
またツーシームは特に左打者の手の近くに投げることができるか、挑みました。真ん中に向けて投げると、ストライクに見えるので、有効的です。右打者にとっては逃げるボールになるんですけど、外角低めにチェンジアップのように逃げていく感じだったりで、たまにインコースにまっすぐ投げて、出し入れをしていました」

辛かった“日本の夏”

少し顔をゆがめるシンクレア ジョセフ孝ノ助

インディゴソックスのテーマは「鍛えて勝つ」。徹底的なフィジカル強化を行い、野球選手のパフォーマンスをあげていく。シンクレアもトレーニングで身体を強化していった。
「『インディゴコンディショニングハウス』のトレーナーさんの話も聞きつつ、自分の考えも混ぜつつやりました。シーズン中に入団したんで、(大学までやってきた)メニューを変に変えても怪我する可能性がある。そういう部分は気を付けながらやっていました。ウエイトトレーニングしつつ、可動域をキープしつつ。で、それがある程度できるようになってからは、パワー系のトレーニングに移ったりしていました。」

今年のインディゴソックスの「ドラフト6人組」の中には、椎葉 剛(阪神2位)のようにウエイトトレーニングをほとんどやらなかった選手もいるが、シンクレアは違った。
「トレーナーさんから『シンクレアは結構わかってるのか、自分の考えがあるんだな』と言われました。自分は中学生の時からずっとトレーニングを継続してやっていたんです。(中学時代を過ごした)カナダはウエイトの基本を教えるのが日本より早いですね。高校の時には、トロントブルージェイズのトレーニングコーチから冬休みの2ヶ月ぐらい指導してもらったこともあります。大学までの知識をインディゴソックスのアドバイスで極めていったという感じです」
練習に、トレーニングに励む中で、困ったこともあった。
「日本の夏に慣れてなくて……。練習もすごいきつくて。それに慣れるのは結構大変でした。水風呂に入ったり、水分補給も徹底しました。色々工夫して、なんとか夏を乗り越えたという感じですね」

スカウトの前で発揮された強靭なメンタル

指名の瞬間、思わず立ってガッツポーズするシンクレア ジョセフ孝ノ助

環境の変化に対応しながら、努力を続ける中で、決して忘れなかったことがある。
「シーズン中、一番大切なのは試合。どんなにトレーニングしても、試合で結果出せないのは意味ないので、試合のことを考えて逆算してやってました」
その結果、シンクレアは11試合登板し、防御率は驚異の0.56をたたき出した。
「ラッキーなことも多かったですよ。ファインプレーで、1点も取られずに終わった回もありましたし。自分としてはめちゃくちゃすごいピッチングしたつもりはないんですけど。ただ、NPBのスカウトが来ている日に、ある程度アピールできたかなとは思います」

言うまでもなく、独立リーガーはNPBのスカウトの前でアピールしなければ指名はない。しかし、スカウトを前に硬くなってしまう選手も多いだろう。
「そういう試合はやはり燃えますよね。自分の人生がかかっているので。僕がいつも考えていたのは、『僕を見てきてくれているということは、すでに評価されているということだ。だから、いつも以上のことはする必要はない』ということでした。いつも通りの投球をすれば、結果は伴ってくると思います」
こうしたメンタル的な強さもシンクレアの魅力だ。彼は結果を残すにはどうすればいいのか、常に前向きに考え行動できるのだ。

スカウトの前でもしっかりアピールしたシンクレア。迎えたドラフトでは西武から育成1位指名を受けた。日本に来てたった5カ月だった。
「めちゃくちゃ嬉しかったですね。肩の重さがちょっとなくなって、新たなスタートなんだとか色々考えましたけど、この一瞬は人生で1番嬉しかったです」

「自分はできるんだ」という自信を持つ

シンクレアジョゼフ孝ノ助

西武は日本にいた時にテレビでよくみていた球団だった。
「カナダ、アメリカにいる間はそんなにNPBの野球見られなかったんですけど。僕がちょうど日本に住んでいた小学校2年生の時、菊池雄星投手のドラフトの年(2009年)だったんです。それをきっかけとして、菊池雄星投手の試合の動画とかを見ていたので、西武の印象が結構強くのこっています」

西武は今年ドラフトで1位の武内 夏暉投手(八幡南-國學院大)、3位の杉山 遥希投手(横浜)など左の好投手を多く指名した。ライバルは多い。それでも自分を崩すことはない。
「競争というよりは『まずは自分が目立てばいいかな』っていう感じです。多分僕の場合、他のピッチャーに比べられるっていうよりは、個人として評価されるパターンだと思う。 周りを見るのも面白いですけど、相手と比較するのは、疲れる。自分に集中して、自分の中での1番の左ピッチャーになっていければと思います」

キャンプインまでの課題についても語った。
「いい感じに筋肉量を増やして出力を上げつつ、可動域を広げるトレーニングもしていきたいと思っています。走るスピードだったり、投げるスピードだったりを落とさず、体を大きくできればなと思います」

わずかな期間の在籍だったが、シンクレアはインディゴソックスへこんな言葉を贈った。
「徳島インディゴソックスっていう環境があったからこそ、こういう結果になったんで僕にチャンスを与えてくれた関係者の皆さんにはめちゃくちゃ感謝してます」

徳島インディゴソックスで伸びる選手の傾向についても語ってもらった。
「トレーニングが好きな選手は絶対向いていると思います。あと自己管理のできる選手です。独立リーグの生活ってやっぱり過酷なので。あとは自分に自信があって、僕はできるんだっていう考えられる選手じゃないとダメだなと思っています」

シンクレアはその言葉を体現する半年間だった。そしてプロでの目標を語った。
「プロ1年目は、1軍登板っていうのが僕の中での今の1番の目標です。まあ将来的には 菊池雄星投手みたいに、闘争心があって、躍動感のある感じの投手になれたらと思います」
熱い気持ちと冷静さを兼ね備えたシンクレア。必ずやNPBでも活躍してくれることだろう。

取材・文 河嶋宗一(編集部主筆)

<関連記事リンク>
【徳島インディゴソックス指名6人全員インタビュー】他の記事はコチラから

この記事の執筆者: 河嶋 宗一

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.17

仙台育英に”強気の”完投勝利したサウスポーに強力ライバル現る! 「心の緩みがあった」秋の悔しさでチーム内競争激化!【野球部訪問・東陵編②】

2024.04.17

昨秋は仙台育英に勝利も県4強止まり「サイン以上のことをやる野球」を極め甲子園目指す【野球部訪問・東陵編①】

2024.04.17

「慶應のやり方がいいとかじゃなく、野球界の今までの常識を疑ってかかってほしい」——元慶應高監督・上田誠さん【新連載『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.1】

2024.04.17

根尾 昂、一軍昇格へ準備着々! 盤石・中日投手陣に割って入れるか?

2024.04.17

【茨城】土浦日大と明秀日立が同ブロックに!選抜出場の常総学院は勝田工と対戦!<春季県大会組み合わせ>

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!

2024.04.15

四国IL・愛媛の羽野紀希が157キロを記録! 昨年は指名漏れを味わった右腕が急成長!

2024.04.12

【九州】エナジックは明豊と、春日は佐賀北と対戦<春季地区大会組み合わせ>

2024.04.12

【東京】ベスト8をかけ激突!関東一、帝京、早稲田実業などが登場<春季都大会>

2024.04.09

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード