【小関順二のドラフト指名予想】広島東洋カープ編 「黄金時代へ 需要に合ったドラフト戦略を」
広島東洋カープ 今季戦績
143試合 88勝 51敗 4分 勝率.633 セ・リーグ1位(10月10日現在)
次世代正捕手候補・坂倉がいるのに、中村をなぜ単独1位指名するのか?
左から中村奨成、坂倉将吾
中村奨成(広陵・捕手)を1位で入札すると表明した。清宮の指名合戦からはいち早く離脱し、投手でいくか中村でいくかで悩んだのはファームに次代の正捕手候補、坂倉将吾がいたからだろう。高校卒1年目・坂倉のファームでの打撃成績は打率.298(ウエスタンリーグ2位)、安打85、盗塁13という見事なもので、私が重視する打数は285と多く、長打率.400も今後の飛躍を予感させる。この坂倉がいても中村を1位で入札するというのは、それだけ中村の評価が高いということである。
FA制度がなかった頃、期待の若手が成長すると監督は「これでショートは向こう10年心配ない」などと言った。FA制度の導入やポスティングシステムの広がりで一流選手ほど流出を心配する時代になったが、93年以前なら中村を獲得した監督は「向こう10年キャッチャーは補強しなくていい」と言っただろう。
次代のレギュラーキャッチャーを懸けた戦いが坂倉と中村の間で展開されるわけだが、中村を外野あるいはショートにコンバートするという憶測記事がマスコミを賑わせている。あるスカウトに「広島が中村を獲得したら坂倉はどうしたらいいんでしょうか」と聞くと、そのスカウト(広島以外の球団)は「日大三では2年まで外野を守っていたんだから、外野に戻せばいいんじゃないですか」と答えてくれた。中村のキャッチャーとしての素質に疑いを持っているスカウトは少ないということである。
[page_break:実戦力が高い田浦文丸はカープの需要に合う左腕投手だ]実戦力が高い田浦文丸はカープの需要に合う左腕投手だ
田浦文丸(秀岳館)
中村を指名できたら2位以下は高校生投手を指名したい。広島には主力で24歳までの若手投手が実は少ない。長井良太(来季19歳)以下、高橋昂也、アドゥワ誠20歳、塹江敦哉、高橋樹也21歳、藤井皓哉22歳、床田寛樹、中村祐太23歳、加藤拓也、辻空24歳という若手の中で主力は中村くらいである。これでは将来の備えができない。
1位候補の石川翔(青藍泰斗)は2位以下では無理なので除外して考えると、田中瑛斗(柳ヶ浦)、本田仁海(星槎国際湘南)、清水達也(花咲徳栄)という選手が2位以下では考えられる。また広島は近年左腕不足に見舞われている。主力の左腕と言えばジョンソンくらいで、それ以外の一軍で勝ち星を挙げたのは新人・床田の1勝だけというのはあまりにも寂しい。高校、大学、社会人に関係なく2位以下で獲れそうな左腕は田浦文丸(秀岳館)、永野将司(Honda)、櫻井周斗(日大三)、高橋遥人(亜細亜大)という面々。この中で実戦力が評価されているのが田浦だ。
U-18ベースボールワールドカップでは守護神として活躍、日本選手ではただ1人、救援投手部門のベストナインに選出されている。全6試合に登板し、成績は13回3分の2を投げて被安打6、奪三振29。相手がアメリカでも韓国でも高校生レベルでは捉え切れないチェンジアップを勝負球にし、ストレートの最速も148キロと速い。メジャーリーグに時々出現するナックルボーラーのような異能の一芸投手になる楽しみがある。
野手は田中広輔の実弟、田中俊太(日立製作所・二塁手)が面白い。盤石のセカンド、菊池涼介がいて出番は限られそうだが、WBCで好プレーを連発した菊池に注目するMLB関係者は多く、いつ移籍騒動が起こるかわからない。セカンド以外の守備に就く姿は見たことがないので他ポジションへのコンバートの可能性は口にできないが、走攻守3拍子揃った田中だけに活用法はいろいろ考えられそうだ。
(文・小関 順二)
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