試合レポート

鳴門渦潮vs板野

2017.07.27

「ザ・キャプテン」森井 絃斗率いる板野破った鳴門渦潮、現校名で初甲子園!

 この日、最大の感動は試合後に用意されていた。一塁側ベンチ前では2012年4月に現校名となって初の甲子園出場を決め、歓喜を爆発される鳴門渦潮のレギュラー陣。一方、三塁側ベンチではガックリとベンチに腰を落とし、涙に暮れる板野のレギュラー陣。明暗くっきり分かれるベンチを横目に両校の控え選手たちは閉会式に向けてグラウンド整備を行っていた。

 そこに混じって黙々とグラウンド整備を行っていたのは縦じまに背番号「1」を背負う大柄な男。そう、板野の最速150キロ右腕・5試合44イニングを1人で投げぬいた森井 絃斗(3年主将・184センチ88キロ・右投右打・徳島中央シニア)である。

 今大会は準決勝まで1安打完封1回・1安打完投1回含む4連続完投で被安打12・38奪三振・11四死球・失点4・自責点3で防御率0.75。25年ぶりに板野を決勝の舞台に導く大車輪となった森井。しかし、この試合では8回を投げ127球で被安打10・四死球3・7奪三振・失点6の自責点5。初回は二死満塁から鳴門渦潮6番・奥 直人(3年・右翼手・175センチ78キロ・右投右打・大阪ニューヤング<ヤングリーグ・大阪>出身)に中前2点打を浴び、その際に女房役兼リードオフマンの前田 倫兵(2年・捕手・172センチ63キロ・右投右打・北島町立北島中出身)が負傷交代。その後は本来の投球ができず不完全燃焼で力尽きる形に。初の甲子園出場を果たせなかったことに対しては、自らが最も悔しいに違いない。

 にもかかわらず、両校の控え選手たちに一言声をかけ、健闘をねぎらいながらグラウンド整備を行った森井。そして閉会式では……車椅子で登場せざるを得なかった前田の後ろには森井が常に寄り添い、車椅子を押してベンチまでの道のりを案内した。

 すでに大会前から社会人・セガサミー入りを表明していた森井であるが、この一連の姿はすでに「一高校球児」を超え「一社会人」として範とすべきもの。この「ザ・キャプテン」森井 絃斗に心から拍手と賞賛を送りたい。

 もちろんその森井を打ち崩した鳴門渦潮もまた立派である。特に決勝戦でも4打数2安打2打点。これで大会16打数7安打6打点とした高校通算14本塁打の1番・豊久 雄友(3年・中堅手・179センチ70キロ・右投左打・生光学園中<ヤングリーグ>出身)。2回戦・阿南高専戦で高校通算7号含むサイクル安打、決勝戦でも二死二塁からチーム4点目となる技あり左前適時打を含む4打数2安打1打点で15打数7安打5打点とした3番・野口 智哉(3年・遊撃手・180センチ76キロ・右投左打・葛城ボーイズ<奈良>出身)は、課題とされていた守備面でも終始安定した動きを披露。「全国区」の名称を手にして聖地に乗り込む準備を完全に整えたといってよい。

 かくして決勝戦でも延べ8回3分の2を5安打8奪三振無失点に抑えた左腕・河野 成季(3年・左投左打・178センチ74キロ・左投左打・徳島藍住シニア出身)をエースに全国へ歩を進める鳴門渦潮。かつて甲子園を沸かせた鳴門工鳴門第一のブランド。そして森井 絃斗を筆頭とする全徳島県高校球児の想いも背負って、彼らは渦潮渦巻く鳴門海峡を渡り、聖地で自分たちを存分に表現しにいく。

(レポート=寺下 友徳

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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