試合レポート

日大三vs霞ヶ浦

2017.05.22

剛速球左腕・金成麗生、5回途中3失点降板も成長を示す

日大三vs霞ヶ浦 | 高校野球ドットコム
金成麗生(日大三)

【ギャラリー写真32枚追加!】

 デカプリオこと金成麗生。これまでスラッガーとして注目されてきたが、ここにきて投手としての評価が急上昇している。春季東京都大会決勝戦の早稲田実業戦で登板した金成。ストレートは最速148キロを計測したが、コントロールは定まらなかった。ブランクの長さが否めない内容だった。だが、登板した状況も、緊迫した場面だったということもあり、少し期間を置いて、投手として練習を重ねたら、どんなピッチングを見せるのか、楽しみな投手であった。その機会はすぐに訪れ、関東大会準々決勝で実現した。

 金成はブルペンから力強いピッチング。捕手・高橋遼に剛速球を投げ込んでいた。ブルペンの後ろでは人だかりができ、第1試合を終えた前橋育英ナインも金成の投球を凝視していた。高校生ではあまりお目にかかれないような威力抜群のストレートだった。

 金成は立ち上がりから140キロ台の速球を連発。速球に強い4番木村翔大が145キロのストレートを空振り三振。金成のストレートの威力が際立ったシーンだった。フォームの一連の流れがだいぶ良くなった。春季東京都大会決勝戦は力任せで投げているだけで、リリースポイントが安定しなかった。

 だが、大会後、日々のブルペンで投球練習を重ね、フォームを固めてきた。金成の投球フォームを分析すると、ノーワインドアップからゆったりと始動。そこから右足を胸元の近くまで上げていきながら、左足を真っすぐ立ち、腰を深く沈めていく。193センチ101キロという巨体だが、腰を沈めて、重心移動ができる柔軟性が金成にはある。そして右腕のグラブを斜めに伸ばして、開きを抑えることができている。肘の柔軟性も高く、しっかりと肘をたたんでから、打者寄りでたたきつけるようなリリースで腕を振っている。この試合では最速146キロを計測したが、力を入れたストレートがしっかりとストライクゾーンへ投げられるのはフォームが安定している証拠だ。この試合の平均球速は141.6キロ。高校生で146キロを3球投げる投手はそういない。また先発で141.6キロも高校生左腕として別格。改めて今年の高校生左腕で最も速い投手であることを証明した。


 また金成の成長は小倉全由監督の的確なアドバイスも生きている。
「真ん中付近で勝負すればいいよ」
投手経験が浅い金成に配球を求める必要はないだろう。193センチのオーバースローで、さらに145キロ前後の速球を投げ込む金成がアバウトにボールを散らすだけでも、立派な配球になる。また新しく取り入れたスライダーも上手く決まった。エース・櫻井周斗からスライダーの握りを教わり、自分なりに投げやすい握りにした金成は、115キロ前後の曲がりが大きいスライダーを習得。まだ完成度が低いと語るが、それでも腕が緩むことなく投げることができており、精度もまずまず。ストレートとスライダーのコンビネーションで、霞ヶ浦打線に4回まで無失点。打線も、3回裏までに7安打6得点。金成自身も2安打を打ち、投打とも調子を上げていた。

 しかし5回表、ストレートの球速ががたっと落ち、3番丸山怜央那に3ランを打たれて降板した。投球成績は4.1回を投げ、5奪三振、5四死球、89球、3失点。金成は「5回を無失点に抑えることができればよかったのですが…、こういう結果になって悔しいですが、練習してきたスライダーで空振りを奪うこともできたのでよかったです」と自身の取り組みに手応えが出ていることを口にした。

 まだ投手経験は浅い。修羅場をくぐった経験も少ない。夏まで与えられた登板機会でしっかりと積み上げて夏につなげることを期待したい。

 一方、敗れた霞ヶ浦もプロ注目のエース・遠藤淳志が力投を見せた。3回裏、一死一、三塁の場面で登板した遠藤は、常時135キロ~140キロの角度ある速球で連続三振。遠藤の長所は重心移動がしっかりしていて、さらに肘の柔軟性も高く、開きが抑えられた完成度の高いフォームをしていること。そのため投げるストレートは球速表示以上の勢いを感じさせる投手。日大三打線は遠藤のストレートに振り遅れていた。120キロ前後のスライダー、ブレーキングが効いたカーブも冴えわたり、5回裏に津原瑠斗に2ランを打たれてしまったが、それ以降はしっかりと無失点に抑えるピッチングを見せた。

 霞ヶ浦打線は後半に追い上げ、7回表には出頭慶大の適時二塁打で1点、9回表には小儀純也の適時三塁打、内野ゴロで2点を返し、8対6と2点差まで追い詰めた。夏の戦いに期待を持たせる試合内容となった。

(取材・写真=河嶋宗一

日大三vs霞ヶ浦 | 高校野球ドットコム
注目記事
2017年度 春季高校野球大会特集

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.31

【鹿児島NHK選抜大会】鹿児島実がコールド勝ち!川内商工は終盤に力尽きる

2024.05.31

夏の愛知大会は6月28日から開幕!決勝戦は7月28日【愛知大会要項】

2024.05.31

【鹿児島NHK選抜大会】鹿屋農が"強気の勝負"で勝機を引き寄せ4強入り

2024.05.31

【中国】広陵VS鳥取城北、県3連覇同士の対決に注目<春季地区大会>

2024.05.25

首都2部優勝の武蔵大の新入生に浦和学院の大型左腕、左の強打者、昌平の主軸打者など埼玉の強豪校の逸材が入部!

2024.05.25

【熊本】九州学院、熊本工が決勝へ<NHK旗>

2024.05.25

【関東】白鷗大足利が初、逆転サヨナラの常総学院は15年ぶり決勝<春季地区大会>

2024.05.26

【近畿大会注目チーム紹介】実力派監督就任で進化した奈良の名門・天理。超高校級の逸材3人を擁し、緻密な攻守で全国クラスのチームに!

2024.05.25

【岩手】盛岡大附がサヨナラ、花巻東がコールドで決勝進出、東北大会出場へ<春季大会>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.01

春季大会で頭角を現した全国スーパー1年生一覧! 慶應をねじ伏せた横浜の本格派右腕、花巻東の4番、明徳義塾の正捕手ら入学1ヶ月の超逸材たち!

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得