Column

県立ふじみ野高等学校(埼玉)「秋ベスト8に満足せず、強い思いで冬を過ごす」【後編】

2016.12.06

 前編では、ふじみ野が県大会を勝ち上がるまでの過程や、日別の練習メニューなどを振り返っていきました。後編では、秋の大会について選手たちは思っているのか、そして来年へ向けて意気込みを伺いました。

秋ベスト8も、選手たちは満足していない

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エースの髙野将生君(県立ふじみ野高等学校)

 そんな環境の中から、この秋、ふじみ野は埼玉県内の公立校としては唯一のベスト8入りを果たしたのだ。しかし、選手たちはその結果では満足していない。

 主将としてチームを引っ張り、打ってもクリーンナップの一角を任される森 峻亮君は、この秋の自分自身の目標としては「打率4割」を掲げていた。しかし、それが達成されなかったこともあって、「秋季大会の結果については、個人としては目標達成できてなかったので達成感はありませんでした」という思いだった。そして、主将としてもベスト8という成績に対しても、「決して満足していません」という思いは強い。それでも、「これが来年の春季大会や夏の大会に繋がっていければいい」と考えている。

 そして、そのためには、自分自身としては、「チャンスをものにする打撃とチャンスを作る打撃、長打力を磨いていく」ということをこの冬のテーマに掲げている。そのためには、「打撃練習の時から、状況や場面を設定して、打つこと」を心掛けていきたいという。これは、チームとしても取り組んでいくべきことだと考えている。

 エースで4番を任されて、まさにチームの大黒柱であり、ふじみ野のキーマンと言っていい存在の髙野 将生君は、周囲からの期待通りに、「投打でチームを引っ張っていくこと」を自身の目標としている。しかし、この秋に関しては、「今までで、一番いい結果ではあったけれども、もっとできると思いました」という思いだ。そして、個人としても、「ミスが多くあって、やり切れていたとは言えない」と満足はしていない。

 だから、これから一冬を越えていくにあたっては、「下半身を鍛えてしっかりとした身体全体を使った投球をしていきたい」という気持ちだ。4番打者としては、「しっかり芯でとらえていきたい」と見つめ直している。
「一人ひとりはそんなにすごい選手がいるというのではないですけれども、チームとして動けば強い力が出せるチームだと思いますから、全員がもっと強いスイングを身につけていきたい」ということを目標として掲げている。

「レギュラーを取って、チームに貢献できる選手になりたい」という思いが強いのは、競争の激しい内野手でセカンドを狙う佐藤 立樹君と捕手の坂本 吉伸君だ。佐藤君は、秋季大会に関しては、「自分の納得のいくプレーができずに悔しい思いをしたので、この悔しさを来年は晴らしたい」という気持ちが強い。

 そして、「自分は試合でも、声が出ていなかったことが多かったと思うので、普段の練習から、もっと声を出していきたい」という意識と、「1本でも多くノックを受けて1球1球に試合を意識してやっていきたい」という気持ちで練習に取り組んでいくという。

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充実とした冬を過ごすために

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大久保祐貴君(県立ふじみ野高等学校)

 坂本君も、「大会ではいろいろなポジションで出場したけれども、結果を残せなかったので達成感はない」と言う。そして、チームのベスト8という結果に対しても、「春日部共栄戦は勝てたと思うので、悔しい」と、満足感よりも悔しさの方が大きいという。

 内野と外野でユーティリティーにポジションを与えられている大久保 祐貴君は、「秋季大会では、試合には出られなかったので、新チームになって、レギュラーを取るという自分の目標は達成されませんでした」と、満足感はなかったという。そして、自分自身の向上のためには、「スイングスピードを上げて、強い打球を打てるようになりたい。そのためには、パワーがないので、ウエイトトレーニングなどでパワーをつけて、打撃練習を徹底して打撃強化をしていきたい」と思っている。そして、それはチーム全体に対しても、バットを振り込んでいき打撃力が上がると、自分だけではなく全体で、より高い打撃力をつけていくことが出来るように冬を過ごしていきたいという思いだ。

 1年生で試合に出場していた松尾 透君は、「チームとしての成績は、よかったとは思いますが、自分自身はチームにはあまり貢献できませんでした」と反省している。そして、自身の課題としては、「打球を遠くに飛ばせるように、バットをたくさん振ることと筋肉をつけること」をあげている。

 チームの誰もが、「大量点で勝つというチームではないので、少ないチャンスをものにしてしっかりと守っていけるチーム」(大久保君)と思っているが、それだけに、打撃力のアップを冬の一番のテーマとしている。これは、ある意味では、自分たちの弱点も見えていると言ってもいいのではないだろうか。このあたりは、山崎監督の目指している、「ある程度は、やらせていきながら、自分たちで考えていく姿勢」の表れとも言っていいであろう。

 そんなチームに対して、マネージャーとして側面から尽力している渡辺 星(きらら)さんはこう見ている。「“想いは熱き甲子園”で、愛される野球部として、応援される野球部を目指して“一生懸命”をモットーに頑張っていきたい」という思いだ。そして、そのために自分自身の役割としては、「冬は体力づくりがメインになると思うので、今まで以上にご飯が進むように、炊き出しなども含めて、選手たちの身体づくりをサポートしていきたい」と思っている。
秋季大会のベスト8に対しては、「いい結果で嬉しいけれども、後悔と反省もたくさんありました」というのも本音であろう。

 来るべき来年のシーズンへ向けて、「自分たちは選手全員が同じ方向を向き、日々の練習に一生懸命に取り組んでいき、日常生活でも、当たり前のことを当たり前にできるように、きちんとしていきたい」という佐藤君の思いのようにブレはないであろう。

 この冬をいかに充実させて過ごしていけたのか、その成果を披露してくれるであろう、ふじみ野の来シーズンが今から楽しみでもある。

(取材・文=手束 仁

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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