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県立中村高等学校(高知)「最大限の工夫を凝らしたネット打ちに注目!」【後編】

2016.11.27

 この秋、部員16人ながら明徳義塾を破り、県大会優勝を決めた高知中村。前編ではグラウンド環境に恵まれない中でも工夫した練習・考えを紹介していきました。後編では名物のネット打ち練習法を動画を交えて紹介し、来春へ向けての意気込みも語っていただきました。

ネットの区切りを使い「広角」確認、手投げで「スローイング矯正」

 ずらりと並んだ鳥かごの先にあるのはバックネット。ボールがいっぱいに入ったみかん箱に座った選手が正面から手投げするボールをバックネットめがけて打ち込む。一見するとグラウンドが使えない学校がよく行っている打撃練習の1つ。ただ、高知中村の「ネット打ち」は漠然としたフリーバッティングではない。様々な「条件設定」が折り込まれている。

「0.45秒以内に投げて早打ちにしたり、球種をスライダーにしたり、球種をミックスにしたり。インコース一辺倒とか、エンドラン・右打ちだけとかいった設定をします」(横山 真哉監督)。正面から投げるボールを打つことで、試合を想定したタイミングの中で、状況に応じたバッティングを習得する。そこでキーになるのは「バックネット」だ。横山監督はこんなことも教えてくれた。

「右打者のインコースなら支柱の左側、真ん中なら支柱と支柱の間。アウトコースなら支柱の右側という練習もしますし、直接ネットに当てる中でもゲージの高さにあるワイヤーより上に当てるといった指示もします」。ネットの区切りやワイヤーを使ってバットコントロール感覚を養う。使えるものはすべて活用するのがこの「ネット打ち」である。
もちろん、ここで使用するのは1100グラムの重いバット。スイングスピードもここで養い、500球から600球を打つ「ティーサーキット」や自宅での素振りで合計一日1000スイングを満たす。

 さらに言えばこの「ネット打ち」には様々な効果がある。まずボールが散らばる範囲が狭いので、短時間でボール拾いが済む。投手側も肩甲骨を上げずスナップスローで投げるのでスローイングの矯正にもつながる。右打者が左打席、左打者が右打席で打つ形をすることでバランス練習にもなるし、朝練習でもこの「ネット打ち」ならば、簡単にできる。

[page_break:春の舞台がどこでも「全国で勝てる」チームへ]

「雨天でも滑り止めを打席に敷けばできますし、これならストライクが入るのでフォーム修正の練習もできる。バッティングでも変な癖はこれでなくなりました」と横山監督が話せば、「ティーサーキットやネット打ちをやり始めてから自分の形が付き、だんだんスイングスピードも速くなってきた」と効用を話すのは秋の準決勝・土佐戦ではセンバツでも登板した尾﨑 玄唱(2年)から先制2点打含む3打数3安打3打点の5番・中野 聖大(2年・捕手・右投右打・176センチ65キロ・四万十市立中村中出身) 。

 小さな身体でもコンパクトに振り、単打や長打を重ねていく高知中村。その源流はこの「ネット打ち」にあったのだ。

春の舞台がどこでも「全国で勝てる」チームへ

県立中村高等学校(高知)「最大限の工夫を凝らしたネット打ちに注目!」【後編】 | 高校野球ドットコム

右から山本 泰生・中野 聖大・一圓 優太・北原 野空(県立中村高等学校)

 そんな高知中村はもう、次への戦いをスタートさせている。昨年同様の打撃強化はもちろんのこと、秋の四国大会で9回表二死から2点を追いつかれ、敗戦を招く一因となった守備強化に取り組みつつ、昨冬から今夏前にかけて導入したメンタルトレーニングも2年目のスタートを迎えた。「夏の高知大会では『負けられない』となったが、秋は『負けてもともと、楽しんでいこう』となった」(北原 野空)心の力をさらに上の舞台で発揮する準備にも入っている。

 練習にも活気があふれている。
英明と比べても打撃力の差は歴然。今のままでは甲子園に出ても恥をかく。これまでは四国大会に出場できるようなチームを作ろうと言っていましたが、今は春までに全国で勝てるようなチームを作ろう、と。そうすれば夏にも生きてきます」
指揮官ばかりではない。選手たち16人・マネジャー4人からは「上を目指せる」喜びを身体全体で表現していた。

 秋は背番号「16」。主将の山本 泰生(2年・外野手・右投左打・168センチ61キロ・四万十市立中村中出身)は、そんなチームを代表して春への決意をこう話す。
「守備やベンチからリズムを作って、打撃でのリズムにつなげるように。四国大会でもベンチから明確な声をかけておけば負けることはなかった。明徳義塾四国大会優勝したのは僕らに負けた後がんばったから。同じ高校生として明徳義塾を見習ってがんばります」

 春の舞台はどこになるか、それは周囲が決めること。高知中村高校野球部は秋に得たものを増幅させ、春は「全国で勝てる」チームとなってグラウンドに立つための冬を過ごしていく。

(取材・文=寺下 友徳

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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