小関順二氏が今年の甲子園を総括!そしてベストナインも発表!
第98回全国高等学校野球選手権は作新学院の優勝で幕が閉じた。今回は甲子園全15日間のレポートを掲載した小関順二氏に今年の甲子園を総括していただき、ベストナインも選出!小関氏が選ぶベストナインはどんな選手だろうか。
バントをしない野球にこだわった作新学院
54年ぶりの優勝を決めた作新学院
仕事の関係で公益財団法人「全国野球振興会」(日本プロ野球OBクラブ)の八木澤 荘六理事長の話を伺うことがある。八木澤さんは1962年に作新学院が春夏連覇したときのエースで(夏は赤痢のため出場できず下級生の加藤 斌が代役を務める)、早稲田大学を経て東京(のちのロッテ)に入団、73年には太平洋クラブ(現在の西武)相手に完全試合を達成している。
この八木澤さんに昨年、「作新学院は強いですね」と言ったことがある。すると、「でもあの子(小針 崇宏監督)はOBの言うことを聞かないんですよ」と苦笑いしていた。どういうことかというと、OBは「勝つためにはもっとバントを多用しなければいけない」と進言するのだが、小針監督は一切耳を貸さず攻撃野球を貫いているのだという。
言葉だけ見ると批判しているように読めるが、40歳近く年齢の離れている小針監督の唯我独尊を否定せず、多少あきらめの混じった思いを抱きながら「困った奴です」と苦笑いしている、そんなふうに私には見えた。
どれだけバントをしないかというと、今大会記録したのは5試合中2回だけ(それとは別に犠飛が1回ある)。大会通じてバントが2回というのは、攻撃時の戦略として最もバントを重視する高校野球界ではあまりにも異質だ。
今大会のチーム別打撃成績を見ると犠打飛(バント+犠牲フライ)は少ない順に、作新学院(5試合中3)、秀岳館(4試合中4)、盛岡大付(3試合中2)、いなべ総合(3試合中4)、日南学園(3試合中4)、花咲徳栄(3試合中4)、木更津総合(3試合中5)、東邦(3試合中5)、聖光学院(3試合中6)、履正社(3試合中6)と10校を数える。
昨年はどうかというと、今年と同じ3試合以上戦って犠打飛6までを探すと5校しかいない。つまり勝ち進んだ学校の犠打飛が昨年は多く、今年は少ないということである。高校野球界で“常識”とされていることが常識でなくなっている、そういう象徴として作新学院の優勝を私はとらえている。ちなみに、過去3年の犠打飛は207→193→185と減少傾向にある。
今年は高校野球ビッグ6と形容したほうがフェア
高橋 昂也(花咲徳栄)
投手は大会前から言われていた“高校野球ビッグ3”という言葉がしばらく生きていた。ところが大会6日目に作新学院の今井達也が最速151キロのストレートを武器に尽誠学園を2安打完封、翌日には木更津総合の左腕・早川隆久が唐津商戦で2安打完封、さらに同日の第3試合で創志学園の高田萌生が6回途中で降板、10失点しながらストレートが152キロを計測すると“高校野球ビッグ3”の形容が色あせて聞こえるようになった。
藤平尚真(横浜)、寺島成輝(履正社)、高橋昂也(花咲徳栄)のビッグ3が特別悪かったわけではない。新旧のビッグ3を合わせて“高校野球ビッグ6”と形容した方がフェアな報道になるのではないか、そんな思いを抱きながら大会中盤から決勝までを見ていた。
心を動かされた好ゲームは次の13試合。
<1回戦>
鳴門3-2佐久長聖(好左腕・河野を脅かす佐久長聖の機動力野球)※試合レポート
広島新庄2-1関東一(延長12回の死闘を制した広島新庄・堀の力投)※試合レポート
富山第一1-0中越(9回一死までノーヒットノーランの中越・今村がサヨナラ負け)※試合レポート
<2回戦>
北海2-1松山聖陵(松山聖陵・アドゥワを攻略する北海の全力疾走5人13回)※試合レポート
作新学院3-0尽誠学園(作新学院・今井が衝撃の甲子園デビュー)※試合レポート
盛岡大付11-8創志学園(創志学園・髙田を攻略する盛岡大付の本塁打攻勢)※試合レポート
東邦10-9八戸学院光星(スタンドを巻き込む東邦の応援スタイルは支持できない)※試合レポート
履正社5-1横浜(履正社・寺島、横浜・藤平の投手戦と雷鳴で2度中断が印象に残る)※試合レポート
<3回戦>
作新学院6-2花咲徳栄(作新学院・今井が髙田と並ぶ大会最速の152キロで強豪を制圧)※試合レポート
木更津総合2-0広島新庄(屈指の左腕対決は高レベルの投手戦となる)※試合レポート
<準々決勝)
秀岳館4-1常総学院(秀岳館が序盤の本塁打攻勢と九鬼隆平捕手の強肩で難敵を撃破)※試合レポート
作新学院3-1木更津総合(作新学院・今井が最終回に152キロを計測)※試合レポート
<準決勝>
北海4-3秀岳館(北海の全力疾走6人8回は私の計測では大会ナンバーワン)※試合レポート
作新学院が3試合、北海、広島新庄、木更津総合、秀岳館が各2試合で印象に残る試合を演じてくれた。やはり好投手あるところに好ゲームあり、である。最後に私が心を動かされた選手を各ポジション3人ずつ挙げ、最後にその中からベストナインを選出してみたい。
小関氏が選ぶベストナインを紹介!
今井 達也(作新学院)
◇左投手
早川隆久(木更津総合)、寺島成輝(履正社)、堀瑞輝(広島新庄)
【インタビュー】
■早川 隆久投手
■寺島 成輝投手
◇右投手
今井達也(作新学院)、藤平尚真(横浜)、高田萌生(創志学園)
【インタビュー】
■藤平 尚真投手
■髙田 萌生投手
◇捕手
古賀優大(明徳義塾)、九鬼隆平(秀岳館)、萩原哲(日南学園)
【インタビュー】
■古賀 優大選手
■九鬼 隆平選手
◇一塁手
入江大生(作新学院)、石橋康太(関東一1年)、西浦颯大(明徳義塾2年)
◇二塁手
菅原優輝(盛岡大付)、有村恒汰(常総学院)、太田英毅(智弁学園2年)
◇三塁手
花輪直輝(常総学院)、楠本晃希(花咲徳栄)安田尚憲(履正社2年)
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■安田 尚憲選手
◇遊撃手
小川龍成(前橋育英)、山本拳輝(作新学院)、松尾大河(秀岳館)
◇外野手
田城飛翔(八戸学院光星)、鈴木海斗(常総学院)、西川愛也(花咲徳栄2年)
増田珠(横浜2年)、奥村拓希(いなべ総合)、福田観大(履正社)
納大地(智弁学園)、手束海斗(鳴門)、秀岳館原田拓実(秀岳館)
毎年感じるがキャッチャーに強肩が増えた。また今年は三塁手の好守が目立った。とくにベース寄りの打球を逆シングルで好捕するシーンが目立ったのは、練習で逆シングルをこなす回数が増えたからだろう。以前はプロっぽい逆シングルやランニングスローを高校野球の指導者が好まないこともあり、試合ではあまり見られなかった。それがここ数年漸増し、今年になって花開いた印象がある。少し大げさな言い方になるが、「下手でもいい」と言われた三塁手に革命が起こった。
さて、私が選ぶベストナインは以下の通りだ。
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スターティングメンバー | 打順 |
---|---|
[右投手]今井達也(作新学院) | 1*山本拳輝(遊) |
[左投手]早川隆久(木更津総合) | 2*福田観大(中) |
[捕手]九鬼隆平(秀岳館) | 3*田城飛翔(右) |
[一塁手]入江大生(作新学院) | 4入江大生(一) |
[二塁手]菅原優輝(盛岡大付) | 5九鬼隆平(捕) |
[三塁手]安田尚憲(履正社) | 6*安田尚憲(三) |
[遊撃手]山本拳輝(作新学院) | 7増田珠(左) |
[外野手]田城飛翔(八戸学院光星)、福田観大(履正社)、増田珠(横浜) | 8手束海斗(指) |
[DH]手束海斗(鳴門) | 9菅原優輝(二) |
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- スターティングメンバー
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外野手に限っては実際に守った左翼、中堅、右翼に関係なく「外野手」としてひとまとめにしたことを断っておく。
(文・小関 順二)