内川 聖一(福岡ソフトバンクホークス) 「日本一の安打製造機が語る、野球選手としての『あり方』論」【前編】
福岡ソフトバンクホークスの中心として君臨しているのが内川 聖一選手。大分工から2000年秋ドラフト1位指名を受け横浜ベイスターズに入団し、2008年にはNPB右打者最高打率となる.378で首位打者を獲得。2009年には第2回WBCで世界一にも貢献した。
以後、2011年に福岡ソフトバンクホークス移籍後も安打を量産し2014年まで7年連続打率3割を達成。今年も4番打者として、9月17日時点で18本塁打、153安打、96打点をマーク。
そんな内川選手の土台を支えているのは栄養管理、食事管理を含めた「弱さを認める」から始まるアプローチ。そこで今回は内川選手から高校球児への栄養面についてのアドバイスを含め、野球選手として必要な「あり方」を語っていただいた。
4番打者でも「ありのままの自分」を出す
内川 聖一選手(福岡ソフトバンクホークス)
インタビュールームに来ただけで、その存在感の大きさを感じる内川 聖一選手。まずは福岡ソフトバンクホークス不動の4番として、今シーズンの活躍ぶりについて語っていただいた。すでに打点は、昨年の83打点を超えている。その裏には打撃スタイルの「回帰」があった。その経緯を内川選手は赤裸々に語る。
「新たに4番を打つことになった昨年は打撃においての意識、感覚、打ち方を変えていったのですが、うまくいかなかったんです。
僕に限らず、野球をやり始めれば、4番打者は一番良い打者が打つもの、長打が打てる打者だと思います。はじめて4番を任されて、自分はそういう理想像に近づきたいと思って打撃スタイルも変更しましたし、長打をより多く打つことを意識していました」
だが昨年は打率.284で本塁打も11本。7年連続キープしていた打率3割を切るなど苦しいシーズンに。そこで内川選手は今季「ありのままの自分を出す」ことに徹している。
「僕は4番打者としての教育を受けていませんし、僕は人よりヒットを多く打つ打者になりたいという思いで、この世界に生き残ってきました。そこで去年の結果を踏まえて、元に戻したという表現はあまり好きではないのですが、従来のモノに直しました」
スタイルだけではない。意識も同様である。
「得点圏にいるランナーを返すことは、どの打順でも大事にしなければならないことだと思いますし、状況によって4番でも2番打者的な役割をする。自分にとって都合の良い考えをするようになったら、気持ちが楽になりました」
結果は先に記した通りだ。高校野球でも4番を打っている選手が気負ってしまって、なかなか打てないケースが多くある。それはやはり「4番打者は一発長打を打てる打者」という理想像を追うことで、自分の持ち味を発揮できないから。もし「4番打者が重圧」と感じている高校球児のみなさんにとっても内川選手の話は参考になることだろう。
「一日中、食べていた」から、栄養バランスと体重維持に気を遣うように
内川 聖一選手(福岡ソフトバンクホークス)
このように原点回帰で凄みを見せる内川選手にももちろん高校球児だったころがあった。 大分工時代は高校通算43本塁打のスラッガーとして活躍。実父・一寛監督など指導者から「とにかく食べて体を大きくしろ」と言われたことを受け「一日中食べている」食生活だった。
「弁当2個用意をして、朝練をした後に弁当を食べて、2個目の弁当を2限目までに食べて、そしてお昼休みの学食では定食やうどんを食べて、さらに購買で購入したパンを練習前に食べて、練習後の帰りではたこやき、うどんを食べて、そして帰宅したら、晩御飯をたくさん食べるという生活でした」
トータルすると、1日約6食。ところが……「それでも思いのほか体は大きくなりませんでした」と内川選手は当時を振り返る。これは球児のみなさんもうなずくところだろう。
結局、高校時代は180センチ70キロと野球選手としては細身の体系。そんな内川選手が食べるだけではなく、栄養バランスも大事だと気付いたのが2000年・ドラフト1位指名を受けた横浜ベイスターズに入団してからのことである。
当時の横浜ベイスターズは球団としての栄養サポートが多く、内川選手も、栄養面の知識を身に付け体作りに励んでいく。体重は徐々に増加。それでもなかなか太らないことが悩みだった内川選手は、その体重を維持する食事にも気を遣った。
「もともと痩せやすく、激しく消耗するペナントレースは食べられないと、どんどん痩せてしまうんです。そのために量を食べたり、栄養面に気を遣うようになりました」
かくして、横浜の地で184センチ88キロとパワーを出せるプロ仕様に整えた内川選手は、2011年FA制度を使用して移籍した福岡ソフトバンクホークスで食事面、栄養面の意識をさらに深めていく。
後編に続く!
(取材・文=河嶋 宗一)
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