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大波乱の沖縄!明日準決勝に突入!!小禄・美里工・嘉手納・那覇西、優勝はどこだ?!【後編】

2016.07.15

【準決勝前展望:小禄&美里工編】

 高校野球選手権沖縄大会はベスト4が決定し、来る土曜日に準決勝が翌日決勝戦が行われる予定だ。優勝糸満、準優勝豊見城、3位沖縄尚学、4位美来工科が敗れただけでなく、の優勝校八重山、準優勝興南、4強那覇商までもが敗れ去ってしまったことで、県外では「大波乱の沖縄県」と騒がれている。

 しかし、(大会前に選手権沖縄大会の展望を書いた者が言うセリフではないのは重々承知の上で述べさせて頂けるなら)僕ら沖縄の野球を見てきた者にとっては、何ら波乱でも何でもなく、可能性があったたくさんの中から、この4校が残ったのだなという印象でもあるのだ。それでは、今夏の大会を少し紐解きつつ、ベスト4に残ったチームを見ていこう。

9年ぶりのベスト4進出!小禄旋風は続く!

上原悠(小禄)

【小禄】
※過去の選手権沖縄大会最高位:優勝

1回戦 6-4 与勝
2回戦 6-5 南部工
3回戦 8-7 浦添商
準々決勝 11-4 那覇商

 2007年以来のベスト4進出の小禄春の県大会は初戦敗退であったものの昨年秋の県大会ではベスト16進出を果たしており、与勝浦添商とはほぼ互角だろうとの話はあったことから、こちらも不思議ではない。特に巷で色々言われている浦添商との試合だが、規定となっていた7回を終えてリードしていたのは小禄であった。

 今の時代なら雨雲レーダーなどで監視出来るので、審判員や本部がここまでという判断を下すことも十分可能であったと思うのだ。それでも。8回表に入ったのは「出来る限りやらせてあげたい」という、沖縄県高野連の思い遣り以外なにものでもない。「浦添商まだ諦めるな!」というエールのようなものさえあったと思う。しかし。雨脚が強まって、どうしてもこれ以上続行することが出来ない状態になったのだ。

 そうなると裏の攻撃を完了していない以上、平等を期すため均等回に戻ること。それが試合完了を表す7回だったこと。ルールの改正を求める声を聞くが、勝者は明日も準々決勝を戦わねばならない。そんな状態で果たして水が引くのを待って、9時10時まで試合というのはもはや高校野球ではないと思うのだ。「浦添商さんの分まで頑張ろう!」実際、浦添商ナインも翌日小禄の応援に駆けつけたと聞く。そう、勝ち負けではない高校野球が目指すものがそこにあった。その結果、小禄秋の4強である那覇商を大差で下したのだ。

 小禄のチーム打率は137打数50安打で.365と高い。3回戦までに27得点を挙げたチームが那覇商の守りを打ち破ったとしても波乱にはならない。打率.526の斬り込み隊長である大城 旭を筆頭に触れている上位打線は重量感たっぷりだ。投手陣にやや不安はあるものの、それを補って余りある強力打線がある。それが今の小禄だ。

 その他Cブロックでは確かに豊見城がやや頭一つリードしている感は強かったものの、小禄を含め那覇商浦添商といったライバルたちが春以降力を付けてきたのであって、豊見城那覇商が、那覇商小禄が破っても何ら波乱ではないのだ。ただ一つ。部員が22名(3年生3名)しかいなかった名護商工の頑張りは、良い意味で僕らの期待を裏切った素晴らしいものであった。

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4校の中でチーム打率1位の美里工!狙うは初優勝!

玉城投手(美里工)

【美里工】
※過去の選手権沖縄大会最高位:準優勝

1回戦 5-2 沖縄石川

2回戦
12-6 未来沖縄
3回戦 10-2 昭和薬大附

準々決勝
7-6 宜野座

 大会前の野球部訪問で、どこを訪れようか迷っているところ、中部地区高校野球選手権大会の準決勝を観戦することが出来た。そこで見た美里工の超攻撃野球に魅了され訪れた。春2回戦敗退の美里工が夏の頂点を狙える訳を読んでもらえれば美里工が勝ち残っても何ら不思議はない。

 その美里工のチーム打率は127打数47安打の.370と、ベスト4中最高を誇る。それが随所に出たのがKBC未来沖縄戦と宜野座戦であろう。リードされても下を向かないナイン。何故なら逆転出来る自信に満ち溢れているから。トーナメントを通して得たその心の変化も大きいだろう。勝負強い上位打線に加え、下位を務める屋我 翔也が11打数7安打と絶好調。どこからでも走者が出て、どこからでも点が入る。そのような打線になっている。1994年、そして2013年と2度の準優勝を経験している美里工。今度こそ初優勝を!と願う地域の方々やOBの後押しもあることだろう。

 その他Dブロックでは、沖縄尚学宜野座敗れたことが波乱と言われているが、中部商戦(試合レポート)を観た僕の中では想定内であった。それくらい、宜野座の野球は観るものを魅了して余りある素晴らしいものがあった。敢えて波乱と言わせてもらえるなら、沖縄水産美里を倒し初のベスト16進出を果たした昭和薬大附属高校(以下昭和薬大附)であろうが、エースの金城はサイドから、時折130kmを超えるキレのあるストレートを投げる。

 あの美里工打線でさえ、序盤は攻略出来なかったことを考えると、那覇西と似て大黒柱のエースの頑張りがもたらした16強であり、「このような素晴らしいピッチャーがいるのなら」と納得できる昭和薬大附の輝きであったと見ることが出来るであろう。

(文・當山 雅通


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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