ここ5年間、北部勢が連続して出場している夏の福岡大会だが、今年は好投手が揃う南部に有力校がひしめく。春の九州大会優勝の福岡大大濠、同じく準優勝の西日本短大付、昨秋の福岡を制した九産大九産が3強を形成し、これを九産大九州、小倉、東筑、自由ケ丘などが追う展開が予想される。秋に上位進出したチームが春も同様に勝ち上がるなど、昨年からの勢力図に大きな変化は見られず、今年はシード校を中心としたハイレベルな代表校争いとなりそうだ。まずは北部から今年の有力校を紹介していきたい。
今年の北部をリードする学校は?
北部では、秋春ともに県大会(ベスト8)出場を果たした小倉、東筑、自由ケ丘の3校が頭一つ抜け出している。
小倉は、前チームから4番に座る高校通算42本塁打の主砲・土田 天洋、俊足巧打の1番・山﨑 瑛一郎などを中心に打線が活発。昨秋は準決勝で九産大九州の好投手・岩田 将貴から8点を奪って攻略、九州大会出場を決めた。
負傷のため秋は出場を回避した主力の吉永 快斗が復帰して3番に入ったことで厚みが出た打線は、春の北部大会4試合で32点を奪い、4月の北九州地区大会でも5試合で33点をあげて優勝。ただ、秋季大会決勝では九産大九産・梅野雄吾(関連記事)から1得点に終わり、春季大会は準々決勝で九産大九州・岩田将貴に完封負け。全国クラスの好投手をいかに攻略できるかが課題となる。
投手陣は2年生エース・中野 裕斗に安定感があるが、中野に続く先発投手が手薄なのが気になるところ。それでも北部では秋の大会、春の大会、北九州地区大会と12戦して無敗。実績は筆頭格だ。
東筑はエース・梅田 祥伍を中心に守りが堅い。秋春とも北部大会では全試合を3点以内に抑えて県大会に出場した。左腕の梅田は直球の球速こそ120キロ台だが切れのよい球を投げ、スライダー、チェンジアップなどの変化球を低めに集めて打たせて取る。牽制やフィールディングにも優れ、走者を出しても簡単に点を許さない粘り強さが持ち味だ。右サイドハンド・金田 拓海、普段は外野を守り直球に勢いのある遠藤 龍之介なども公式戦で好投しており、投手陣は充実している。
打線は長打力こそないが、山下 廉太、水上 尚の中軸を中心に鋭い振りを見せる。公式戦では九州国際大付、自由ケ丘、飯塚、東海大福岡など北部の私立強豪にも勝っており、春の大会では福岡大大濠や九産大九州などとも接戦を演じた。派手さはないが、競り合いに強みを発揮する。

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投手陣の層の厚さは自由ケ丘がトップクラス
底を見せていないという点で、伸びしろがありそうなのが自由ケ丘。秋は右の本格派・岩田 諒大を中心にベスト8に進出したが、春はその岩田抜きでベスト8入りを果たした。岩田に代わってマウンドにあがったのは湯浅 絢太、岡本 周大、柳原 優太などの右投手。長身の湯浅は重い直球に大きなカーブがある。岡本は130キロ超の直球にチェンジアップなどで緩急をつけ、テンポよく投げ込んでくる。
柳原は140キロ超の直球とスライダーを武器に三振のとれる投手で抑え候補。これに岩田が加わる投手陣の厚さは、県内でも屈指といえる。打線は4番・天野 雅和を軸に、上位から下位まで切れ目なく強い打球を放つ。春以降もチームが底上げされており、夏に向けてもメンバーの入れ替えが予想される。秋春とも勝負処で四球や失策が目立っただけに、ミスを減らすことが課題だ。
これに続くのは、希望が丘、東海大福岡、九州国際大付などだろう。
希望が丘は昨夏ベスト8に進出した時のレギュラーが内野陣を中心に残っており、経験は豊富。昨夏も活躍した右アンダーハンド・山村 晃輝には安定感がある。昨秋も県大会に出場し、準々決勝では優勝した九産大九産と延長戦にもつれる接戦を演じた。春もパート決勝(5回戦)まで進むなど堅実な成績を残している。
4月に東海大五から校名を変更した昨年の準優勝校・東海大福岡は大庭 龍介、大平 颯汰の両投手をはじめ、奥田 勝彦、柴田 友行ら昨夏決勝の舞台を経験した主力も多く残る。昨秋も上位進出が期待されたが不祥事により大会途中で出場を辞退、春も3回戦で東筑に敗退した。しかし4月の福岡中央地区大会では育徳館、飯塚など力のあるチームを破って優勝。シード権を獲得し、今年も夏に向けて戦力を整えてきた。
夏3連覇を狙う九州国際大付は、投打とも昨年よりひとまわりスケールダウンした印象は否めない。カギを握るエース・藤本 海斗は140キロ超の伸びのある直球が武器の本格派だが、春は制球に苦しみ、パート決勝で自由ケ丘打線に打ち込まれるなど課題を残した。制球にすぐれる石本 大虎の2人でどこまで踏ん張れるか。
打線は昨夏の甲子園を経験した右の好打者・中山 竜秀、左の立石 蓮ら中距離ヒッターが軸。山本 武白志(DeNA)らのいた前チームに比べると長打力は落ちるが、今年は足を絡めた攻撃を見せている。センスある選手が揃うだけに、夏までに大きく戦力を底上げできれば、昭和34~36年の戸畑以来となる福岡大会3連覇が見えてくる。

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常磐、星琳、飯塚など上位校の存在も見逃せない
(文・光本 宜史)

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