Column

県立石岡第一高等学校(茨城)【前編】

2016.06.20

 打倒常総学院、打倒強豪私学を掲げて、この春初めて関東大会に出場を果たした石岡一。決して突出した選手がいるわけではないが、選手たちの自主的な姿勢を重んじながら結果を残すようになってきた。その石岡一、躍進の背景を探ってみた。

強豪校と同じ土俵で対等に戦えた

川井 政平監督(県立石岡第一高等学校)

 JR常磐線で土浦駅より、もう少し水戸寄りに進んでいくと石岡駅に到着する。駅から徒歩数分もしないうちに、小高い丘へつながる階段が見つかる。その階段を上っていくと広い敷地に恵まれた学校がある。創立106年を迎えた石岡一高だ。古い学校だが、石岡農学校を前身としており、普通科とともに園芸科と造園科が設置されているのも特徴である。

 野球部のグランドは校舎を突っ切った奥にあるが、監督室の裏側にも、試合後の補食用にネギやナスなどの野菜が育てられている。また川井 政平監督が就任した際に植樹したという桜の木も育っている。

 学校の歴史はあるが、地方都市のごく普通の公立校である。選手たちもほとんどが、中学時代は地元の中学野球部に所属していた。そんな野球部だが、近年は茨城県で上位に定着する存在となっている。そして今春は、これまで破れなかったベスト4の壁を突破して決勝進出。常総学院には敗れて準優勝となったものの、初の関東大会に出場。そして初戦は地元の前橋を下して大きな自信となった。

「一番の自信は、県外の有名校、有力校と同じ土俵で戦えたということです。県外に宿泊して3泊4日です。そういう中で、寮に入って高校時代のすべてを野球にかけてやってきている連中を目の当たりにしながら、自分たちとは違うなと感じる部分もある一方で、ある程度やれたということを実感しながら、自分たちがやってきたことは間違いではなかったという意識になれたことは大きかったですね」

 川井監督は國學院大を卒業して99年から10年間監督を務めた波崎柳川時代にも関東大会に導いている。そして石岡一に異動後11年から監督を務めて6年目である。石岡一としては初めての関東大会という大きな舞台だった。その中で選手たちが何を感じたのか。それは、私学の強豪校の選手たちに比べて自分たちが違っているところを追いつこうとするのではなく、間違っていなかったなと感じたところをもっと伸ばしていこうという、それを改めて実感したという。

 ちなみに今回の関東大会出場18校中、公立校はわずかに3校。しかもそのうちの2校は開催県群馬県の3位と4位校だ。1位2位で出場していた公立校は石岡一のみだった。

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強豪校から自分たちと変わらない部分違う部分に気づく

高﨑 大幹選手(県立石岡第一高等学校)

 エースとしてチームを関東大会に導く原動力となった高﨑 大幹君は、「開会式なんかでは、新聞や雑誌などで紹介されているようなプロ注目の有名人がいて楽しかったです。様子を見て、違うなと思ったところもありましたけれども、だけど、あまり変わらないと思ったところもありました」と言う。横浜や、2回戦で対戦した東海大市原望洋など、プロ野球からも注目される選手もいる中で、普通の高校生として堂々と渡り合えたことが自信になったと感じている。

 打っては3番として中軸を任され、守りでは遊撃手として守備の要でもあるという自覚の強い飛田直樹君は、関東大会をこうふり返る。

県大会では打線があまり打てないで、エースの高﨑に頼り切ったところもありました。自分もチャンスに打てませんでした。だけど、関東大会では、1回戦では点を取られたけれども打って返せたことは大きかった。2回戦でも、相手がエースを温存してきていたのですけれども、それを引きずり出せたことはよかったと思います。ただ、自分としては2度もチャンスで回ってきていたのですが、結果を残せませんでした。それが反省点です」

 チームとしての成長を感じつつも、自分自身はもっと厳しく見つめていこうという姿勢である。「4打数1安打でも、その1安打が得点に結びついているのであれば、大きいと思います」と、これから夏へ向けての課題として、いかにチャンスに打てるのかということを挙げている。そのためにも、練習試合の1試合1試合の打席を大事にしていきたいと考えている。

 濱田虎太郎主将は、チームをこう分析する。
「大きいのを打つようなホームラン打者がいるわけではありませんが、守りからリズムを作っていかれるチームだと思います。投手陣も安定していますから、取れるアウトは確実に取っていくということをもっと大事にしていきたいと思います」と、派手さはなくてもきちんとした野球の大事さを感じている。

 そして、そのために主将としては、「自分自身の位置は2番サードですから、どちらかと言うとつなぎの役割なのですが、練習とかではチームの先頭に立って引っ張っていかなくてはいけないと思っています」と、その役割を感じている。

  後編では選手たちが自主的に練習メニューを考えて、自主性をどう見出しているのか。あくまで普通の高校生でいるためにどんな振る舞いを心掛けているかを伺いました。

(取材・文/手束 仁


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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