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【西東京展望】近年にまれにみる激戦の西東京大会を制するのは?

2016.06.02

 秋季都大会では、西東京勢の4強はなく、佼成学園が8強に残っただけ。春季都大会では、東海大菅生が4強に残ったものの、8強は八王子を含めた2校だけ。その一方で、怪物・清宮 幸太郎関連記事)を擁する早稲田実ともに2回戦敗退で、夏はノーシードで戦うことになった。

 現在、夏の大会の組み合わせで決まっているのは、東海大菅生八王子は決勝戦まで当たらず、東海大菅生日大三創価、聖パウロ、都立東大和都立日野といったシード校とも準決勝まで当たらないということだけだ。

 可能性としては1回戦から早稲田実日大鶴ヶ丘国士舘佼成学園早大学院などが対戦することがあるし、シード校が登場する3回戦以降は、いきなり早稲田実日大三東海大菅生と対戦することも、可能性としてはないわけではない。

 そのため多くの監督は、春季都大会の目標を、夏のシード校になる4回戦進出(ベスト16)に定めているが、今回はノーシード校にあまりに強豪が多いため、シード校になっても、「あまり意味がないですね」という声をよく聞く。

 春季都大会4強東海大菅生がややリードしているものの、絶対的本命がなく、全ての学校とはいかないまでも、20、30校にはチャンスがあるのでは、という声もあり、近年まれにみる混戦模様だ。6月18日の組み合わせ抽選が、今年は例年以上に注目される。

春に成長をみせた東海大菅生と八王子

伊藤 壮汰(東海大菅生)

 そうした混戦の中でも東海大菅生は、ひと冬越して、明らかに強くなっている。エースの伊藤 壮汰は、秋まではまだ内野手出身という感じが色濃く出ていたが、春は球威も増して、投球の組み立てなども進歩し、投手らしくなってきた。秋は伊藤がエースで4番だったが、春は深澤 祐太が4番に定着。準々決勝帝京戦では決勝2ランを放つなど、攻撃も厚くなった。

 秋は1次予選で敗れた八王子は、2年生投手の早乙女 大輝が成長。球威はさほどないものの、変化球の制球の良さが光る。打撃は4回戦の聖パウロ戦で、代打を含めた下位3人の連続安打で逆転サヨナラ勝ちしたように、上位下位関係なく得点できるのが強みだ。

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[page_break:清宮の後を誰が打つのか]

清宮の後を誰が打つのか

清宮 幸太郎(早稲田実業)

 評価が難しいのが、日大三早稲田実だ。この10数年西東京は、この伝統校を中心に展開してきた。選手個々の質も高い。しかし今回は、は二松学舎大付、関東一が相手だったとはいえ、日大三は秋、春ともにベスト16止まり。早稲田実はノーシードで夏を迎える。

 日大三坂倉 将吾山本 幸次郎と続く中軸は破壊力十分。主将でリードオフマンで枚方ボーイズ出身の宮木 紳道が、どこまで本来の力を発揮できるかと、スライダーのキレが鋭いものの、春は不振であったエースの小谷野 楽夕が、どこまで立ち直るかがカギとなる。

 早稲田実の清宮は、一段とグレードアップし、強振しなくても柵越えするパワーと、技術を身につけている。5月29日の松商学園との招待試合では高校通算47号まで伸ばしており、ますます手が付けられない。清宮とともに昨夏の甲子園の4強メンバーである金子 銀佑も、打撃にうまさがある。タイプ的には、金子が1番か3番というのが理想だろう。

 しかしそうなると、清宮の後を打つ打者問題となる。現在有力視されているのが、大阪福島シニア出身の1年生・野村 大樹の起用だ。既に招待試合などで実績を残している。古くは王 貞治、そして荒木 大輔、それに昨年の清宮をはじめとして、早稲田実は1年生を抜擢し、歴史を作ってきた。早稲田実はどういうメンバー構成で夏に臨むのか注目される。

都立の星の戦いぶりに注目

錦戸 敦義(都立東大和)

 創価、聖パウロ、都立東大和は2年連続でシード校になった。1年生の夏からエース格である創価谷井 怜央は球威が増し、打ってもチームの中心。春は先発することが多かった上村 知輝らが、谷井の負担をどこまで軽減できるかがカギとなる。

 聖パウロは、昨年の春サイクル安打を記録して一躍注目を集めた菅野 岳史が、主将としてチームをまとめる。エース格である松尾 奎吾とのバッテリーが投打に引っ張る。

 元祖都立の星である都立東大和は、春季都大会帝京に敗れはしたが、9対10の大熱戦(試合レポート)を演じた。制球のいいエースの藤原 涼を、4番の錦戸 敦義や5番で主将の大野 直輝らが支える全員野球で夏に臨む。

 都立日野高橋 宙夢春季都大会で二松学舎大付を4安打に抑える好投。(試合レポート)背番号1の内藤 啓太との2枚エースが軸になる。今の選手は、3年前の準優勝を見て入ってきた。それだけに選手の意識は高い。

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[page_break:右の柴田(早大学院)左の長谷川(聖徳学園)]

右の柴田(早大学院)左の長谷川(聖徳学園)

柴田 迅(早大学院)

 早稲田実以外のノーシード校で評価が高いのが、日大鶴ヶ丘だ。主将で4番の羽根 龍二は、二松学舎大付の大江 竜聖関連記事)から二塁打を2本放っている萩生田 博美監督は、ここ数年「投手探し」と言っていたが、エースの山﨑 章雄をはじめ、複数の投手が育ってきた。

 投手では早大学院柴田 迅が注目だ。この春は本調子ではなかったものの、力感のあるフォームから繰り出す速球は、143キロという球速以上に伸びがある。

 またとも1次予選で敗れたものの、聖徳学園の左腕・長谷川 宙輝のスライダーのキレは素晴らしい。都立東大和から14個の三振を奪っている。明大明治柳澤 憲人は、球威はさほどないものの、制球の良さで勝負する。秋8強の佼成学園は、は初戦で聖パウロに完敗した。3番速水 誠生、4番中嶋 瞭、5番関口 恵太など、打者は経験豊富。梅田 大樹を中心とした投手陣が、どこまで健闘するかが焦点だ。

 国士舘もエースの安陪 蕙、捕手の松澤 龍樹など、昨夏の8強経験者が多く残っている。ただともに不本意な試合をしており、夏に向けて立て直しを図っている。早稲田実を破った都立昭和は、決勝の満塁弾を放った小谷 英志が打撃の中心。早稲田実打線を2点に抑えた田舎 凌の緩い球は、術中にはまると苦労する。秋季都大会早稲田実延長戦の戦いを演じた都立小平は、春も都立日野に延長戦の戦いをしている。目立った選手はいないものの、上位に進むポテンシャルがある。

 日大桜丘桜美林など、かつて甲子園での優勝経験のある学校も、総合力は高い。明大中野八王子は、椙原 貴文監督の下、初の甲子園を目指す。国学院久我山は、2年前の主砲・江川 尚輝(国学院大)の弟である江川 昂輝が投手陣の一角を担い、チーム力で戦う。

 春季都大会修徳と延長戦の熱戦を繰り広げた明星は、4番篠崎 宰響を中心に粘りの野球をする。日大二は1年生の夏からマスクをかぶる日大二林 健太が最後の夏に臨む。

 例年にない戦国大会。どこにもチャンスがあるという思いが、夏の戦いをより熱いものにしている。

(文・大島 裕史


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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