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2016年の高校野球を占う【鹿児島編】「鹿児島実を筆頭に『私学8強』がけん引。意地をみせたい大島ら公立勢」

2016.02.09

 鹿児島実が5年ぶりにセンバツ出場を果たし、これで鹿児島県勢は6年連続出場に。強豪が多い九州勢の中でも勢いのある県だろう。2016年の鹿児島県はどこが勢力を握っているのかを追ってみたい。

今年の鹿児島は8校の私学がカギ

綿屋 樹(鹿児島実)

 昨秋の鹿児島県大会を振り返ると、鹿児島実を筆頭に、今年の鹿児島は8校の私学が覇権争いに名乗りを上げている印象がある。

 中でも、夏春連続で甲子園に出場する鹿児島実の力が充実している。昨夏に5年ぶりの甲子園をつかんで名門復活の狼煙を上げ、余勢を駆って秋の県大会も制した。九州大会でも4強入りして、こちらも5年ぶりとなるセンバツを決めた。1年秋から4番に座る綿屋 樹主将(2年)を中心とする強力打線が持ち味。中でも綿屋に対する評価は高く、宮下 正一監督は「この冬のトレーニングで全員の打球が上がったが、綿屋は別格」と評する。

 1年前から取り入れた食事トレーニングの成果もあり、筋量が増え、よりシャープな身体になった。センバツでも注目打者に挙げられそう。綿屋が徹底マークされる分、その前後を打つ板越 夕桂(2年)、追立 壮輝(2年)らがどこまで成長できるか。また丸山 拓也(2年)、谷村 拓哉(2年)の両右腕を軸にした投手陣の出来がカギになる。

 九州大会8強樟南は伝統校らしい勝負強さが戻ってきた。昨秋は鹿児島市大会で鹿児島池田に初戦敗退し、シード権を逃したが、県大会準々決勝でリベンジし、九州大会を勝ち取った。九州大会では、準々決勝日南学園に先制しながら逆転負けで4強入りは逃した。浜屋 将太畠中 優大の2年生左腕コンビにリードする前川 大成主将(2年)、リードオフマンの大澤 大樹(2年)、俊足巧打の今田 塊都(2年)、九州大会でホームランを打った4番・河野 勝丸(2年)ら、前チームから主軸を担った選手が多く、経験値は高い。

 夏秋連続で準優勝だった鹿児島城西も頂点にふさわしい実力がある。昨秋はエース平 将太(2年)が成長。元々の持ち味だった球威に加えて、制球力がつき、カーブやチェンジアップといった変化球も増えたことで投球の幅が広がった。投手力が安定している分、守備も堅い。攻撃では送りバントやスクイズなど、バントを活用したそつのない野球をする。ここ数年常に「あと一歩」で大魚を逸しているだけに、春の県大会で頂点に立って、夏へのステップにしたいところだ。

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[page_break:潜在能力が高いれいめいも怖い存在 公立は大島が私学に負けない力を持つ]

潜在能力が高いれいめいも怖い存在 公立は大島が私学に負けない力を持つ

太田 龍 (れいめい)

 昨秋は8強どまりだったが、れいめいも潜在能力は高い。昨秋の県大会準々決勝鹿児島実と競り合った試合は、昨年のベストゲームの一つに挙げられるほどレベルの高い内容だった。188センチの長身右腕・太田 龍(2年)は最速140キロ台の直球を持ち、プロも注目する本格派。1年の冬場は腰椎分離症を患い、満足なトレーニングができなかったが、この冬場で一皮むければ、春以降さらに注目度は上がるだろう。神村学園は、そのれいめい4回戦で惜敗したが、こちらも県上位クラスと戦力的にはそん色ない。主砲・田中 梅里主将(2年)、エース内田 雅輝(2年)ら前チームの経験者を中心に捲土重来を期す。

 鹿児島池田は、前述したように鹿児島市大会で樟南を破り、秋の県大会では創部以来初めてとなるシード権をとり、8強入りした。部員は20人に満たないが1年からの経験者が多く、今年の鹿児島を盛り上げるニューフェイスだ。大隅勢では尚志館鹿屋中央の甲子園経験校が巻き返しを狙う。鹿屋中央山本 信也監督が復帰し、再起をかける。

 公立勢では、鹿児島大島が「私学8強」にそん色ない力がある。昨秋は公立勢で唯一4強入りし、2度目の九州大会出場を勝ち取った。九州大会では初戦神埼清明(佐賀)に完封勝ちし、初白星も挙げた。左腕エース渡 秀太(2年)、主砲でリードも巧みな上原 勇人(2年)、守備の名手・大山 竜生主将(2年)と攻守に高いレベルでまとまっており、一昨年21世紀枠でセンバツ初出場したチームよりも安定感がある。昨秋8強の鹿児島南は、打線に力があり、粘り強さが身上だ。

 昨秋は上位に勝ち上がれなかったが、好投手を擁するチームがどれだけレベルアップしたかも、春は注目したいところである。鹿児島情報肝付 大昌(2年)、加治木工長野 良太(2年)、沖永良部奥間 卓斗(2年)、鶴丸有木 和也(2年)、加世田夏越 竹丸(2年)らの名前を挙げておく。昨秋はれいめい初戦敗退だったが、松井 絃起(2年)、竹迫 勝弥(2年)の注目打者を擁する鹿児島をはじめ、鹿児島市の鹿児島玉龍、近年の台頭著しい薩南工や同じ南薩地区の指宿指宿商川辺、北薩地区の鹿児島川内、出水中央、姶良・伊佐地区の加治木国分中央などが、一冬超えてどんなチームに成長するかで、夏の勢力図は大きく様変わりする。

(文・政 純一郎


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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