試合レポート

木更津総合vs桐光学園

2015.10.31

7割~8割から一転してマックスのストレートで桐光学園打線をねじ伏せる!

中川颯(桐光学園)

 試合前半は桐光学園が上手い試合運びを見せていた。木更津総合の先発・早川隆久(2年)に対し、毎回安打を記録。千葉県の各校の打者を太刀打ちさせなかった早川から安打を打つ桐光学園打線は実にレベルが高い。

 4回表は二死から6番清水太一(2年)の二塁打、7番渡邉宏祐(1年)がストレートに詰まりながらも、左翼線二塁打を放ち、1点を先制する。
 
 桐光学園の先発・大河原誠(2年)は左腕から球威ある直球、スライダー、カーブを低めに投げ分け、3回まで被安打1、無失点に抑える好投。しかし4回表、二者連続四死球で無死一、二塁のピンチを迎えたところで、あっさりと一塁を守っていたエースの中川颯(2年)にチェンジ。中川はピンチを切り抜け、同点を許さない。

 中川は下手投げから、コントロール重視の投球で打ち気をそらす投球。リズムも良く、強打の木更津総合打線をとらえさせなかった。木更津総合の五島卓道監督は、「相手投手はボールは速いですし、さらにテンポも早く、準備がなかなかできませんでしたので、早めに準備するように伝えたのですが…」と指示を送ったものの、なかなか打線が目覚めない。

 6回裏には無死三塁のチャンスを作ったが、無得点。桐光学園が良い守備を見せていて、試合の流れは桐光学園に傾いているように見えた。
 だがこのままではいけないとエースの早川がギアを入れる。早川は県大会中、ランナーがいない時から7割~8割の力で投げて、ピンチの時に全快のストレートで打ち取る投球スタイルで手玉に取っていた。それができるのも、夏のトレーニングが影響している。夏が終わって、早川は、上半身のウエイトトレーニングを始めた。投手がアウトマッスルを鍛えるのは勇気がいるが、よりストレートをレベルアップするには筋力トレーニングで、パワーアップしなければならないと実感していた。
 


早川隆久(木更津総合)

 ただアウトマッスルを鍛えるだけではなく、インナーマッスルを鍛えるなど、バランス良く体を鍛え上げてきた。そして栄養面でも気を遣い、練習前にはできるだけ炭水化物を摂ってエネルギーを蓄え、練習後にはたんぱく質、またビタミン摂取にも気を遣うなど、体を大きくすることにこだわってきた。

 その結果、ストレートもコンスタントに140キロ前後までレベルアップ。1年の時からキレの良さが際立ったが、今は球威が出てきて、ボールが前に飛びにくいものになってきた。この日も最速140キロを計測するなど、力強さが目立ったが、力8分でも抑えられる投手というのは人並み以上のスピードボールを投げられる投手にできるもの。スピードが遅い投手が中途半端に力八分で投げても、合わせられるだけ。早川は7割~8割でも130キロ中盤を計測し、さらに変化球の切れも良いので、しっかりと試合が作れるのだ。投手として余裕が出たといっていいだろう。

 しかし桐光学園打線にはそれが通用しなかった。またこの日は変化球が思うように切れず、意図通りに投げられない。最近はストレートの調子が素晴らしかったということもあり、全快のストレートで勝負していった。そのストレートに桐光学園打線は前に飛ばすことも少なくなっていた。

 そして7回裏、木更津総合は、一死二、三塁から9番井上瑞樹(2年)の逆転適時打で2対1とすると、早川は走者を出しながらも、8回表には4番中川を狙い通りの高めのつり球で空振り三振を奪い、最後はなかなか投げなかったスライダーだったがリードする捕手・大澤翔のサインを信じて、スライダーで投手ゴロに打ち取り、1失点完投勝利を挙げた。次の試合へ向けて早川は「次は甲子園を経験している花咲徳栄ですし、また相手の高橋昂也投手は、本当に良い投手。でも同じ左投手なので負けない気持ちはある」と闘志を燃やしていた。

 技術的にも、肉体的にも、精神的にも大きくなっている早川隆久。関東屈指の左腕同士の対決は大きく盛り上がりそうだ。

 

(文=河嶋 宗一


関連記事
・2015年秋季大会特設ページ

2015年秋季大会

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.28

【鹿児島NHK選抜大会】川内商工が2試合連続逆転サヨナラ勝ち!雨のため2試合が継続試合

2024.05.28

【鹿児島NHK選抜大会】錦江湾が1点差勝利!出水工の追い上げ、あと1点及ばず

2024.05.28

【大分】佐伯鶴城は4戦3勝、杵築は4戦で1勝<強化試合>

2024.05.28

春の福岡地区を制した沖学園(福岡)、勝利のカギは異例の「決勝直前沖縄合宿」だった

2024.05.28

交流戦開幕、初戦の注目は髙橋宏斗vs.今井達也の初対決!

2024.05.25

【関東】白鷗大足利が初、逆転サヨナラの常総学院は15年ぶり決勝<春季地区大会>

2024.05.25

【熊本】九州学院、熊本工が決勝へ<NHK旗>

2024.05.25

首都2部優勝の武蔵大の新入生に浦和学院の大型左腕、左の強打者、昌平の主軸打者など埼玉の強豪校の逸材が入部!

2024.05.26

【近畿大会注目チーム紹介】実力派監督就任で進化した奈良の名門・天理。超高校級の逸材3人を擁し、緻密な攻守で全国クラスのチームに!

2024.05.25

【岩手】盛岡大附がサヨナラ、花巻東がコールドで決勝進出、東北大会出場へ<春季大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【岩手】盛岡中央、釜石、水沢が初戦を突破<春季地区予選>

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商