試合レポート

埼玉栄vs上尾

2015.07.11

上尾の粘り及ばず。立ちはだかった埼玉栄・出井

 
 埼玉栄・若生監督の夏初陣は、いきなり古豪・上尾との対戦、1回戦屈指の好カードは前評判どおりの展開となる。

 埼玉栄はエース出井 敏博上尾は背番号3の田中が先発し試合は始まる。

 出井は元々MAX140kmの投手だが、その直球に頼らず、序盤から変化球を中心に丁寧に投げ粘り強い上尾打線になかなかチャンスを与えない。

 一方の田中も持ち味の制球力が序盤から冴え序盤は埼玉栄打線を的を絞らせない。

 この試合最初にチャンスを掴んだのは上尾だった。

 3回表、この回先頭の田中がセンター前ヒットで出塁すると、続く松本がきっちりと送り一死二塁とする。9番・増田はショートゴロに倒れるが、ここで二塁走者・田中が三塁を狙う。タイミングは微妙だったがショート石井は三塁へ投げず二死三塁とチャンスは広がる。1番・早津は2ボール1ストライクからの変化球をうまく拾うが打球は惜しくもファールとなる。最後はギアを上げた出井の高めの直球に対し早津のバットは空を切り上尾は先制機を逃す。

 一方の埼玉栄打線は単発で走者こそ出すが上尾・田中の前からなかなか連打が出ない。

 元々、若生監督は無死一塁から判で押したように簡単には送ってこない監督だ。この日も果敢に足を絡めようとしていたが、まだ就任してから数ヶ月ではイズムが完全には浸透していないのであろう。足を絡めようとするとこの日も二度相手バッテリーにウエストされ刺されるなどチグハグな攻撃が続き得点を奪えない。

 6回表、上尾は一死から早津がセンター前ヒットで出塁すると、続く前田がきっちりと送り二死二塁とする。ここで3番・阿部は歩かされ二死一二塁となると続く野島がセンター前ヒットを放つ。5番・大橋はここまでノーヒットだったことや試合が1点勝負ということもありこの場面強引にでも本塁突入をさせたい場面であったが打球が早かったことや二塁走者早津が大きな第二リードを取っていなかったこともあり、コーチャーは早津を三塁で止める。結局後続も倒れ上尾絶好の先制機を逃す。


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 ゲーム中盤からやや上尾ペースで進んだこの試合、さらに7回で正捕手黒澤が足を痛め負傷交代となるなどチームに暗雲が立ち込め始めた埼玉栄であったが8回裏、出井自らが突破口を切り開く。この回の先頭打者として右中間へ三塁打を放つと一死後、2番・神保のサードゴロでややギャンブル気味に本塁へ突入する。判定はセーフ。貴重な1点を自らの手で奪って見せた。

 追いすがる上尾も最終回、先頭阿部のセンター前ヒットを放つと、無死一塁から表攻めという事もありどうしても2点以上を狙いベンチは続く野島に強行、一死後代打の瀬田にエンドランを出すなど果敢に仕掛け二死二塁とチャンスを作るが、後続が打ち取られ万事休す。埼玉栄が1対0で勝利し若生監督の初陣を飾った。

 まずは、上尾だがこの試合田中は粘り強く投げていた。守備もノーエラーで相手の足を絡めた攻撃も封じた。自分たちのカラーは出ていただけに何とか勝ちきりたい所であったが好投手・出井からあと一本が出なかった。悔やむべくは1点勝負のこの試合、ギャンブルを仕掛けられなかったことであろう。もちろんこの上尾の粘りは賞賛に値する。今後も伝統として失ってはならないものだが、それと同時に特定の選手だけではなくチームとして強攻なのか、足を絡めるのか、それは上尾・高野監督が決めることだが、時には超積極的な攻撃エッセンスも加える必要性があるのかもしれない。

 一方の埼玉栄だが、この日は出井に尽きるであろう。上尾の粘りに屈することなく実に丁寧に投げていた。だが、若生イズム浸透へ道半ばというべきか打線には多くの課題が残る。初戦の硬さもあったのかもしれないが、エンドランはことごとく決まらず結局この試合最後まで連打は出なかった。しばらくは出井、大谷の投手陣の我慢の時間は続きそうだが、守備は堅く投手陣は安定しているだけに上位進出してくると面白い存在になりそうだ。打線の奮起に期待したい。

(文=南英博)


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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