試合レポート

徳島商vs阿南工

2015.03.30

練習試合と公式戦の「違い」

5安打4奪三振完封の育田 佑輝(徳島商)

「練習試合の結果が公式戦の結果にそのままつながるわけではない」。

 字にしてしまえば当たり前の話だが、今回のセンバツでは開幕前の練習試合1分3敗の松山東(愛媛)が開幕前の練習試合で好調をキープしていた二松学舎大附属(東京)を破ったことにより、改めてその論理が生きていることが証明された。

 練習試合ではチームや個人の課題をいかに導き出し、公式戦までに様々な部分で準備を整えられるかが公式戦で力を出すポイントになる。練習試合を活かす意識が高かければ高いほど、そして公式戦のステージが大きければ大きいほど、その差は勝敗の部分にまでかかわってくる。

 そぼ降る雨の中で行われたこの試合でもそういった現象がみてとれた。

 結果的にはサイドハンドから多彩な変化球を駆使した育田 佑輝(3年・投手・右投右打・176センチ78キロ・鳴門市第一中出身)が97球で5安打4奪三振完封し6対0も、「先日の練習試合でも6対0で作新学院(栃木)に快勝しているのに、まだ受け身になってしまうんだよね」と浮かない表情なのは徳島商業・森影 浩章監督。

「相手に1つアウトをやりながら、自分たちのペースを維持する」意図を持って行ったバント失敗が2回、50メートル走6秒1・昨年11月に開催された「体力・技術向上研修会」でもベースランニング14秒02を叩き出した1番・平野 善常(3年・右翼手・右投両打・176センチ69キロ・牟岐町立牟岐中出身)も「脚を使いたい」気持ちがやや空回りする場面が見られた。

「公式戦で勝てていないからね」と指揮官が語るように、徳島商の県大会ベスト4以上は、2013年春以来丸2年ぶり。2012年秋以来の四国大会出場権をかけた鳴門渦潮との準決勝は、練習試合の内容を公式戦でいかに表現できるかがカギになりそうだ。

 一方の阿南工業も昨秋県大会初戦敗退から今大会はベスト8。初戦の穴吹戦で最速140キロ越えを果たし5安打8奪三振で完封したエース・片山 雅斗(3年・投手・右投右打・182センチ75キロ・阿南市立加茂谷中出身)をはじめ、複数選手がインフルエンザにかかり出場不可能な状態。それでも2回戦で昨秋県大会ベスト4の海部を破る原動力となった笠井 公貴(3年・一塁手兼投手・左投左打・179センチ96キロ・阿南市立羽ノ浦中出身)と井筒 仁斗(3年主将・捕手・右投右打・167センチ72キロ・美波町立由岐中出身)のバッテリーばかりでなく、背番号二桁の選手たちも粘り強く戦った。

「ここで力不足を感じた後に行動してほしい。名前負けはしなくなってきたので、それはできるはずです」と選手たちの奮起を促す福岡 秀祐監督。これも公式戦でないと味わえなかった感情だろう。

 はたして今後、両校が練習試合と公式戦との「違い」をどう感じ、どう研鑽していくのか?その答えは7月に出る。

(文=寺下 友徳

2015年度 春季高校野球大会 特設サイト
【ひとまとめ】2015年の全国各地の高校野球を占う!

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.22

【愛知・全三河大会】三河地区の強豪・愛知産大三河が復活の兆し!豊川を下した安城も機動力は脅威

2024.05.22

【秋田】明桜と横手清陵がコールド勝ちで4強入り<春季大会>

2024.05.22

阪神・佐藤がフェンス直撃のタイムリー!昨日のHRに続き今日もバットで結果!再昇格へ連日アピール!

2024.05.22

【愛知・全三河大会】昨秋東海大会出場もノーシードの豊橋中央が決勝進出、147キロ右腕・内山など投手陣に手応え!名指導者率いる三好も期待の 1、2年生が出場

2024.05.22

【福島】学法石川と聖光学院が4強入り、準決勝で激突<春季県大会>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.17

「野球部や高校部活動で、”民主主義”を実践するには?」――教育者・工藤勇一さん【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.5】

2024.05.19

【東海】中京大中京がコールド勝ちで17年ぶり、菰野は激戦を制して23年ぶりの決勝進出<春季地区大会>

2024.05.20

【春季京都府大会】センバツ出場の京都国際が春連覇!あえてベンチ外だった2年生左腕が14奪三振公式戦初完投

2024.05.20

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在31地区が決定、宮城では古川学園、仙台南、岩手では盛岡大附、秋田では秋田商などがシードを獲得

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【岩手】盛岡中央、釜石、水沢が初戦を突破<春季地区予選>

2024.04.23

床反力を理解しよう【セルフコンディションニングお役立ち情報】

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?