横浜DeNAベイスターズ 荒波 翔選手 「チームにさらなる追い風を」
スピード感あふれる華麗なプレーでファンを魅了する横浜DeNAベイスターズの荒波 翔選手。2014年は故障もあり、悔しいシーズンとなった。2015年もまた、キャンプで二軍スタートとなった。開幕を迎えても、ファームでの試合出場が続く。17試合中16試合に出場し、打率.298、1本塁打、3盗塁。荒波にとっては、まだ納得のいく結果でなかったかもしれないが、懸命なアピールを続けたことに一軍首脳陣も評価。
また、4月9日時点で、単独首位となり勢いに乗る横浜DeNAベイスターズにとっても、さらに勝ち進むために、荒波の力が必要だった。
そして、4月10日。ついに一軍登録となった荒波。今後のプレーに、ファンからも球団からも期待が高まっている。
自分との戦いの中で掴んだ一軍復帰
荒波 翔選手(横浜DeNAベイスターズ)
荒波選手は、悔しい思いをした2014年をこう振り返る。
「課題はやはりケガをした部分ですね。レギュラーを続けるのならば、シーズンを通して動けなければいけないと思いますし、ケガをしない体を作ることが大事だなとすごく感じました。僕の場合は、ファンの方がファームの時でも応援してくださって。やっぱり(試合に)出ていないと、来てくれた人にも寂しい思いをさせてしまうのだということを痛感しました」
また、ケガをしない体作りを考えていく上で、気付いたこともある。
「トレーニングでは『力を抜くこと』の大切さに気付きました。言うのは簡単なんですけど、僕は何をするにも、どちらかというと力んでしまうんです。その分ストレスも抱えますし、自然体の中で動けるように意識をしていきました」
多くの選手が脱力は意識しているが、難しいと語る。荒波選手の場合、具体的にどのように工夫してきたのか。
「例えば、筋力トレーニングの中でも全部、力むのではなくて、実際の動きに通じるようなフォームの中で力を抜く部分を作ったり、スクワットでも少し力を抜いて自分の重さを感じながら動いたり、というのを昨年のリハビリの時からやってますね。今年は自然体な動きをバッティングでも走る中でも取り入れていこうと思ったので、力を抜くことに繋がるトレーニングをしています」
さらに、周囲からのプレッシャーの中でも、自然体な動きをするために、こう考えてきたという。
「やっぱり、これから周りに向けてアピールしなくてはならないので、人に見られたりプレッシャーの中でもイメージ通りの動きができるように意識してやっています。ただ、僕らは『1年間継続してどうだったのか』で振り返っていかなければならないので、その時その時の結果にとらわれないようにしたいです。今はシーズンオフから取り組んだことを信じて、振り返るのは終わった時で良いと思います」
今の荒波選手は自分の取り組みを信じるしかない。プロは自分との戦いによる部分が大きい。
「自分との戦いですし、そこで妥協するのは簡単で、追い込む方は難しいと思うんです。でもその分、やったら結果が出ると思って、信じてやっています。良い結果だろうと、そうではなかろうと、取り組んだ過程は間違っていないと思うので」
数字にとらわれず、無心でプレーをしていきたい
荒波 翔選手(横浜DeNAベイスターズ)
4月10日、一軍登録となるも、横浜DeNAベイスターズの外野手と言えば超激戦区だ。昨年、打率.300、22本塁打を放ち、和製大砲と期待される筒香 嘉智選手や、昨年、盗塁王を獲得した梶谷 隆幸選手と、ライバルが多い中で荒波選手は何を武器にしていくのか。
「スピード感あるプレーと守備ですね。それはプロに入ってから変わらずやってきたことですけど、今シーズンは打つ方もまたすべて挑戦。昨年、ケガをしてもう一段階、変われた部分もあるので、そこを見せていけたらと思います」
ライバルから学んでいることや、取り入れようと思うことはあるのだろうか。
「真似とかはないですけど、選手それぞれに良いところはありますし。外野に限らず、自分で良いなと思ったことはやっていこうと思いますね。ポジションもチームも、年上年下も関係無しに僕は結構聞く方。どういう感覚でやっているのだとか、先輩にも『ここどうですか?』と聞くことが大事だと思っています。相手が後輩だろうとライバルだろうと、チームが強くなることにもつながると思います。
やっぱり野球って自分一人では勝てないスポーツなので。優勝目指してやるという気持ちでいるからには、お互い言える範囲で、チームで共有していければ強くなっていけると思いますね」
ライバルとはいえ、敵視することはない。優勝するために、年上、年下関係なく何が出来るかを考えている。
荒波選手はプロ入り5年目を迎える。チームの中でも中心選手となることがますます期待されるが、これまで色々な選手を見てきた中で、結果を残す選手はメンタルの強さが大事だと荒波選手は語る。
「僕自身も良い時、悪い時が結構ある方なので。気持ちやメンタルが一番大事かなと思っています。数字が毎日出るスポーツなので、一つひとつに毎日とらわれない方が良い。僕の場合は1週間や1ヶ月で目標を決めて、例えば1日ヒットを打てなくても、1ヶ月何本って決めている目標に届いたらいいなと。あまり一喜一憂しないでやれたらいいと思いますね。
メンタルは、高校生はとくに大事だと思います。甲子園に限らず、試合の場で、ドラマが起こるのはやはりメンタル面が原因だと思うので。数字にとらわれ過ぎない、一喜一憂しない、と練習から取り組めれば、自然体でいられると思います」
荒波選手自身も数字にとらわれてしまった時期などあるのだろうか。
「シーズンが終わる直前は一番わかりやすいんですけど、少しでも良い成績で終わりたいので『ここで打ったら数字が上がる!』と欲しがったりすると、自分がいつも打てている球に手が出なくなってしまったりとかするんです。色々と考えてしまうと体の動きも鈍るので、やっぱり『無心』ということを日頃から意識してやっていければと。
とはいっても、なかなか難しいですよね。高校生の時もそうでしたけど、自分も気持ちを入れ込んでしまうタイプなので。そこをうまく自分の中でコントロールしておけるようにすると良いと思いますよ。悪い時に手が付けれなくなるよりは、日ごろから自分で整理をして、『こうなったらよくないな』っていうポイントをわかっておけば、気持ちの面でだいぶ冷静になれる」
プロは数字で評価されるが、それにとらわれすぎると、本来のプレーが出来ない。無心でプレーする大事さを荒波選手は実感している。
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荒波 翔選手(横浜DeNAベイスターズ)
ここからは荒波選手のトレーニング観を探っていきたい。荒波選手のプレースタイルの中で「スピード感」という話が出たが、筋肉を付けすぎることに対してはどう考えているのだろうか?
「動ける中で太っていくのがいいと思います。僕は体重で考えた時、あと2キロ太った方がいいかなとか思うんですけど、ウエイトで2キロって意外に重いんですよね。それを持って走れるようだったら良いと思う。僕の場合、スピードあってのパワーだと思うので、バランスは大事だなと思います」
荒波選手の中でベストだと思える体型は?
「今ぐらいが良いですね。徐々に上げてはいきたいですけど、そんな一気にマッチョにはなりたくないです(笑)。ウェアを選んだりするときもラインを大切にしたいので、鍛えながらですけどそこもバランスですね」
荒波選手は、スタイリッシュなところもファンから人気だ。とくに細めの選手やスピードを重視する選手は、荒波選手を目指しているという話をよく聞く。スタイリッシュな姿を出すために意識していることとは?
「ユニフォームはキツめのものを着た方がいいです(笑)。高校生でユニフォームをかっこよく着ている選手は、やっぱり上手いと思うんですよ。細かいところにまで気を向けられる証拠だと思っています。だから身だしなみというか外見も大事。僕も、どっちかといったらカッコつけたい方ですから。自分が見てきたプロ野球選手とか良い選手はかっこ良かったので、そういったイメージですよね」
強豪校の選手は、確かにユニフォームの着こなしが良い。やはり着こなしは、良い選手になるためには重要な要素だと感じさせらる。
最後に、荒波選手に、これからの活躍への思いについて熱く語っていただいた。
「改めて『やっぱり荒波 翔はこうだな!』と思ってもらえるように、守備にしても走る方でも魅せたい。打つ方でも、4年間見てもらっていた所から一皮むけれるように、地道にやってきたことを認めてもらえるよう、これからアピールしたいと思います」
4月9日現在、単独首位で勢いに乗る横浜DeNAベイスターズに、さらなる追い風を吹かせるために、荒波選手の活躍が鍵となる。