福岡ソフトバンクホークス 中村 晃選手【前編】「『首位打者・最高出塁率』を目指す『深み』の深層」
2014年のパシフィックリーグ・レギュラーシーズン最終戦でオリックス・バファローズとの激戦を制し、3年ぶりに優勝を果たした福岡ソフトバンクホークス。
続く北海道日本ハムファイターズとのクライマックスシリーズ第2ステージ、阪神タイガースとの日本シリーズでも苦しみを乗り越え頂点に立った若鷹軍団の中にあって、日本シリーズ第4戦でのサヨナラ3ランなど、ひときわ鋭い爪を輝かせたのが、打席でも、一塁手と外野手を均等にこなす守備でも、器用さを見せた当時7年目の中村 晃選手である。
今年に入っても、その打棒は健在だ。2番ライトで出場した千葉ロッテとの開幕戦では、3打数2安打のマルチヒットで好発進。その後も快打を連発し、現在13試合を終えて、リーグ8位の打率.320をマーク。(4月13日現在)
正に「若鷹」の旗頭として飛躍の時期を迎えようとしている2015年。その挑戦とそこに到達するための「深み」の深層について今回はお話を伺いました。
2015年の挑戦は「首位打者・最高出塁率」
――福岡ソフトバンクホークス・中村 晃選手は2015年・挑戦のテーマを「首位打者・最高出塁率」と書いて頂きました。昨年は176安打を放ち最多安打を獲得しましたが、さらなる「挑戦」として、このテーマを記した理由について、まず教えてください。
中村 晃選手(以下、「中村」) 僕は野球というものは確率が大事だと思っています。ですから、安打数より「打率」・「出塁率」を目標にしたいと思って記しました。
――「確率」を上げるためには、四球を選ぶ他に、バットコントロールや心技体のコントロールなど、様々な部分を強化する必要があると思います。中村選手はどの部分をワンランク上げようと思っていますか?
中村 やはり、ストライクゾーンの球を打ち、ボールゾーンの球を見逃す。単純ですが難しいことをしっかりできるようにしたいです。
「トップを作って、最短距離で振る」ためのバット操作
中村 晃 選手(福岡ソフトバンクホークス)
――技術的な部分ではいかがですか?2月のキャンプの時は、色々な種類のティーをされていました。最初は前からゆっくりしたボールを打つ。次は横からのボールをノーステップでトップを作ってから打つ。そこにはそれぞれ意味があると思います。
中村 たとえば横からのティーで言えば、開かずに打てる利点があります。最終的に打席ではステップを踏まなくてはいけないのですが、ノーステップで打つときも、そこに至る段階の中で、トップが決まって無駄な動作がなくボールを当てられるかを確認しています。
――確かに中村選手は打席でも、最初はバットを上下していますが、打つときはトップがすぐに決まって、そこから最短距離でバットが出ています。
中村 はい。そうですね。
――「トップを作って、最短距離で振る」思考はプロに入ってから熟成されたものなのですか?
中村 入団当初はそこまで意識していませんでしたが、4年目・5年目になって意識し出して、今では一番大事なことだと思っています。トップを作ってから余分な動作があると、どうしても思うようにバットとボールが当たらなくなります。自分の思ったところにもバットは出てこない。ですから、そこは常に意識していますね。
――左投げ左打ちの中村選手ですが、ティーでは右手一本で操作する場面も多かったですね。
中村 僕の利き手は左手なので、左手は自由に操作できます。それだけに右手の操作ができなくなると確率も悪くなる。ですから、右手も意識して振っています。
――これは高校生の左打ち選手も悩んでいる部分だと思うのですが、右手を操作する際に中村選手はどこを意識していますか?
中村 今、意識しているのは右手をピッチャー方向にしっかり力を出すイメージです。右手を引きすぎてしまうと、バットに力が伝わらず、滑ってフライになってしまうんです。ピッチャー方向に力が伝わればライナー性の強い打球が出るんです。難しい表現ですが。
右半身の使い方
中村 晃 選手(福岡ソフトバンクホークス)
――「トップを作って最短距離で振る」にはバット自体も大事な要素だと思います。バットについて気を遣っていることはありますか?
中村 バットの形状は3年目から変えていませんが、自分のバットは持った感じの操作しやすさと、振り抜きやすさだけに気を遣っています。重心がどこにあるのかは、あまり気にしていません。
――フリーバッティングを拝見してもヘッドが遅れて出て、芯にボールが当たってヘッドが抜けるイメージ。
中村 感覚的にはそうなんですけど、言葉で説明するのは本当に難しいんですよ。
――コースによって、力の入れ方は変えたりするんですか?
中村 いや、僕は全部力を入れて振ります。ボールの内側から叩けばどんなコースでも芯に当たりますから。逆に外側から叩くと詰まります。外側から叩くとポイントが少なくなってしまうんですよ。
高さに関係なく、グリップから出していくイメージで振れば、インコースでもセンター方向に打てるようになります。いわゆる「詰まってセンター前」ですね。前で最後にさばけて、芯に当たって相手のいないところに行くんです。
――バットのグリップや握り方で意識していることはありますか?
中村 特にはないです。握りは練習中一握り余らせて持って、シーズン中はもっと短く持ちます。その日の身体の状態によって、持つ長さは日々異なりますね。
――昨年の日本シリーズ第4戦では延長10回に阪神の絶対的守護神・呉 昇桓投手からサヨナラ3ランを打ちました。ちなみにあの時はどんな握りだったのですか?
中村 全然覚えていないですが、このくらい(一握り半余らせる)ですかね。実はあの時はあのボールしか(変化球が内角高め内よりに抜けたもの)打てないくらい調子が悪くて。アウトコースにストレートが来ていたら空振りでした。たまたまです(笑)。たまたま自分の打てるところに来て、たまたま自分のスイングができて、軌道が乗っただけです。
――もう1つ。中村選手は右半身の使い方に気を遣っているようにみえます。右の脚・お尻・腕・手を壁にして、そこに左手の操作が付いていく。
中村 確かに意識しています。右脚が絶対に投手の方に開いて向かないようにしています。これはティーや素振りから意識付けをします。横から投げてもらうティーもその一環です。
右脚が開くとスライスがかかった打球になるんです。ファウルを打つときはそれでいいんですけど。真っ直ぐ打球を飛ばす。レフト線であれば、線上を真っ直ぐ打球が飛んで、レフト線の内側に落ちる。それが理想です。
中村選手、ありがとうございました。後編では今度は「守備」にスポットを当てて、一塁守備の考え方についてもお話を伺いました。
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(インタビュー・寺下 友徳)