Column

市立和歌山高等学校(和歌山)【後編】

2015.02.02

二塁手には身体能力、遊撃手には野球勘を求めたい

 前編では、甲子園に出場するまでの軌跡を描いてきました。後編では、チームを率いる半田 真一監督に、二塁手、遊撃手に求める能力、また守備における守りごと、市立和歌山が目指すチーム像について、伺いました!

鉄壁の内野守備は地道な反復練習の賜物

西山 翔真君(市立和歌山)

 県内一と言われる内野守備を作り上げた半田監督が、二遊間に求めるものを語ってくれた。
「技術は持っていなければならないですし、それと必要なのが広い視野です。的確な指示が出せるよう野球を一番理解してほしいのが二遊間ですね」

 さらに細かく聞いてみると二塁手に求めるものは、
「(走る方向と投げる方向が)逆の動きが多いですからね。カットプレーでもランナーの後ろで絡むことが多いですし、意外かと思いますが、肩の強さは必要です。ショートより身体能力が必要だと思っています」

 また、遊撃手に求めるものは、
「野球勘ですね。ピッチャーの配球の意図を汲んだポジショニングであったり、目に見えづらい部分が求められるポジションだと思います」と話す。

 一般的には、二塁手は玄人好みの職人肌の選手が、遊撃手は強肩で華のある選手が守るイメージがあるが、半田監督の理想はその逆のようだ。

「西山は野球勘とかそういうものを持ち合わせているので。技術を持ってる子は過去にもいたんですけど、指示を出すとかは教えても出来ることではない。その点では歴代の中でも上位ですね」

 旧チームから残る遊撃手のレギュラー・西山 翔真はすでに高いレベルにある。好守の山根 翔希の後を継ぐ二塁手・北嶋 稜甲子園ではベンチ入り。
「守備が僕の持ち味だと思っているので、チームに貢献出来るよう守備中心にやっていきたいです」
と自覚も十分だ。

北嶋 稜君(市立和歌山)

 半田監督が守備で重要視するのは、捕球時の形、ボールへの入り方やフットワークだ。骨盤を前傾させて猫背にならないようにというのが基本姿勢だ。骨盤が下がってお尻を引いたような形になると頭が突っ込んでしまう。

「今は近くから手で投げたゴロを基本の形で捕る練習を多くやっています。それと捕った後、右足が左足の前に出るフロントステップも。捕る時、投げる時に体幹を意識して軸が安定するようにしています」
と話すのは北嶋だ。守備に自信を持つ選手でも、形を意識した基礎練習をおろそかにしない。

 1年秋から背番号6を背負う西山は昨春、ゴロが上手く捕球できずに悩む時期が続いていたが、丸1ヶ月、バッティング練習を一切せず、コーチとマンツーマンでただひたすら正しい形を意識してゴロを捕る練習を繰り返し、克服。

 守備力が自慢の旧チームはオフシーズンでも塁間の半分の距離ぐらいのボール回しを逆回し、タッチプレーなどバリエーションをつけながら何度も繰り返していた。どんな名手でも試合で歓声を浴びるために必ず地道な努力を重ねている。

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[page_break:センバツ出場は逃したが、守備からリズムを作る伝統は健在]

センバツ出場は逃したが、守備からリズムを作る伝統は健在

 に優勝を飾り、追われる立場となって臨んだ秋季大会は4回戦の日高中津戦で姿を消した。

「ピッチャーが予想以上に抑えていて、8回を2安打で四球も無かった。9回球速が落ちているのは分かっていましたが」

4対1と3点のリードの9回、先頭打者にレフト前ヒットを打たれると続く打者のセカンドゴロがイレギュラー、これ以上ランナーをためたくない場面で、この日初めて四球を与え満塁とされると、犠牲フライとスリーランを打たれ一気に逆転を許す。9回裏に一旦5対5に追いつくが10回に再び突き放された。

「この秋はものにしたかった。いい流れを作るチャンスやったんでね」

 市立和歌山は多数のプロ野球選手を輩出するなど県内屈指の実力校であることに間違いないが、中学生のイメージからすれば、ネームバリューという点ではどうしても私立の有名校には及ばない。2年半で全ての選手が入れ替わる高校野球において、一定水準の強さを保つためには、甲子園出場が最大のアピール材料となる。

 センバツ出場は逃したが、2年連続で夏の甲子園に出場することが最大の目標であることに変わりない。前述した通り遊撃手・西山は旧チームから残り、二塁手・北嶋もベンチメンバーながら甲子園を経験済み。

益田 拓磨主将(市立和歌山)

 守備からリズムを作るチームカラーは受け継がれ、半田監督の入学時の印象としては、
「西山は良くなる感じがしました。ただ細かった。北嶋は見た目は良かったですけど、やらかすなと(笑)」
という西山と北嶋だったが、そこから大きく成長し、今では信頼の厚い二遊間となった。新チームの二遊間のレベルは旧チームと比べても「遜色ない」と自信を持つ。

 抜群のキャプテンシーでチームを引っ張る一塁手の益田 拓磨主将も、
「旧チームの二遊間は僕たちから見ても、そこに飛んだら安心出来ました。今のチームも守備は安定していますし、セカンドもショートも頑張ってくれてる」
と信頼を寄せる。

「強豪相手に勝っていこうと思ったら打ち合いは出来ない。去年の(智弁和歌山との)決勝戦みたいに、失点を抑えてロースコアで終盤勝負に持ち込む。そういう意味では守備力が大事ですね」
と語る半田監督の言葉は、おそらくほぼ全ての有力公立高校に当てはまる共通認識だろう。

 負けたら終わりのトーナメントで戦う高校野球では送りバントが重要視される。
これは走者を得点圏に進めると同時に、併殺のリスクを減らす狙いがある。裏を返せば攻撃側がいかに併殺を恐れているかということだ。併殺を取れる二遊間を擁するならば、1イニングに3安打を浴びても無失点で切り抜けるということは珍しくない。負けられない戦いで負けないために、地力で勝る格上のチームを倒すために、甲子園を目指す全ての高校にとって二遊間の強化は避けては通れない課題であり、勝利への最短距離だ。

(文・小中 翔太

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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