Interview

北海道日本ハムファイターズ 上沢 直之投手【前編】「名将・持丸監督の出会いで開花したサッカー少年」

2014.12.15

 プロ入り3年目の昨シーズン、北海道日本ハムの上沢 直之投手は、開幕5試合目の先発のマウンドを託される。上沢投手にとっては一軍初登板・初先発だったが、6回を3安打1失点に抑える好投で、1軍初勝利を挙げる。その後も上沢投手は勝ち星を積み重ね、8勝をマーク。一躍、1軍のローテーション投手になった。

 11年のドラフトで北海道日本ハムに6位指名された後、専大松戸高の投手として、当サイトのインタビューに答えていただいた(2012年2月6日公開)上沢投手に再登場をお願いし、水泳とサッカーに熱中していた小学校時代から、飛躍の3年目までを振り返っていただいた。

【上沢 直之選手の2012年インタビューはこちら!】
第89回 北海道日本ハムファイターズ 上沢 直之選手

野球とは無縁の小学校時代が今のベースに

 上沢投手が本格的に野球を始めたのは中学生になってから。実質5年半のキャリアでプロ選手になった。小学校低学年で野球を始める選手が多い中、上沢投手は希有な例であると言えよう。

上沢 直之選手(北海道日本ハムファイターズ)

 小学校時代は水泳に熱中する。学校の水泳部に所属する一方で、スイミングスクールにも通っていた。「野球は遊びでもほとんどやらなかった」そうだが、「子どもの頃の水泳の経験が、投手をする上で役に立っていると感じる」という。

「水泳をやっていたことで、肩甲骨の可動域が広くなったのは確かでしょう。周りからもよく、肩周りが柔らかいと言われます」
上沢投手が投げる時、腕が長く見えるのは、これも理由の1つか。

 そして、サッカー少年でもあった。ポジションはディフェンダー。上沢投手は「そんなに強いチームでなかったですし、サッカーの経験は野球にはつながっていないような…」と言うが、走り回ることで、少なからず下半身強化ができたところはあったろう。

 小学校時代に野球とは無縁だった上沢投手にとって、大きなアドバンテージになったのは「変なクセがつかなかったことです」

実は中学入学当初、上沢投手はかつぎ投げだったという。故障につながるこのフォームは、コーチの指導ですぐに修正できたが、これも「かつぎ投げが、体に染み込んでいなかったからでしょう」

 もし小学校時代に野球をしていたら、フォームの修正は容易でなかったに違いない。上沢投手のフォームはその時に修正されて以来「ほとんど変わっていません」
ボールを投げる機会も少なかったので、肩、肘も消耗していなかった。
「高校の時だったか、肘のレントゲンを撮ってもらったら『きれいな肘をしている』と褒められまして。小学時代に投げ過ぎなかったのが良かったのでしょう」

 もっとも、苦労したところもあったそうだ。
「野球のルールがよくわからないんです。フォースプレーとタッチプレーの区別がつかなかったり(笑)。みんなは子どもの時に自然に覚えたことを、中学で学習しなければなりませんでした」

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[page_break:自らやる練習はレベルアップの伸び率が高い]

【上沢 直之選手の2012年インタビューはこちら!】
第89回 北海道日本ハムファイターズ 上沢 直之選手

自らやる練習はレベルアップの伸び率が高い

 先に“上沢投手が本格的に野球を始めたのは中学生になってから”と書いたが、上沢投手に言わせると「本当に本格的な野球人生がスタートしたのは、専大松戸高に入学してから」だという。上沢投手がいた松戸市立第一中は、上沢投手が在学中に一度、県大会に出場したものの「さほど練習は厳しくなく、普通の部活動という感じでした」

上沢 直之選手(北海道日本ハムファイターズ)

 しかし専大松戸高は、千葉の強豪校の一角。上沢投手は「はじめの頃はだいぶきつかったですね(笑)。走っても遅い方で、練習についていくのが精一杯でした」と明かす。
野球を始めてまだ3年。入学時で180センチと上背はあったものの、中学時代はさしたる実績もなく「ホント、自分は“普通の投手”だと思ってました」

 そんな上沢投手に高い潜在能力があると、一目で見抜いたのが、竜ヶ崎一高、藤代高、常総学院高を甲子園出場に導いた持丸 修一監督だ。上沢投手は持丸監督から、いきなりこう言われたという。

「お前はプロになれる」―

「持丸監督が高校野球では名の知れた監督さんであることは、実は入学してから知ったんですが、持丸監督は、(ともに東北楽天の美馬 学藤代高-中央大-東京ガス>と井坂 亮平藤代高-中央大-住友金属鹿島>といった)好投手を育てた実績もあると聞きまして。その持丸監督がそう言うのだから、信じてやってみようと」

 上沢投手は1年秋にベンチ入りを果たすと、2年春にエースの座をつかむ。ところが、大会期間中に肩を痛めてしまう。上沢投手は持丸監督から「大事な試合で投げられないような投手はエースじゃない」と一喝されたという。

「そこからですね。“自分でやらないと”という気持ちになったのは。練習もやらされる練習から、自らやる練習に変わり、自分のケアもしっかりするようになったんです」
プロでは当然ながら、自らやらなければならない。自らやらなければ淘汰される世界だ。

 上沢投手は「自分でやるスタイルが高校2年春の段階で身に付いたのは、プロになった今、大きかったと思っています」と言う。そしてこう言葉を重ねた。
「レベルアップの伸び率も、自らやる練習の方が断然高いような気がします」。
上沢投手は高校時代、甲子園出場こそ成らなかったが、2年はベスト4に。3年春は、2年の冬にかなり追い込んだ練習をした成果か、県準優勝を飾っている。

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[page_break:帝京高戦の好投でプロでもやれる手応えをつかむ]

【上沢 直之選手の2012年インタビューはこちら!】
第89回 北海道日本ハムファイターズ 上沢 直之選手

帝京高戦の好投でプロでもやれる手応えをつかむ

上沢 直之選手(北海道日本ハムファイターズ)

 上沢投手にとって、この高校2年春の出来事が1つ目のターニングポイントだとしたら、2つ目は3年春に訪れた。オープン戦が解禁されたばかりの3月のある日、上沢投手は帝京高とのオープン戦で、8回まで無失点の投球をする。

「当時の帝京高には、今は同僚ですが、同級生でプロ注目の松本 剛(北海道日本ハム)らがいました。毎年そうですが、この時のチームも実力派揃いで、夏は甲子園に出場しています。その帝京高相手にしっかり投げられた。この時ですね。プロになれると手応えを感じたのは。僕を見に来られるスカウトの数が増えたのも、そこからのような気がします」

 この試合、特に良かったのが真っ直ぐだったという。
「僕の場合、いい時は力みがなく、リリースだけに上手く力が集約でき、力を入れていないのに伸びるんですが、まさにそういう感じでした」

 上沢投手は最速147キロの真っ直ぐとともに、スライダーも得意球にする。スライダーを覚えたのは高校時代だという。

「はじめは自分なりのスライダーを投げていたんです。一般的な右打者の外に曲がるスライダーですね。それでけっこう三振も取れていたのですが、持丸監督からそのままではダメだと言われ、タテスラを覚えたんです。内側にひねるのではなく、外側にひねるように投げる。するとジャイロ回転になってタテに曲がるのです」

 現在もタテ・ヨコ2種類のスライダーを操る上沢投手だが、ヨコのスライダーはプロに入ってから改良し、「今は横にクッと鋭く曲がる感じでしょうか。打者が詰まりやすいボールです」

 ところで上沢投手は高校時代、エースとはどんな投手だと認識していたのだろうか?

「自分の出来次第でチームの勝敗が決まる。それがエースだと思ってました。チームの命運を握っているのがエースだと」

 前編では、高校時代を振り返った。その後、上沢投手はドラフト6位で北海道日本ハムファイターズに入団するが、2年目まではプロの壁にぶち当たることとなる。そして昨年、ブレークした要因については後編で語っていただきます!

(インタビュー・上原 伸一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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