Column

前橋育英高等学校(群馬)【前編】

2014.12.25

 2013年夏の甲子園覇者前橋育英
当時、2年生エースだった高橋 光成(埼玉西武ライオンズ・ドラフト1位指名)(独占インタビュー・2014年8月29日公開 8月30日公開を擁して、夏の群馬大会を勝ち上がり、見事、甲子園初出場を決めると、勢いそのままに、全国優勝を成し遂げた。
また、当時のキャプテン荒井 海斗は、荒井 直樹監督の息子ということもあって、“親子鷹”としても、一躍、注目を集めた。

 今夏は群馬大会3回戦で、健大高崎に敗退するも、秋の群馬県大会では準優勝。彼らの強さは健在だった。それでも、この夏に引退した3年生も、また、現在の1、2年生の選手たちも、ずっと追い求めているチームがある。

それはあの夏、日本一に上り詰めたキャプテン荒井 海斗が率いていたチームだ。そして、その当時の練習での雰囲気は、今も受け継がれている。

選手間での会話の多さは日本一

練習中に選手間で会話

 前橋育英の練習では、ワンプレーの中で、気になる動きがあれば、すぐに練習を止めて選手間だけで話をするが、当時の荒井 海斗たちの代は、グラウンドの中でも、お昼の時間でも、部室でも、とにかく選手同士の会話が多いチームだったという。

 現キャプテン飯塚 稜ニ郎は、こう話す。
「監督さんやコーチ陣から、『優勝した時の代は、プレーに対しての会話をもっとしていたぞ』と教えていただくことが多いです。
例えば、普段の練習の中でも、ミスは誰にでもあるものですが、そこに対して次はどうするのかということを、プレーしている人だけでなくて、見ている周りの人のほうが気付けるので、周りがそれを声に出して伝えていく。

 内野と外野、また投手陣との連携も含めて、実際の試合ではコミュニケーションがすごく大事になってくるので、こういった会話は必要だと感じています。入学してすぐの頃は、『一日の練習の中で会話をすることが多いな』と思いましたが、いまはもうこれが当たり前に感じています」

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チーム内 コミュニケーション術
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会話を重ねる中でチームのセオリーが生まれる

練習中、仲間の好プレーには笑顔で称える

 実際に、この日の練習でも、グラウンドでは、こんな言葉が飛び交っていた。
「生きた声をもっと出そうぜ」

「もっと会話しよう」

 そんな後輩たちの練習をみながら、この夏に引退した前キャプテンの工藤陽平は、こんなことを教えてくれた。
「僕たちが表現している“会話”というのは、難しいことじゃないんです。野球の場面で自然に起こりそうなことを、事前に気付いた選手が声で伝えてあげたりするだけ。例えば、ノーアウト一塁の場面では、ピッチャーに『バントあるぞ』とか、その場面で自然と起こりそうなプレーを周りに声を掛けたり。

 他にも、2アウト二塁の場面であれば、外野がエラーした時に4つで刺せないので、打ったランナーを刺せ!とか、そういうミスしたあとの声掛けだったり、試合の中で起こりそうなことを練習中から、みんながお互いに声掛けをする。その雰囲気は、常に練習の中にあります」

 また、練習でお互いに会話をしていくことで、『自分たちのセオリーを生み出すこともできる』と、荒井 直樹監督は語る。
「試合でも練習でも、何か問題があったときに流さずに、そこで会話をして、『こうやってやったほうがいいよな』とか話す中で、最終的に選手たちでチームのセオリーを作っていったほうが良いと思うんです。選手で話し合った結果、『じゃあ、うちはこういうふうにやろう』と見つけていくことが僕は本当の練習だと思っています」

 例えばシートノックの練習の時に、カットに入る選手が、本来の野球でのセオリーであれば『このポジションの選手がカットに入るもの』だとされていても、前橋育英の場合は、この選手のほうが肩が強いから、この距離ならここのポジションの選手が一人でいったほうがいい。この選手だとここだと届かないけど、でもこの選手なら届くんじゃないか。そんな会話を重ねる中で、その年ごとのチームのセオリーが出来上がっていく。

 そういったセオリーを作るために、毎日練習をする中で、仲間のコンディションをみたり、仲間の肩の強さをみるということが大事になってくるのだと、荒井監督は話す。

「選手によって、投げる時にシュートする子もいれば、いろんな球種の子がいるわけじゃないですか。だから、日頃の練習からそういう意識をちょっとしておくだけで、実際の試合においての準備が出来るわけですよね。
そのためにも、普段の練習の中で、コミュニケーションを取る。つまり、会話をしていく。そういうふうにやるといいんじゃないかなと思いますね。

 ただ、それはどこのチームでも同じで、小学生でもプロ野球のチームでも一緒。コミュニケーションを取りたいっていうのは、コミュニケーションを取ることを意識するんじゃなくて、何か気付いた時に会話をすることだと思うんです」

後編に続く)

前橋育英高等学校(群馬)【後編】はこちらから!

(文・安田 未由

前橋育英が日本一に輝いた2013夏の主将・荒井海斗が3年間書いた野球ノートとは?
『野球ノートに書いた甲子園2』に掲載中!

チーム内 コミュニケーション術

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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