Interview

北海道日本ハムファイターズ 増井 浩俊投手【前編】

2014.11.11

 プロ入り2年目の11年にリリーフに転向。以後、毎シーズン50試合以上に登板し、最速155㎞のストレートを最大の武器に、中継ぎエースとして活躍している北海道日本ハムの増井 浩俊投手。12年には最優秀中継ぎ投手を受賞する働きで、リーグ優勝に貢献した。

 181㎝73㎏の細身の体ながら、連投もいとわずにマウンドに立ち続ける増井投手に、前編では、『ケガ予防』をテーマにお話しをお伺いしました。

筋力トレーニングはケガの予防にもつながる

北海道日本ハムファイターズ 増井 浩俊投手

――セットアッパーという役割上、連投は避けられないと思います。そうした中、ケガ予防で気をつけているのはどんなことですか?

増井 浩俊投手(以下増井) 僕はプロ1年目に肩を痛めまして。原因は筋力不足だったので、ケガをしてからは筋力トレーニングをしっかりやっています。以後はケガをしていないので、筋力をつけることは、ケガ予防においても重要だと思っています。

 リリーフに転向したのは入団2年目ですが、お察しの通り、リリーフはどうしても連投があります。ですから、毎日のケアも欠かせません。僕はプロに入るまでリリーフの経験がなく、毎日ケアすることもなかったので、リリーフの先輩方からケアの方法を学びました。
今はトレーナーさんの手を借りてマッサージをしたり、電機や超音波の機器が揃っているので、それを使ってケアをしています。

――ケガ予防の筋力トレーニングには、たとえばどんなメニューがあるのですか?

増井 僕はふだん肩周りを重点的に鍛えているんですが、今一番いいと思っているのが『懸垂』です。自分の体重を腕だけで上げるというシンプルなものですが、『懸垂』をすると自ずと肩甲骨がよく動きますからね。肩甲骨の可動域を狭めずに筋力をつけることができて、投手には最適かと。それと自分の体重を使うので、重りでやるよりも無理なく筋力がつけられると思います。

――陸上競技の投てきの選手から、鉄棒でトレーニングをしているという話を聞いたことがあります。自重をコントロールすることで、体全体のバランスも養われるようですが。

増井 そうですね。そういうメリットもあると思います。僕はアマチュア時代、コントロールが悪く、それで苦しんでいたので、制球力を高めるためにも、バランスは強く意識しています。

ベストパフォーマンスを発揮するためのけが予防

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[page_break:登板後のケア]

登板後のケア

北海道日本ハムファイターズ 増井 浩俊投手

――登板直後はどのようにケアをされているのですか?

増井 すぐにアイシングをします。そして宿舎に戻ったらストレッチをして、超音波をあてるというのが僕のスタイルです。

――ゆっくりお風呂の湯船にも浸かりますでしょうか?

増井 時間がある時はそうしていますが、ナイトゲームが終わって帰ると、どうしても遅くなります。どちらかというと、シャワーで済ますことが多いですね。僕は睡眠を重視しているので、入浴に時間をかけるより、少しでも多く眠りたいというのもありまして。だいたい7時間か8時間はぐっすりと、質のいい睡眠をとるようにしています。

――登板日当日は?

増井 チーム全体でのウォーミングアップが始まるまでは何もしないですね。マウンドに上がるまで、体を疲労させないようにしてます。ただ、疲れている時とか張りを感じる時は超音波をかけて、中の筋肉を温めてからグラウンド入りしてます。

――試合の時はどういうタイミングで投球練習を開始するのですか?

増井 基本的に登板する回の2イニング前です。試合展開を見ながら、投手コーチの指示も仰ぎつつですね。

――試合展開によっては急な登板、「すぐに肩を作れ」ということもあると思います。

増井 ええ。でも状況に対応するしかないですからね。急いでパンパンと投げて作ります。僕はたぶん、他の投手より肩ができるのが早い方なので、10球くらい投げればすぐにいける感じになります。

――先発をされていた時は、じっくり肩を作ってからマウンドに上がっていたかと思いますが、セットアッパーに転向してから、早く肩が仕上がるようになったのでしょうか?

増井 僕はもともとリリーフの適性があったような気がします。子どもの頃からゆっくり肩を温めるということがなく、いきなり強く投げる習慣が体に染み込んでいて、平気でしたから。海の近くで育ったので、子どもの時はよく、石ころを海に向かって投げて遊んでましたが、それでいきなり投げても大丈夫な肩ができたのかもしれません。

――入団1年目に肩を故障された時は、どのようなプロセスを経て復帰されたのですか?

増井 故障をしてしばらくは投げられませんでした。ハリ治療をするなど、治療に専念してました。そして痛みがなくなってから、野球のボールより軽い(硬式の)テニスボールで少しずつ肩を馴らし、それから野球のボールを投げ始めました。完全復帰には半年ほどかかったでしょうか。そこまで長い期間投げられないというのは、僕にとって初めての経験でしたね。

ベストパフォーマンスを発揮するためのけが予防

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[page_break:社会人から始めたウエイト トレーニングで球速が飛躍的にアップ]

社会人から始めたウエイト トレーニングで球速が飛躍的にアップ

北海道日本ハムファイターズ 増井 浩俊投手

――パフォーマンスを高めるために体を大きくする選手もいますが、お見受けしたところ、増井投手はそのタイプではないようですが?

増井 僕は体が大きくなれば、その分レベルが上がるとは考えていません。この細い身体でも自分なりに十分なパフォーマンスができているので、体型をキープしながら、少しずつ筋力を高められればと。ですから体を大きくするための、負荷が大きい筋力トレーニングはしてません。

――駒澤大時代とさほど体つきは変わっていない印象です。ただそれでいて、大学時代よりかなり球速がアップしましたね。

増井 そのあたりはアマチュア野球の選手に見てもらいたいところです。僕はプロ野球選手の中ではかなり細身の部類に入りますし、体格に恵まれている方ではありませんが、それでもできると。

――現在のストレートの最速は?

増井 おそらく155キロだと思います。高校時代は141、駒大では143、東芝では150キロです。

――すると東芝時代に一気に球速がアップしたのですね。これは何か理由があるのですか?

増井 僕は大学時代まで、ウエイトトレーニングが大嫌いで、全くやらなかったんです。ところが、東芝では全体練習のメニューにウエイトが組み込まれてまして。やらなければならなかったのです(笑)

 渋々取り組んだところ、自然とボールが速くなりました。やはりウエイトは大事だと気が付きました。もっと早く気が付けば良かったのですが、遅過ぎましたね。
もっと早くからやっていたら、大卒でプロの世界に入れたかもしれません。でも東芝ではいろいろ貴重な経験をさせてもらいましたし、歩んできた道に悔いはないです。

――社会人になるまで使っていなかった筋肉が、ウエイトトレーニングによって覚醒したのかもしれませんね。具体的にはどの部分を強化したのですか?

増井 もう全身ですね。今日は下半身の日で、明日は上半身と、日によって特化するところは違ったのですが、全身くまなく鍛えました。僕は投手なので、野手よりは負荷がかからないメニューで、それで身体は大きくはならなかったのですが、強くなったのは確かだと思います。

――東芝時代は走り込みもかなりされましたか?

増井  東芝のランニングメニューはきつくて有名なので(笑)。相当走ったので、それが球速アップにつながったところもあるでしょう。僕はもともと走るのは好きで、駒大時代のハードなランメニューも苦にならなかったですし、走り込みはずっとやってきました。ですが、やはり東芝で初めてやった上半身の筋力トレーニングが、スピードアップの要因かと考えています。

増井投手、ありがとうございました。後編では、打者が分かっていても打てないという増井投手の“ストレート”や、静岡高校時代の思い出など、たっぷりと語っていただきます!

(インタビュアー・上原 伸一

ベストパフォーマンスを発揮するためのけが予防

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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