Column

2014.10.21 安樂智大、プロへの決意!

2014.10.23

目前に迫った「運命の日」

 
後編では現在行っているトレーニングの具体的内容、そして改めて語った「プロへの決意」を追っていく。

引退後に加えた「上半身トレーニング」

2か月前と比べ明らかに胸筋が盛り上がった安樂 智大投手(済美)

――練習はほとんど休みなくしているのですか?

安樂 グラウンドに来ていないときはジムに行ったりしています。割合としてはジムに3日通い、3日間は済美球技場を使わせて頂いて、残りの1日は坂道や砂浜を走るようにしています。坂道や砂浜は「足が遅くなる」と思っていたので、今までしていなかったのですが。脚を強くするには坂道を使ったトレーニングをするのが一番だと思っているので。1時間半くらいやっていますね。

――今は野球に集中できている表情のように見えます。

安樂 今までは自分の状況を見るよりも「勝ちたい」想いがありましたし、練習をしなければいけない、もっともっと練習をしなければいけない、と思って質より量を追い求めていた高校野球でした。

 今は改めて自分に足りないところ、自分の体の弱い部分を見つめなおしています。

――具体的に考える「弱いところ」とは?

安樂 上半身、体幹もですね。下半身トレーニングはずっとやってきていたんですが、今まで以上にいろいろなトレーニング方法も入れてきているので、自分がどこを鍛え上げていくのかについてはしっかりできています。

――上半身の中で特に鍛えている部位はあったりしますか?

安樂 上半身は全体的にですね。「上半身に筋肉を付けると腕が振れなくなる」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、今活躍されているいい投手は、上半身も鍛えられているので、自分にとっても必要かなと思って鍛えだしたんです。

鍛え出して1か月半ほど経過しましたが、腕の振りやすさといった成果も出ていますし、方向性は間違っていないと思っています。

――ということは、今はブルペン投球もしているのですか?

安樂 立ち投げをしています。キャッチボールはずっと継続して進めていますが、立ち投げは9月に入ってからですね。

――右ひじの状態も問題ないですか?

安樂 全く問題ないです。投げていても全く違和感もありません。肘を怪我してから下半身を鍛え、チューブを使った肘のリハビリトレーニングも続けてきたことで、軽く投げてもボールが行くようになりました。

――今と比べると夏の愛媛大会はどういう状態でしたか?

安樂 肘の痛みはありませんでしたが、腕が振り切れていない。試合を重ねるごとに腕が振れている感覚が戻ってきた夏でした。大会後に監督さんやコーチの方とも話をしたんですが、「痛めたところをけがしたらダメだ」と思って、投げることを我慢していたことが正解だったのかどうかは考えましたね。

 投げることを我慢したことで、投げ込み不足になって、フォームのバランスが合わず、腕が振り切れない自分がいたので。今振り返ってみると「もう少し早く投げ始めればよかったのかな」と思ってみたりもします。

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[page_break:プロ野球から学んだ「次に鍛える場所」]

プロ野球から学んだ「次に鍛える場所」

「恩返し★」と入ったグラブをはめてキャッチボールを行う安樂 智大投手(済美)

――先ほど「プロ野球を見るようになった」という話がありましたが、具体的にはどんな部分を注意して観るようになりましたか?

安樂 投手について「自分と何が違うのか」すべての部分で観るようになりました。たとえばスピード自体が140キロ前半から後半のストレートであっても、打たれない投手がいるのに、自分の150キロはとらえられる。その原因を追究していくと、ボールの質やコントロールなどに目が行きます。

 特に自分と同じ体型の選手はよく観るようにうなりました。もちろんレベルは自分とは全く違いますが、菅野 智之さん(巨人)(インタビュー)だったり、身体をもう一度作り直した大谷さんの剛球はとても参考になります。

――その中で自分に採り入れたいと思っていることはありますか?

安樂 大谷さんの例で言えば、「セットポジションから投げている理由はなぜなんだろう?」という点に気付いて、インターネットなどでいろいろと調べてみたんです。そこで、自分も試してみようと思って、今立ち投げではフォームのバランスを考えてセットポジションから投げています。

――菅野智之投手からは、どのような部分を参考に採り入れているのですか?

安樂 そうですね。菅野さんも2年目を迎えた今年「もう1回ストレートを追究したい」という考えで、アリゾナで3週間上半身のトレーニングをされたというニュースを見て、自分の上半身トレーニングが間違っていなかったことを再認識できました。

 それと最近、大谷さんと工藤公康さんとの対談もTVで観たんですが、そこで大谷さんも「上半身を鍛えたことでスピードアップした」ということもおっしゃられていたので、自分の追い求めている場所は間違いないかな、とは思っています。

現役時代は上半身まで鍛えられず、監督さんからも「最後に上半身を鍛えておけばよかったな」とも言われて。そこで自分も「ああ、鍛えとけばよかった」と思ったので、手を付け始めています。

――それに伴い、変化球のレベルを上げ、新たな変化球を学ぶことも重要になってきますね。

安樂 コーチの方とも話をしましたが、今は自分の中で勝負できる変化球はスライダーだけしかない。正直、もう1つくらい変化球がないと厳しいとは思っています。1つ上の世界に行く前にもう1個変化球を練習したいと思います。

ただ現在は冬前なので立ち投げではストレートを30球~40球しか投げていませんが、徐々に変化球も投げていこうと思っています。

――自分の中では2年夏ごろの自分に戻したいイメージですか?

安樂 いや、それは全くないです。怪我をして得たこともたくさんありますし。怪我をしたことによるマイナスはありますが、それをこれからプラスに変えていけばいいだけなので。

 怪我をして苦しい思いをした選手は、高校生の中ではそういないと思いますし、怪我をしたからこそ、次に同じ状態になったら登板を止めるべきなんだということも知りました。怪我をしたことで上半身が鍛えられなかった分、徹底して走りこむことができたし、ウエイトトレーニングもできたので。「戻りたい」というマイナスな考えは自分の中ではないです。

 もちろん、けがをした当時は「あの時投げなければよかった」と思うこともありましたが、今は問題なくやれていますから、あとはプラスに変えればいいと思っています。

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森さんと松井さんから学んだ「プロの厳しさ」

ユニフォーム姿での撮影で笑顔を見せる安樂 智大投手(済美)

――プロ野球選手の中で、理想としている選手はいますか?

安樂 理想としている選手はいませんが、昨年の田中将大さん(インタビュー)は(東北楽天でレギュラーシーズン24勝0敗)理想だと思います。投手は「負けない」ことが一番だと思うので。

 160キロ、大袈裟に言えば170キロを出してもホームランを打たれれば意味はないですし、140キロでも空振りを取って完封できれば、その方がいいと思います。「勝てる投手」を理想とする中、昨年の田中さんには自分の中で刺激を受けました。

――昨年の18U世界選手権でバッテリーを組んだ森 友哉選手(インタビュー)は埼玉西武でレギュラーを獲得しましたが、対戦してみたい?

安樂 森さんとは高校時代もバッテリーを組んだことはあっても、対戦したことはなかったので。昨年から森さんとは一度は対戦してみたい想い、挑戦してみたい気持ちは持っています。

――先ほど、MLBへの夢も語ってくれましたが、その夢を持ち始めたのはいつくらいからですか?

安樂 小学校1年くらいのときから「ドラフト1位になって、そこからMLBに行きたい」という目標は持っていましたけど。今はMLBへの気持ちは、さほどではないです。まずプロになって挑戦していきたい気持ちが強いです。

――今年の東北楽天対埼玉西武戦では「松井 祐樹vs森 友哉」といった対決もありました。昨年18U日本代表で共に戦ったメンバーが、プロの舞台で活躍していることは、いい励みであり目標にもなると思いますが?

安樂 改めて思ったのは「プロの世界は甘くない」ということですね。森さんのようにあれだけ一軍に出て、ホームランを打てる選手と一緒にできたことに幸せを感じた一方で、松井さんのように凄いと言われて、自分でも「こんなにスライダーを曲げられる投手をはじめて見た」と感じるスライダーが、プロでは見極められる。「自分が思っている以上に、プロという舞台は厳しいんだ」ということはお2人を通じて改めて実感できました。

 ですから、浮かれた気分でプロに行っても絶対に通用しないと思いますし、気を引き締めて「通用しないんだ」と思って、プロには行くつもりですし、気持ちを鬼にして練習していきたいと思います。

――最後にドラフト後、2月1日までの中でどのような練習をしていきたいと思っていますか?

安樂 これまでの考え方は変えずに、冬に向かうにつれて走る量を増やして、ウエイトトレーニングの重量も上げていきたいと思っています。
 もし、プロに選んで頂ければ1月中旬から新人合同自主トレーニングもあると思うので、その時に納得いくボールが投げられるよう、ここでしっかり作っていって参加できたらと思います。


取材対応直後、安樂はキャッチボールと立ち投げも披露。簡易スピードガンアプリで「144」・「145」・「146」と刻まれたボールは、唸りをあげて大西 勇気(2年)のキャッチャーミットに吸い込まれていった。「人事を尽くして天命を待つ」。その言葉に偽りはない。

 はたしてサッカー日本代表のアナウンサーとも知られる関野 浩之氏によって、「あんらく・ともひろ・投手・済美高校」の声は何度響くのか?そして交渉権を獲得する球団は?安樂 智大は、飛翔の時を迎えた愛媛県松山市で、その瞬間を待ち受ける。

(文・寺下 友徳)

【連載コラム 安樂智大(済美)】

第7回 2014.10.21 ドラフトを前に何を想うのか?


第6回 2014.08.07 突然、終わりを告げた「SAIBI」のユニフォーム姿


第5回 2014.07.08 盟友から力を得て、晴れ舞台での公式戦初対戦へ


第4回 2014.03.12 夏を見据えた充実の「冬トレーニング」


第3回 2014.1.4 安樂智大(2年)2014年始動!


第2回 2013.11.14 秋を終えて気付いたこと


第1回 2013.8.14 夏の聖地でみせた155キロ

プロ野球ドラフト会議2014特設サイト

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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