Column

風の強い日に気をつけること

2014.10.15

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。

 各地の秋季大会もほぼ終わり、秋に行われる明治神宮大会、そして来春のセンバツを賭けた戦いはブロック大会へと進みます。勝ち進んでいる学校の皆さんは一つでも多く勝って次につなげられるよう、全力でがんばってもらいたいと思います。

 さて今回は強風時に想定されるさまざまなトラブルについて、どのようなケースが考えられるのか、風の強い日にはどのようなことに注意すればトラブルを予防できるのか、といったことについてお話をしたいと思います。

風によって体感温度が下がる

風の強い日に注意するべきこと

 グランドではポールに立てられた旗などによって、風の向きや強さなどを確認することも多いでしょう。風が強い環境では「体温が奪われやすく、実際の気温よりも肌寒く感じる」ということは、皆さんも普段の経験から理解していると思います。

 外気温とは別に自分の体が感じる温度を体感温度といいますが、一般的には「風が1m吹くと体感温度は1℃下がる」と言われています。
たとえば外気温が20℃と過ごしやすい気候であっても、10mの強風が吹いているところでは、体感温度は10℃ほどにまで下がってしまいます。

 半袖のアンダーシャツでも大丈夫と思っていても、実際には肌寒くて体調を崩してしまった、ということもあるでしょう。また野球のプレーをしているときは、少なからず汗をかいていると思います。こうした汗が風によって冷やされるとさらに体温を下げることになるので注意が必要です。

運動後に汗をかいたユニフォームやアンダーシャツをすぐに着替えるように言われるのは、急激な体温の低下を防ぐ目的があります。帽子は保温効果もありますので、しっかりとかぶるようにしましょう。

声や音が聞こえにくい

 風の方向にもよりますが、強風下でのプレーでは選手間で行う指示の声や打球音などが聞こえにくいことがあります。特にフライを捕る際、接触プレーを避けようと野手同士で声を掛け合いますが、お互いの声が届かずぶつかってしまうといったことも考えられます。

 こうした接触事故を防ぐためには、いつもよりも声が通りにくいことを理解し、声と同時に目でも相手のプレーを確認することが大切になってきます。ジェスチャーでの合図なども有効ですが、より大きな動作で相手に知らせるようにする必要があるでしょう。

集中力や注意力が散漫になりやすい

風の強い日は、プレー中も気をつけることが!

 強風になると知らず知らずのうちに緊張感が高まり、筋肉が硬くなって動きがぎこちなくなったり、集中力や注意力が散漫になりやすいことが考えられます。

 守っている時は打球方向の目測であったり、野手同士の連携であったりといったこと、打席ではボールがどれほど風の影響を受けるのか、しっかりと相手投手を見て対応できるかといったことを考えていると思いますが、強風下でのプレーは想定外のことも起こりやすいため、常に神経を使っている状態が続きます。
この時間が長期にわたって続くと神経を使うあまりに疲弊してしまい、いざというときの集中力や注意力がそがれてしまうといったことになります。

 こうしたことを防ぐためには、攻守交代を上手に利用し、ベンチで一度肩をほぐしたり、体を動かしたりして、プレーへの準備を再度行うことや、練習中であればこまめに短い休憩をとって気持ちをリセットすることなども一つの方法です。

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[page_break:モノが飛ばされるというトラブル / 急に吹く冷たい風に注意]

モノが飛ばされるという物理的なトラブル

 風が強いとモノが飛ばされるという物理的なトラブルも考えておく必要があるでしょう。一番気をつけなければいけないのは、コンタクトレンズで視力矯正を行っている選手です。

 風が舞い上がると砂埃が目に入り、涙が止まらない、目が開きにくいといったことが考えられますが、コンタクトレンズをつけている選手はこうした風の影響を大きく受けることになります。使い捨てのものやソフトタイプのレンズであれば多少のトラブルには耐えられそうですが、ハードタイプのレンズではかなり痛い思いをすることになります。

 またコンタクトレンズそのものが風で飛んでしまうケースもあるでしょう。風が強い中で落としたコンタクトレンズを探すのは至難の業。風が強いとあらかじめわかっている場合にはレンズの種類なども考慮しておくほうがよいでしょう。

 また環境面においては、バッティング練習で使うケージなどもしっかりと固定をしておかないと大きな事故につながります。風が強く十分な固定力が得られない場合には、練習内容を変更するなど安全性に十分配慮するようにしましょう。

急に吹く冷たい風に注意

 今までさほど風が吹いていなかったのに、急に冷たい風が吹いてきたときは、積乱雲が近くにある兆しかもしれません。急に空が厚い雲で覆われたり、暗くなってきたときは万が一の落雷にも備えるようにしましょう。夕方以降は特に雷雲が発生しやすいので注意しましょう(参考コラム:夏の落雷事故を防ごう)。

 風はいつも同じように同じ方向から吹きつけるのではなく、「呼吸」のように強くなったり弱くなったりしますし、方向もその都度変わるものだと思っておきましょう。グランドでの練習などではいつも風をチェックするポイントを決めておき(ポールの旗や大きな木など)、その様子を見ながら、選手はプレーに対する準備、そして環境の準備などを怠らないようにしましょう。

 

【風の強い日に気をつけること】

●体感温度は風が1m吹くと1℃下がる。思わぬ低体温に注意する
●グランド内での連携プレーの声、打球音などが聞こえにくい
●強風下では緊張感が増し、集中力・注意力が散漫になりやすい
●コンタクトレンズは特に風の影響を受けやすいのであらかじめ対策をとる
●バッティングケージの固定力が十分でない場合は練習内容を変更し、使用しない
●午後から夕方にかけて急に冷たい風が吹き出したら、万が一の落雷に備える

(文=西村 典子

次回コラム公開は10月30日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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