【侍ジャパン18U代表】明徳義塾高等学校 岸 潤一郎選手
チームを甲子園に4回も導いた立役者・岸潤一郎(明徳義塾)。そのプレースタイルは何事も全力プレーだ。ただし岸の全力プレーは、何も考えない全力プレーでなく、よく考えられた全力プレーである。その”全力プレー”の理由に迫る。
常に全力プレーを心掛ける岸 潤一郎。その理由とは?
岸 潤一郎(明徳義塾)
「今日は全力投球。それだけです!」
と振り返る岸 潤一郎(明徳義塾)。計4回も甲子園出場を果たした右腕から感じたことは利発さだが、話しぶりを聞くと、冷静さよりも情熱を感じた。
投手としては最速146キロの速球に、キレのあるカットボール、ツーシームを投げ分け、打者としては大阪桐蔭戦で本塁打を記録したように、打者としての才能も優れる。高橋監督は岸を二刀流で使うことを決断した。
「彼の投打の能力の高さについては私が一番分かっています。今回のメンバーを見ると足を重視したので、左打者が多く、バランスを欠いてしまう。左投手を想定すると、右打者が欲しい。それを踏まえて、岸には打撃にも取り組んでほしいと話しました」
高橋監督が期待するのは岸のユーティリティ性だ。高橋監督は取材上で、岸を「今大会のキーマン」と何度も語っており、期待する様子がうかがえた。
だがそれまで木製バットを握ったこともない岸。合宿2日前に木製の練習に取り組んだという。とにかく必死にバットを振った。そこで感じたのは、とにかく強く振ることだ。
「当てる打撃をするとバットが折れやすいと聞いて、だから常に強く振ることを心掛けています」
その結果、関西大学戦でも安打を放ち、大会に入っても、フィリピン戦、スリランカ戦と続けて安打を放ち、打者としても結果を残していた。だがまだ登板はない。
高橋監督は
「なかなか準備がしづらく、気持ちが入りにくいと思うけど、辛抱してくれ」と岸に話した。
そしてついに投手・岸の登板が訪れた。11対0で大量リードを決めた6回裏に登板。岸は立ち上がりから全力投球。常時130キロ後半(最速141キロ)の速球、120キロ台のキレのあるスライダーがコントロール良く決まり、三者連続空振り三振。まさに快刀乱麻の投球ともいって良い投球であった。
今大会、日本代表の投手は調整感覚で、投げることが多く、球速も控えめ。だが今日の岸の投球は力感があり、最も素晴らしいストレートを投げ込んでいた。
奪三振ラッシュは続き、五者連続三振を奪い、最後の打者を内野フライに打ち取り、ゲームを締めた。
それにしても、クレバーな投球をする岸からすると、力がこもった投球であった。だが岸はそれが自分のスタイルだという。
「軽く投げて、ボールが行く投手はいますけど、自分はそうではないんです。やはり全力で投げて、腕を振った方が自分の投球が出来るんです」
それは今日の岸の投球を見て感じ取れた。投球だけではない、打撃も小さくまとまらず、強く振ることを心掛けている。何事も全力プレー。それが岸のプレースタイルといえるだろう。クレバーにも見えるが、どんな相手にも全力プレーを心掛けた結果が、甲子園へ4回も導く活躍を見せたともいえる。
次の台湾、韓国戦ではどんな投球を見せていきたいか聞いてみた。
「やはりインコースをつけるかどうかだと思いますね。インコースに穴があるように感じたので、甘くならず、全力で腕を振って抑えにいきたいと思います」
インコースの重要性。実際に岸の投球を見て、考えを聞くと、リリーフは岸の力、スタイルを発揮するには絶好のポジションともいえる。
決勝リーグはどの場面で登場するのか、リリーフか、それとも試合を締めるクローザーか。次も全力投球で、台湾、韓国をねじ伏せる投球を見せてもらいたい。
(文・河嶋宗一)
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