日本航空高校
[pc]
[/pc]
逃した夏を取り返すために
斉藤祐也 選手
そんなチームを率いるのは、5年間、同校でコーチを務めたのち、昨年から監督に就任した坂本 孝憲監督。
「練習をやり切れば、結果もついてくると思っています。この山梨で、常勝軍団を作っていきたい」
と熱く語る、若き指揮官だ。
夏準優勝、秋ベスト4と、県内では着実に結果を残し続けている。
若い坂本監督が全幅の信頼を置き、岐路に立った時に適格なアドバイスをくれるのが、渡辺 文人総監督と顧問の鈴木 秀俊氏だ。
渡辺総監督は、山梨市川高校の監督として、5度の甲子園に導いた。今は、チームの投手育成に力を注いでいる。
また、顧問の鈴木氏も、過去に山梨学院大付の監督として、4度の甲子園出場を果たした。さらに、リトルリーグの監督時には、世界一に2度輝いた名将でもある。
それほど豊富な指導経験を持つ両氏が2年前の秋から日本航空野球部顧問に着任。坂本監督をバックアップした効果もあり、チームは着実に大きな成長曲線を描いてきた。
練習に詰め込まれる様々な工夫
現在、3学年あわせると部員は、120人に及ぶ。
これだけの大所帯になると、選手同士がライバルとして競い合って、それぞれの技術、能力を目指す。また、指導者は、日々の練習メニューにも、選手たちが効率よく技術をレベルアップできるように、いろんな工夫と発想を練習に取り入れている。
日本航空では、基本的にフリーバッティングも、ウエイトトレーニングも行わない。その代わりに、身近になる意外なモノを練習に取り入れている。
例えば、イス。
バットを持ち、イスに乗って、ジャンプをする。
高くジャンプしたところで、トスバッティングに似た軌道で飛んできたボールを打つ。坂本監督は、この練習の効用をこう説明してくれた。
「この練習は、身体の無駄な動きをなくし、バランスを高める練習にもなります。また、いかに最短でバットを出せるようになるという練習にもなります。守備の練習でもこれが応用できて、同じようにグラブとボールを持って、イスの上に立ち、そこでジャンプをしながら、ボールを投げる。これも、身体の無駄な動きをなくして、守備における身体の使い方のバランスを高めることができるんです」
これは、アイディア練習のほんの一部だ。
足指にパッドをはめ練習する
また、バランス力をさらに高めるために、今年から『大山式ボディメイクパッド』を取り入れた。
これは、大阪大学名誉教授の大山 良徳氏が監修したトレーニング器具で、足の指にはめて練習をすることで、重心が安定し、姿勢が補正されるもの。この大山式を取り入れた理由を鈴木顧問はこう語る。
「実際に自分が使ってみたら、血液の循環が良くなったことで、足がつらなくなったんです。高校生の場合は、試合前に、運動靴からスパイクに履き替えて動いても、使う筋肉が違うので足がつりやすい状態にあります。このボディメイクパッドをつけておけば、ケガの防止になると考えたんです。
また、練習中でも、これを装着していると、立つ姿勢が良くなって、バランスが良くなるんです。常に腹筋も使われている状態になっているので、短時間で効率的にトレーニングが出来るというところも気に入りました」
実は、この大山式ボディメイクパッド、日本航空高校内では、多くの運動部で愛用されている。
実際に着用している各プレーヤーたちも、「身体のバランスが良くなったことで、プレーも変わりました」と口を揃える。
[page_break6年ぶりとなる山梨の夏の頂きへ]
6年ぶりとなる山梨の夏の頂きへ
素振りをする選手
最後に、その坂本監督は、夏への思いをこう話してくれた。
「目指しているのは10対0で勝つ野球。投打で相手を圧倒して勝つんだと子どもたちには常々話しています。
去年はまだ自分たちのミスで負ける試合が多かったですが、徐々に落ち着いてプレーできるようになってきたと思います。目立った選手は多くなくても、目配り気配りの野球で勝負していきたいです」
そう語る坂本監督の横顔が西陽で照らされる。
夕暮れの訪れとともに、富士山の山頂を覆っていた雲がスッと消えた。
川沿いの道ばたには、黙々とバットを振り続ける部員たちの姿がみえる。
日本航空、6年ぶりとなる山梨の夏の頂きへ――
7月までの残された日々を全力で走り切る。