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腰痛対策のコンディショニング(2)

2014.03.31

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。

 前回は「腰痛対策のコンディショニング」として、主に疲労がたまったときに起こりやすい腰痛への対応について書きました。特に寝るときの姿勢であったり、下肢のストレッチといったことは自分でもすぐにできることですので、気になる人はぜひ続けてみてくださいね。今回は、前回に引き続き腰痛に対するコンディショニングについて、体幹トレーニングや足首の重要性についてお話をしたいと思います。

体のぶれを少なくするために鍛えたい体幹

 皆さんは体幹(たいかん)という言葉はご存じですか? 人によって微妙にニュアンスが違うこともありますが、平たくいえば手足を除いた体の胴体部分とそれを支える筋肉のことをさしています。野球に限らず多くのスポーツでは、体の軸がぶれないように安定させることを求められていますので、腹筋・背筋を中心としたいわゆる体幹トレーニングを取り入れているチームも多いのではないでしょうか。

 野球の練習においてもバッティングやピッチングのぶれをなくすために、投げ込みをする、振り込みをするという技術の反復によっても体幹は鍛えられますし、バーベルやダンベルといったフリーウエイトを使ったトレーニングにおいても、ウエイトを持った姿勢を保持するために自然と体幹を強化することになります。

 次に腹筋と背筋のバランスについて考えてみましょう。人間は立っている姿勢を保持するだけでも背筋を使っています。腹筋には大きな力が入っていなくても、背筋は常に緊張した状態になりがちです。この状態が続き、背筋力が大きくなると腰が反ってしまい、この状態でプレーを続けると腰痛を引き起こすことが考えられます。
 成長期にある高校生の皆さんは、大人に比べて骨が弱く、大きな物理的ストレスや繰り返される反復ストレスによって「腰椎分離症」や「腰椎すべり症」といった腰椎のケガを受傷しやすい傾向にあります。

 こうしたことをふまえ体幹トレーニングを行うときは、腹筋を少し多めに鍛えることも一つの方法です。背筋は日々鍛えられている一方で、腹筋は意識して鍛える必要があるのです。比率としては「背筋:腹筋=3:7」ぐらいに調整し、より腹筋を強化することを意識して行いましょう。

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膝の曲げ伸ばしで腸腰筋を強化する

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 ただし腰を大きく反らせるような腹筋運動、たとえば仰向けに寝て膝を伸ばしたまま足を上げ下げする運動は、腰が反りやすく痛みの原因になりやすいです。この場合は仰向けの状態で膝を曲げ伸ばしし、股関節の前側を意識して行うようにすると体幹強化としても十分効果が期待できます。

[page_break:足首を柔らかくすることを意識しよう]

足首を柔らかくすることを意識しよう

 前回も少しお話をしましたが、腰が痛くなる原因は腰そのものではなく下肢を中心とした別の部位にあることが多く、こうした場合は日頃のコンディショニングを特に気をつけて行うようにするだけでも、腰痛が緩和するケースがあります。いろんな部位をチェックしなければならないのですが、一番簡単で皆さんにできそうなものは足首の柔軟性を改善すること。足首は自分の体を支える土台であり、地面との接点です。

 足首が硬いとさまざまな物理的ストレスがそのまま膝や腰に大きな負担となって作用します。たとえば建物の耐震構造と免震構造の違いを考えてみてください。足首が柔らかいと「免震」構造のように地面からの反力をうまく足首で分散させることができますが、足首の硬い、固定力の強い「耐震」構造だと、地面からの反力がより大きくなって膝や腰などの荷重関節に負担をかけることになります。こうしたことを考えてみても、足首の硬さというのはケガにつながりやすいと考えられるでしょう。

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足首をまわすときはしっかり両手で保持して

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 日頃から行ってほしいことといえば痛みのない範囲で足首を回すことです。立った姿勢でつま先を中心にまわす動作だけでは不十分なので、しっかりと座った状態で足首を持ち、左右にゆっくりとまわすようにします。毎日行っていると日によって足首の硬さが違っていたり、左右の違いに気づいたりといったこともわかるようになるでしょう。また膝などに不安がなければ、入浴時に正座をして足首の前側を伸ばすようにすることも効果的です。湯船の中では浮力が働くので全体重が足首にかかることはなく、お湯の中で温まった状態は筋肉の柔軟性を高めます。

 かかとをつけた状態で膝を抱えて座ることができないという人や、普段から腰を痛めやすく足首が硬いと感じている人は、ぜひこうした足首の硬さを改善できるように日頃から意識してチャレンジしてみてくださいね。

腰痛対策のコンディショニング(2)

●体幹は野球のプレーやトレーニングによって鍛えられる
●腹筋と背筋の割合を考えるときは7:3くらいの割合で腹筋を多めに
●腰が反り腰になるような腹筋運動はNG
●足首は体を支える土台のようなもの
●足首を柔らかくして「免震」構造を目指す
●座って足首を抱えて回すことや、入浴時の正座などもオススメ

 (文=西村 典子

次回、第90回公開は4月15日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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