日本文理高等学校(新潟)
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2009年、第91回全国高等学校野球選手権大会決勝(試合記事:2009年08月24日)。新潟県勢初の決勝に駒を進めた日本文理は、中京大中京相手に苦戦を強いられ、8回を終えて4対10。最終回の攻撃も打者二人が簡単に打ち取られ、二死走者なし。誰もが中京大中京の優勝を確信したその瞬間、ドラマは始まった。四死球、ヒットで打線がつながり、1点また1点と着実に得点。1点差まで追いつく脅威の粘りを見せ見事準優勝。それまでの新潟県の高校のイメージを覆し、新潟県の高校野球史に確かな軌跡を残した。
昨夏の選手権では、強豪・大阪桐蔭(試合記事:2013年08月08日)に敗退したものの、新チーム始動後すぐに幕を開けた秋の大会では、1試合1試合、試合を重ねるごとにチームがまとまりを見せ、県大会優勝。春の選抜出場権を掛けた北信越大会でも2つのサヨナラ勝ちを収め優勝。北信越覇者として出場した昨秋の明治神宮大会でも北信越大会覇者の貫禄を見せつけ、決勝の沖縄尚学戦(試合記事:2013年11月21日)では惜しくも逆転負けしたものの、見事準優勝を果たした。新潟県、いや既に全国屈指の強豪校に仲間入りした彼らは、どんなモチベーションで一体どんな練習を行っているのか。その練習をのぞいた。
全国屈指の強豪校入りを果たした日本文理のトレーニング方法
積雪のため冬季はグラウンドを使った練習が満足にできず、その差が野球後進県と言われてきた新潟県。だが前述のような活躍ぶりを見れば、その差は誰も感じないだろう。
取材に訪れたのはシーズン開幕前。青空が広がるものの、寒波で風が冷たい8時50分に同校を訪れると、室内練習嬢では既にアップがはじまっていた。部員全員がまとまって、軽いランニングやダッシュを行う。冬季の練習は、寒さ=ケガにつながりやすくなるため、念入りに時間を取り、体を温める。約40分、体がほぐれてきたところで、選手は「校舎」「グラウンド」「室内練習場」の3班に分かれて練習を始める。部員数が多いため、時間で区切り、練習場所を3箇所に分けて行うのである。ここでこの日のメニューを紹介しよう。
投手陣はバランスボールを使い、下半身強化に取り組む
■「校舎」でのトレーニング
「校舎」では、階段・廊下でダッシュや、中小距離走が主。投手陣は、投手陣を取りまとめている海津コーチが考案した「下半身強化メニュー」のファイルを見ながら、いくつかのメニューをピックアップし、筋力トレーニングやバランスボール、プレートを使ったトレーニングなどをバランスよく行う。投手陣のリーダーでエースの飯塚 悟史(2年・投手)が率先して声を出し、自ら厳しい負荷のトレーニングを課す姿が非常に印象的だった。
様々なバリエーションでノックの練習
■「グラウンド」でのトレーニング
「グラウンド」では、硬式ボールを使いながら体力強化をするプログラム。受ける側は飛びついてボールを捕球するメニューや、ボールの軌道が不規則に変化する水分を含んだ土のグラウンドでダッシュからショートバウンド捕球、二点間を行き来するフライの捕球、体幹を意識し前に出す足を交互に入れ替える捕球練習などが行われている。天候が悪化すると外での練習はできなくなるため「グラウンド」に出た選手たちは、厳しい練習に苦悶しながら、どこか明るく晴れやかな表情を見せていた。
打撃は一つ一つテーマをもって取り組む
■「室内練習場」でのトレーニング
「室内練習場」は主にバッティング練習。マシン打撃、コーチが投げるバウンド投球を打つもの、選手が交代で打撃投手を務める3種類を行う。当然、3つの練習しかないため、同時に出来るのは3人。当然待っている選手が出てくるのだが、その選手も鏡を見ながら打撃フォームをチェックしたり、腹筋・背筋、ウェイトトレーニングなどを行い、準備を怠らない。また、打撃練習を行っている3人も、単純に打つのではなく、どんな状況で自分がどんなバッティングをしたらいいのか、1打席1打席テーマを持って臨んでいるという。
選手の自主性が最大限に発揮できる環境づくり
フォームを確認し、順番を待つ選手たち
ここまで紹介してきた練習メニューの中で一番の大きな特徴は、細かいメニューや回数など全てを選手自身が決めているということ。ある程度メニューは提示しているが、大きなポイントは選手の自主性に任せているということだ。鈴木コーチは言う。
「練習メニューや、回数、やり方について特に細かい指示は出していません。もちろん、『こういうやり方がある』というようにいくつか提示はするけど、それをやるのは選手自身。冬の間は対外試合ができないけど、逆にじっくり基礎をじっくりできる時間がある。その時間を使って自分自身の弱点を克服するのか、それとも長所を伸ばすのか。それも選手自身が決めることです。私たちが強要しても『やらされている』練習では意味が無い。
今レギュラー外の選手は、レギュラーと同じ回数やっても、超えていくことはないだろうし、逆にレギュラーも下が伸びてくれば、外される可能性もあるんです。練習で力が伸びてくれば、紅白戦や練習試合で使ってみる。そのチャンスは誰にでもあるんです。あとはそこで結果を出せるかどうか。最終的にベンチに入れる人数は限られてくるわけだし、自分がそうなるためにはどうすればいいか、自分で考えながらやることが重要なんです」
では、選手はどう考えているのだろうか。メンバーの川口 達朗(2年・一塁手)は言う。
「コーチには『練習のパートナーを選べ』と言われています。例えばティーバッティングで小技が得意な選手と長距離砲が組むと、練習の趣旨が違って来るから意味がない。だからパートナーを選んで、考えながらやっていますね。最近では海津コーチが作った投手陣用の練習メニューに野手が参加しています。野手は本当に各自で考えながらやっているんですけど、自分で決められるということは甘えが出てしまう可能性がある。だから、自分で決めたメニューの他に投手陣のメニューにも参加しています。この時期は野手も体力、下半身強化が大事なので」
近い距離にライバルが存在することによって、選手の自主性が最大限に発揮できる環境。それは、選手1人1人が明確な目標を持ち、それに向けて努力していくという強い意思があるからこそ実現できるもの。その証拠に、この全体練習終了後、昼食を取ってから行われた自主練習では、屋外のフリーバッティング、屋内のマシン打撃や素振りなど選手が率先して行い、コーチや同僚選手にアドバイスを求める姿が見受けられた。
体幹を鍛えるトレーニングを行う選手たち
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