足裏を鍛えるトレーニングで、足裏の力はどこまで変わったのか? 【永久保存の実験データ】編!
足のスペシャリスト、阿久根英昭教授の足裏メソッド、第5回。これまで、足裏の重要性とトレーニング方法、そして、実際に検証を行い、その結果を教えていただきました。
今回は、その研究結果、阿久根教授によるレポートの詳細をお届けします。少し難しい言葉もあるかもしれませんが、より深く知れば、ますます足裏、足の指の重要性がわかるはず!貴重な研究データと共に、チェックしてみてください。
スポーツシューズによるトレーニング実施前後効果
足のスペシャリスト・阿久根英昭教授
■目的
短距離界のスーパースター・カールルイスのためのシューズ開発を機に、世界の各スポーツメーカーによるシューズの開発は、日進月歩の速さで進められてきている。その中、2004年、ナイキが開発したナイキ フリーは、これまで各メーカーでは成しえなかった「足力を高めるトレーニングシューズ」という画期的なものである。開発の目的は、機能的なシューズであっても、それを生かすための足力がなければ、シューズの良さも無意味になってしまうという視点にある。ナイキ フリーの特徴は、アウトソールに施されている縦横の溝にあり、足部機能である内反や外反、また足趾の屈曲、内転・外転など、まさに素足での動きを最大限に発揮させ足力を高める構造である。
足底には8つの筋肉と2つの腱などの軟部組織が介在し、その全てが足趾につながっている。要するに、足趾を動かすことで足底にある全ての筋肉を鍛錬することができ、より高いパフォーマンスを生みだす「足」を形成することができるからである。
本実験では、ナイキ MVP フリー トレーナー エリートを履いてのトレーニング前と、約4ヶ月後の足部機能、またそのことによるスポーツパフォーマンスの実施前後の変化から、ナイキ フリーのトレーニング効果について検証するものである。
■方法
検証項目と検証方法は以下の通りである。
(1)足部機能
1. 足底圧力分布図
足底圧力分布図は、静立時の足底各部位にかかる圧力分布状態、左右足荷重差、縦軸重心位置から、静立時の安定性と足部機能を検証するものであり、測定は、FPS(足底圧力測定器)を用いた。
2. 足趾力
足趾力は、足趾の屈曲力を評価するもので、足趾力計のバーに足趾をかけ、屈曲した時の力を測定した。
(2)スポーツ・パフォーマンス
1. 50m走
クラウチング・スタートで、50mの距離を走行した時のタイムを測定した。グランド(土)
2. 垂直跳びの変化
リープメーターを用いて実施。測定は2回で記録の良い方を採用した。
3. 反復横とび
ライン間1mとして、20秒間での回数を測定した。
(3)検証期間・被験者
トレーニング実施期間は、7月19日より11月21日までの約4カ月間。
被験者は、野球部員4名で、ポジションは投手、捕手、内野手、外野手である。
検証結果は次のページで!
検証結果―足底圧力分布図・縦軸重心位置―
■結果と考察
(1)足部機能
足底圧力分布図は、静立時の足底各部位にかかる圧力で、赤色が最も強く、青色が最も弱い圧力を示している。そして、足部機能では、踵部、母指球部、小指球部、足趾に強い圧力がみられること、左右足荷重値差もほぼ0%に近い数値であること、縦軸重心位置も53%前後に位置していることを理想的な足型としている。
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4選手それぞれの足底圧力分布図 |
1 . 足底圧力分布図
実施前に比べ実施後の変化は、被験者四名とも前足部と足趾に強い圧力がみられる。これは、足底の前足部や足趾を、より使えるようになったことの証と考える。
2. 左右足荷重差
実施前に比べ実施後の変化は、被験者全員の左右足荷重差が小さくなっている。これは、静立時の左右足のバラ ンスの確保できるようになったことの証と考える。
3. 縦軸重心位置
縦軸重心位置は、踵「0%」、つま先「100%」とした時の前後のバランスを評価するものであり、前方への効率的な重心移動を可能にする理想的な重心位置を53%としている。
実施前に比べ実施後は、被験者の平均数値が理想的な53.87%に変化しており、より効率的な重心移動が可能になるものと考える。
足部機能の評価については、足底圧力分布図にみられた強い圧力、左右足荷重差によるバランス保持、効率的な縦軸重心位置などの変化は、足部や足趾の機能を高めた証であり、ナイキ フリーを履ことによるトレーニング効果の現われと考える。
検証結果―足趾力―
■結果と考察
(2)足趾力
足趾力とは、動揺に対するバランス保持やスポーツパフォーマンスなどの原動力であり、瞬時の総合的な動きの良さを評価するものである。
1. 足趾力
トレーニング実施前に比べ実施後の変化は、左右足趾力ともに強くなっている。これは、足部機能にみられたナイキ フリーによるトレーニング効果の信憑性を、さらに高めたものと考える。
検証結果―スポーツパフォーマンス―
(3)スポーツパフォーマンス
ナイキ MVP フリー トレーナー エリートを履くことによるトレーニング効果を、50m走、垂直飛び、反復横飛びなどのスポーツパフォーマンスから総合的に評価検証したものである。
1. 50m走
実施前に比べ実施後の数値は、個人により異なるものの、平均値で0.06秒ほど短縮されている。
2. 垂直跳び
実施前に比べ実施後の数値は、50m走と同様個人により異なものの、平均値で0.65cmほど下回った。
3. 反復横飛び
実施前に比べ実施後の数値は、全被験者が上回っており、平均値でも5回程上回っている。
スポーツパフォーマンスの評価について、垂直跳びで低下の傾向がみられるものの、50m走と反復横とびの2種目では、実施後の記録が上回っており、反復横飛びでは被験者全員の向上が認められた。スポーツパフォーマンスは、足部機能を総合的に評価するものであり、これらの結果もまた、ナイキ フリーを履ことによるトレーニング効果の現われと考える。
まとめ
本実験では、ナイキ MVP フリー トレーナー エリートを履くことによる足部機能のトレーニング効果の有無を目的として検証を行った。結果、被験者数の少なさやトレーニング期間の短さなどにより、有意な結果を得るまでには至らなかったが、足部機能やスポーツパフォーマンスなどから考え、ナイキ フリーを履くことによるトレーニング効果が少なからず確認できたものと思われる。
―――いかがでしたか?普段なかなか見られない、本格的な検証と、その結果、考察。興味深く見られたのではないでしょうか。阿久根教授、ご協力いただきありがとうございました!
みなさんも、足裏を鍛え、ますます野球の上達に結びつけていきましょう!