拓大紅陵vs千葉日大一
勝敗を分けた走塁への意識
打者が一回りして、両者に明らかな差が出ていた。そして、その差が、この試合を大きく分けた。
千葉県大会4回戦・千葉日大一対拓大紅陵は走力がポイントだった。
一巡目の一塁到達の全力疾走基準タイムが4.30秒だから、このタイムをクリアーできた人数が、千葉日大一は1人、拓大紅陵が7人である。これはかなり明らかな差であろう。
いわば、拓大紅陵は走塁に熱心で、千葉日大一はそれほど熱心ではないといえる。両者のスタイルの違いといっても過言ではない。
さらには、その裏返しでカバーリングの意識も、拓大紅陵に分があった。というのも、全力疾走を心掛けるチームは、得てしてカバーリングもしっかりこなし、そうでないチームはカバーリングへの意識が低い。
なぜなら、攻撃面で何か起きるかわからないと全力疾走するから、守備面でも自然にカバーリングへの高い意識を持ち続けられるからだ。
その象徴となったのが4回裏の拓大紅陵の攻撃である。
この回、先頭の石原は遊撃ゴロを放つ。これを千葉日大一の遊撃手が悪送球。石原はラッキーな出塁になるが、ボールが逸れたそこには誰もいなかった。捕手の花川や右翼手の片桐はカバーには動いていたが、しっかりと徹底していなかったのだ。
そして、この日の会場だった[stadium]QVCマリン[/stadium]はファールグラウンドが広く、ボールは転々と転がって行った。打者走者の石原は一気に三塁へ到達したのである。
遊撃ゴロエラーは石原の全力疾走が招いたものだが、さらに三塁まで陥れたのは、お互いの走力への意識の違いが生んだに違いなかった。
続く・6番・伊藤寿が中前適時打を放つ。そして、7番・岡本のところで、また拓大紅陵の全力疾走がモノをいう。エンドランを仕掛け、岡本の打球は二塁への高いバウンドのゴロ。岡本が全力疾走すると、慌てた千葉日大一の二塁手がジャックルしてしまったのだ。
8番・境が犠打を成功させて、1死・二塁、三塁。ここで9番・遠藤が中越え適時三塁打を放ち、二人が生還。この回、計3点を入れたのである。
試合は拓大紅陵のエース境の好投もあって、このまま4対0で終了。
両者に打力の差は感じなかったが、走力―全力疾走の意識―の違いが両者を分けたポイントだった。
(文:編集部)