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夏直前!戦力レポート 瀬戸内高等学校(広島)

2013.07.17

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 10年ぶりに春季広島県大会を制し、中国大会準優勝の瀬戸内。この夏も優勝候補として期待されるチームだ。瀬戸内が甲子園を狙えるチームに成長を遂げた小川成海監督の影響が大きいだろう。

名将・小川監督が作り上げた今年のチームに迫る

 小川監督は昭和57年に広島工に赴任すると広島工時代は春夏合計5度出場。ベスト8を2回経験。昭和61年(1986年)に2季連続出場した際は、ヤクルトスワローズでクローザーとして活躍した高津臣吾がいたことで有名だ。
 平成3年(1991年)に高陽東に赴任すると、1996年の第68回選抜高等学校野球大会ではベスト4、第78回全国高等学校野球選手権ではベスト8を経験。甲子園通算12勝7敗とまさに広島県を代表する名将ともいってもいい。小川監督は平成22年に監督に就任した。

瀬戸内高校野球部 小川成海監督

▲瀬戸内高校野球部 小川成海監督

 瀬戸内が結果を残すようになったのは昨夏から。昨夏は準々決勝まで進出。だが広島新庄に0対9で敗れた。昨秋は準決勝まで進出したものの、3位決定戦で広陵に3対5で敗れ、あと一歩で中国大会出場を逃した。広島県の上位を狙えるチームまで成長した。だがあと一歩のところで、強豪に敗れて甲子園を逃すパターンが2季連続で続いた。
 

 一方で、3位決定戦で勝利した広陵が、中国大会で準優勝し、選抜出場を果たした。甲子園は近いようで、瀬戸内にとっては、遠かった。あと一歩で、中国大会進出を逃した悔しさをバネに冬場を乗り越え、春では快進撃を見せた。準々決勝で再び広陵と対決し、5対2で勝利して雪辱を果たすと、準決勝は如水館に3対0で快勝し、決勝に進出した。春の中国大会は開催地ではない場合、優勝しない限りは出場出来ない。決勝は広島新庄。昨年はコールドで敗れた相手に3対1で雪辱を果たし、見事に県優勝。中国大会進出を果たした。

 迎えた中国大会。瀬戸内大会初日の第4試合目に登場した。待っていたかのように瀬戸内ナインが元気よくグランドを駆け回る。そして小川監督も内野ノックのみ行う。綺麗な回転を転がし、内野手が裁いていく。そしてノックが終わったあと、監督が率先してホームベース回りを素手で均している。少しでも自分たちの手で均して綺麗にしようという心遣いを感じた。

瀬戸内高校野球部 足立賢司選手

▲瀬戸内高校野球部 足立賢司選手

 そして試合は、3回表に一死満塁のチャンスを作ると、3番沖繁 優一(3年)が打席に立ち、1ストライクを取られたところで、小川監督が動いた。ここで代打を命じ、背番号3の足立 賢司(3年)が打席に入る。足立はストレートを逃さず、左中間を破る走者一掃の二塁打で3点を先制。さらに5番大町 太一(3年)の適時打で4点を先制する。この3回を機に、5回までに7点を奪った。この試合、出雲西に2点差まで追い上げられ、8対6で辛勝。相手の反撃もあったことを考えると、3回に代打を仕掛けた小川監督の采配に恐れ入る。

 このように小川監督が積極的に動けるのは、各選手の能力が高いからだ。レギュラー選手と控え選手との能力差が少ない。決勝戦の高川学園戦では敗れたものの、控え選手の活躍であと一歩に迫る戦いを見せた。6対3の2点差で迎えた8回裏。一死二塁となって途中出場の山本 豪志(3年)がストレートを捉え、ライトスタンドに飛び込む2ランホームランを放ち、1点差に迫る活躍。このように控え選手もレギュラーに負けない活躍出来るのが今年の瀬戸内の魅力である。レギュラーと控え選手との差が小さいと、レギュラーだけに固定した戦力で戦いをする必要はない。局面に応じて起用することができるのである。

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[page_break:頼みは大黒柱・山岡泰輔]

頼みは大黒柱・山岡泰輔

 では、レギュラーにはどんな選手がいるかというと、まず1番には広角に打ち分ける打撃、堅実な守備、無駄のないベースランニングと走攻守三拍子揃ったリードオフマンの北吉 弘樹(3年)、出雲西戦の走者一掃の三塁打を放ったように勝負強い打撃が光る一塁の足立 賢司(3年)、パンチ力のある打撃に、強肩が光るライトの佐藤 晋甫(3年)、守備範囲の広い守備に、パンチ力のある打撃が光るショートの岩城 祥太(2年)、バットコントロールのよい打撃と1.9秒台のスローイングが光る大町 太一(3年)と能力の高い選手が揃っている。

瀬戸内高校野球部 山岡泰輔投手

▲瀬戸内高校野球部 山岡泰輔投手

 だが、彼らはレギュラー固定というわけではなく、不用意なミスがあった場合、すぐ交代させるほど小川監督の切り替えは速い。夏の大会でも同様な起用法をするかは不明だが、選手にとってはプレッシャーをかけられながらのプレーになる。その中で、結果を出して精神的に強い選手が生き残ったのだろう。

 ただ一人だけ固定していたポジションがある。それはピッチャーである。エースの山岡 泰輔は、昨年から主戦投手としてマウンドを踏んでいた投手だ。最速140キロ台のストレート、縦に鋭く落ちるスライダー、横に鋭く切れるスライダー、カーブを武器にする右の本格派右腕。精神的に強く、どんな状況でも弱気にならずにしっかりと腕が振れるメンタルの強さを持った投手で、やはりエースを担うにふさわしい素質を持った男だ。

 だが頼みのエースが中国大会では不調であった。3試合全て完投。25イニングを投げて14失点に終わった。出雲西戦高川学園戦はともに6失点だった。夏の大会で6失点はよほどの打線の援護がない限り、勝利をもたらすのは厳しい。それだけに広島大会までに調子を上げて、本来の投球を取り戻すことができるか。やはりこの男が一番のキーマンだ。

 初戦は広島商との接戦を制した崇徳。広島東洋カープの野村謙二郎氏の息子・野村 颯一郎、技巧派左腕・近森 雄太と好選手が揃い、初戦から接戦になることが予想される。だが勝ち進めば、いずれは強豪と当たるもの。地力があるチームは初戦から強豪校と当たっても苦しみながらも最終的に勝ち、そこから勢いに乗って勝ち進んでいく。まさに初戦は今年の瀬戸内の地力が試される一戦となるだろう。エース山岡を中心に、ベンチ入り選手全員が勝利のために全力で仕事を果たし、2000年以来の選手権出場を果たす。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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