Column

野球と脳震盪

2013.03.30

ヘルメット越しの衝撃でも脳震盪は起こる

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

いよいよ春のセンバツ高校野球大会が始まり、皆さんの地区でも今年初の公式戦となる春季大会が開催されていることと思います。
これまでの基礎体力づくりの成果がどれだけ野球のプレーに反映されているか、楽しみな時期でもありますね。さて今回はスポーツ現場で必ず知っておきたい脳震盪(のうしんとう)についてのお話をしたいと思います。

脳震盪とは、頭部や頸部などに衝撃を受けた直後に起こる一過性の神経機能障害のことをいいます。ボールなどが直接ヘルメットや頭部に当たり、その結果として脳が激しく揺れ動かされた状態です。脳は頭蓋骨という器の中で守られているのですが、例えていうならば、大きな器は水(=髄液)で満たされていて、その中に浮いている豆腐のようにもろいものが脳であると想像してみてください。頭部への打撲などによって器(=頭蓋骨)に衝撃が加わると中で浮いている豆腐(=脳)は大きく揺らされます。その結果、脳の機能が一時的に低下し、さまざまな症状が現われることがあります。

【よく見られる症状】
●頭痛や「頭が重い」「頭がボーッとする」といった訴え
●めまい・ふらつき・気分が悪い・吐き気
●眠気
●記憶障害(健忘症)
●意識の喪失(短期または長期)

これらの症状は脳の機能が一時的に低下したことによるものと考えられ、脳震盪を起こしている可能性があります。脳震盪を起こした、または疑いのある選手の当日の競技復帰は見送るようにしましょう。選手は「大丈夫です」とプレーの続行を希望することも多いのですが、脳震盪の症状が現われているときにそのままプレーを続けると、さらに重篤な症状を引き起こす場合がありますので、周囲の人は必ずプレーを止めるようにしましょう。


フェンス際のプレーにも十分注意しよう

頭部に大きな衝撃が加わった場合の応急処置としては、横になる等の安静肢位をとり、氷などで頭部を冷やすようにします。そのまましばらく様子を見ながら、症状が軽減するかどうかを確認します。
頭部打撲などの場合、時間が経過してから症状が悪化する場合もあるため、受傷後24時間は必ず誰かが付き添って様子を見るようにしましょう。
この間、普通に日常生活を送ることは問題ありませんが、受傷後24時間以内は湯船に入っての入浴、激しい運動など血流の良くなることは控えるようにします。

また脳震盪に伴う症状が複数見られるとき、悪化していると思われるときはすぐに医療機関を受診するようにしましょう。頭部打撲には脳震盪だけではなく、脳内で出血を起こしていることも考えられるからです。

野球の現場においては、デッドボールによる頭部打撲、接触プレーなどによって野手と走者、野手同士などがぶつかった場合、ライナー性の打球が直接投手や野手の頭部に当たった場合、ボールを追いかけたときのフェンス際のプレーなどが考えられます。頻度としてはさほど多いものではありませんが、重篤なケガになりやすいため、頭部打撲や脳震盪に対する正しい知識と対応を身につけてもらいたいと思います。

【野球と脳震盪】
●脳震盪とは、頭部などに衝撃を受けた直後に起こる一過性の神経機能障害
●脳震盪によく見られる症状は頭痛・めまい・ふらつき・嘔吐・記憶障害など
●脳震盪の疑いのある選手については、当日の競技復帰は見送る
●頭部打撲後はまず応急処置として氷などで頭を冷やす
●受傷後24時間は血流が良くなることは避ける

(文=西村 典子

次回、第66回公開は04月15日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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