東北楽天ゴールデンイーグルス 田中将大選手
第132回 東北楽天ゴールデンイーグルス 田中将大選手2013年03月02日
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駒大苫小牧高時代は05年夏の甲子園大会優勝の原動力になり、翌06年は決勝で敗れたものの早稲田実・斎藤佑樹との延長15回引き分け、翌日再試合の熱闘が感動を呼んだ。プロ入り後は09年のWBC(ワールドベースボールクラシック)日本代表に選ばれ、今や“ジャパンの顔”になった田中将大(東北楽天ゴールデンイーグルス)。高校生に向けて、今何をしなければならないのか、テクニカルな問題に鋭く切り込んだ。
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体が開かないためのヘソの位置
――以前取材した野球評論家の牛島和彦さん(元ロッテ)は「体が開かなければ何をやってもいい」と仰っていました。
田中 将大選手(以下「田中」) 確かに開かなければ肩肘の負担が減るし、開いて速いボールを投げようとすれば肩肘の負担が大きいかなとは思います。
東北楽天ゴールデンイーグルス
田中将大選手
――開かないためには最初の動きが重要だと思うのですが、田中さんを見ていると体を横にひねる動きがなく、打者に真っすぐ向かっているように見えます。そういうのは意識されていますか?
田中 「開かない」というのはもちろん意識しています。投げにいくときは絶対に反動をつけるんですけど、自分の中では極力余分な反動をつけないようにしています。ブレるのが嫌なので。
――体を横にひねる動きは極力抑えたいという?
田中 そうですね、ブレちゃうので。ダル(ダルビッシュ有)さんはヘソが三塁側を向いている限り絶対に開かないと言ってました。ヘソの向きがずれるだけで開きますし、三塁側を向いていれば絶対開かないと言われて、ああなるほどと。
――どのぐらいまでヘソは三塁側を向いているんですか?
田中 足が着くまでですかね。
――ストレートと変化球を同じフォームで投げるというのも難しいと思うんですが。田中さんは高校時代、スライダーを投げるとき肘を下げて横から投げるときがありました。それはどうやって克服されたんですか?
田中 高校時代は大きく曲げたいという気持ちが強かったから若干下げて投げていたんですけど、今は真っ直ぐと同じ軌道から曲げたいという意識があるので、真っ直ぐと同じところから投げていると思います。
「真っ直ぐと同じ軌道で変化球を投げたい」
――内側から腕を上げていくことも重要で、田中さんは高校時代からそういう投げ方をしていました。内側から上げていけば自然と肘が上がって、腕の振りがスムーズになりますね。
田中 多分キャッチャーをやっていたからというのもあると思うんですけど、体の軸を右側に残しておくことも重要です。足が着いたときでも軸が右(後ろ)にあれば、自然と肘が上がってくると思うし。マウンドは傾斜がありますが、意識は後ろに重心を残した状態で足を着くという感じです。
――球場には傾斜のきついところときつくないところがありますが、そういうのはあまり気にならないですか?
田中 気にはならないですね。傾斜はきつめのほうが投げやすいといえば投げやすいですね。
――きつくても後ろに残せるものですか?
田中 そうですね。突っ込んだりというのはあまりないです。
――それは意志の力だけで何とかなるものなんですか?こっちに残していくという?
田中 僕はそうです。
[page_break:ステップでのこだわり]ステップでのこだわり
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――ステップで心がけていることはありますか?
田中 そっと着くことですね。バン!と着くのはだめです。それも軸が右側に残ってないとできないですよ。突っ込めば絶対にバンとなるので。それがやっぱりつながっているんです。
――バッティングでも同じことを言いますね。ゆっくりステップしないと呼び込めないと。やっぱり同じですか?
田中 同じだと思います。
「できるだけ力を抜くことを念頭にしています」
――インステップとかアウトステップはしないように?
田中 しないですね。ターゲットに向かって真っ直ぐ踏み出すというイメージです。
――脱力というのはどうでしょう。
田中 高校のときやプロ2年目までは腕をガチガチに固めて投げていました。それだとやっぱり瞬間の力というのは出ないので、できるだけ力を抜いてと今は考えています。
――力を入れている感覚は、あまりないのですか?
田中 できるだけ抜いて抜いて。腕を上げるまでは全く考えていません。貯めていた力を右から左(後ろから前)に乗っける感じです。真っすぐが自分でも行ってるなと思うときは、フォロースローが大きく取れているときですかね。腕が飛んで行きそうな感じになります。
――やっぱり基本は真っすぐですか?
田中 そこが良くないと、ごまかすピッチングになっちゃうので。
[page_break:ピッチングでの脱力]ピッチングでの脱力
「不調は試合の中で修正していきます」
――不調になったときのチェックポイントを教えてください。
田中 試合、試合の中で修正ポイントというのがあるんです。球が低めに行ったり高めに行ったりというときは、しっかりと軸が残っていないときですね、投げ急いでいたり。そういうときはしっかり原点に帰って軸を後ろに残して、ステップした足を着いてから投げるというのを意識しています。あとは、腕が後ろに入り過ぎないことでしょうか。腕が入ると腕が横振りになります。変化球を曲げにいこうとするとそうなりやすいんですが、いいときはスライダーも全部縦ぎみに落ちるときなんで。そういうところは意識しています。
――変化球の曲がり具合で開いているのはわかりますか?
田中 体が横振りだなというのはわかります。
――それはその試合で修正できるものですか?
田中 できるというか、しないといけないです。
――野球用具で重要視しているポイントも教えてください。
田中 高校のときは革底のスパイクに憧れて、それがいいみたいな思いがあったんですけど、プロ入り後は樹脂製で底の軽いのを使っています。革だとどうしても雨を吸って重くなっちゃうんです。樹脂のスパイクは基本的にそんなに変わらないので。
――重さも気にされるんですか?
田中 そうですね。重くなるのは嫌なので。その人その人の好みだと思うんですけど、軽いのがよかったりクッション性があったほうがいいとか。僕は体が大きいので、自分の体を支えるために多少クッション性のあるスパイクを使っています。そのほうが衝撃を和らげてくれますし。
田中選手、ありがとうございました。
プロで活躍する選手は頭の中がしっかり整理されていることが今回の取材で改めて感じました。理屈が通り、言葉の1つ1つがわかりやすい。高校生でもすぐ取り入れられる話が多かったと思います。
(インタビュアー:小関順二)
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