Column

ストレスと過呼吸症候群

2012.12.30

紙袋を使った呼吸法は行わないようにしよう

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

皆さんオフシーズンの練習は順調に進んでいますか? この時期だからこそいろんなことにチャレンジし、技術を支えるための土台となる体力を鍛えることを率先してもらいたいと思います。しかしあまりにも過酷なトレーニングや睡眠不足、また日々の生活の中で抱えるストレスは身体に影響を及ぼすことも・・・。

今回はストレスがその大きな要因とも言われている過換気症候群(かかんきしょうこうぐん)についてお話をしたいと思います。

過換気症候群(いわゆる過呼吸)は精神的なショックなどによって過換気(必要以上に二酸化炭素を体内に排出し、酸素を取り入れようとする)を引き起こし、血液中の酸・アルカリバランスが崩れて呼吸が乱れ、手足がしびれたり、不安を助長したりします。ストレスが原因になって起こることが多く、10代、20代といった若者によく発症し、野球選手にも見られることがあります。これには個人の性格などにも大いに関連があると言われていますが、物事をキッチリと進める堅実タイプや責任感の強い選手などは、心配事を抱えた状態が不安感へと発展し、過呼吸を発症すると考えられています。練習や試合などでミスをした時、そのミスを自ら責めて抱え込んでしまったり、ミスをしたことが原因となってメンバーから外されてしまったといった状況で不安感が大きくなってしまい過呼吸で倒れてしまうというケースがありました。

こういった選手を身近で見かけた場合、皆さんはどのように対応しますか?

以前はペーパーバック法といって紙袋を口に当て、自分の吐いた呼気を再度吸い込むことで血液中の二酸化炭素濃度を上げるように病院でも指導されていたようですが、現在ではこの方法は推奨されていません。この方法だと低酸素状態を作りだしてしまうことになりますし、単なる過換気症候群ではなく背後に重篤な病気がある場合、症状を悪化させることにもつながってしまうからです。また二酸化炭素そのものが、呼吸に苦しむ選手の不安を増悪させるということも言われています。紙袋を口に当てて呼吸するというのは間違った対処法であるということを理解してください。


野球にミスはつきもの。みんなでミスをカバーしよう

では過呼吸で選手が苦しんでいるとき、周囲の人はどのように対応すれば良いのでしょうか。ストレスが原因となっていることが多いので、不安感を取り除くようにすることが大切です。

●「大丈夫だよ」と声をかけ、背中などをさすりながら不安を軽減させる
●ゆっくり大きく呼吸するように声をかける(特にゆっくり吐くようにすると効果的)
●ベルトや靴など身体を締め付けているものを外す
●少し落ち着いたらスポーツドリンクなどを飲ませる

などを覚えておきましょう。また過呼吸を起こしている選手は、胸式呼吸がうまく出来ないことで呼吸困難を感じると言われており、腹式呼吸を行うようにアドバイスすると呼吸困難はやがて改善されてくるそうです。

一度過呼吸を起こしたことのある選手は、繰り返して過呼吸を起こしやすいので、その原因となっている問題ごとや悩みごとを解決することが先決となってきます。指導者やトレーナーは選手の話をよく聞いて、悩みや不安を受け止めてあげることも必要です。ストレスとは上手に付き合い、うまく発散させながら前向きにとらえていく必要がありますね。

特に野球でのストレスを感じている場合、ミスなどが原因になる場合などは、チーム全体でミスをカバーするという雰囲気をつくること、一人に大きな責任を負わせないようにすること、誰でもミスはするものですので励まし合いながらミスした選手を孤立させないようにすることなどを意識してほしいと思います。

参考ブログ)「救急科専門医の独り言」より
過換気症候群にペーパーバッグはいけません」 
過換気症候群にペーパーバッグはいけません(その2)」 

***

2012年も「セルフコンディショニングのススメ」をお読みいただきありがとうございます。2013年も引き続き皆さんに役立つ情報をお伝えできればと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。良い年をお迎えください!!

【ストレスと過呼吸症候群】
●過換気症候群(過呼吸)は10代、20代の若者世代によくみられる
●原因の多くはストレスだといわれている
●紙袋を使ったペーパーバック法は間違った対処法
●過呼吸で苦しむ選手の不安感を取り除き、締め付けているものをゆるめること
●胸式呼吸ではなく腹式呼吸で呼吸困難を改善する
●野球上でのミスはチーム全体でカバーし、一人に大きな責任を負わせない

(文=西村 典子

次回、第60回公開は01月15日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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