中央大学 鍵谷 陽平 投手
第120回 中央大学 鍵谷 陽平 投手(北海高出身)2012年12月24日
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北海道日本ハムファイターズに指名された中央大学の鍵谷陽平といえば最速152キロの剛速球右腕。どんな練習をして、150キロの大台までに達したのか。
鍵谷投手にスピード&パワーをレベルアップさせる独自の理論、また学生時代のトレーニング方法を語っていただきました。
鍵谷投手が実際に行っていた中央大トレーニングを一挙紹介!
中央大学 鍵谷洋平選手
――鍵谷投手は現在、最速152キロの真っ直ぐを投げていますが、どうすれば、そこまでのスピードボールが投げられるのでしょうか?
鍵谷陽平(以下「鍵谷」) 僕は、腕の振りを強く、速く振ることが出来れば、球速は上がると考えています。
――ということは、高校時代と比べると、腕の振りは当時よりも速くなっていると実感していますか?
鍵谷 そうですね。腕の振りを速くするためには、下半身を強くしたり、肩周り、体幹を鍛えないと腕の振りを速くすることは出来ません。そのために、何が必要かということを考えて大学では練習を重ねてきました。
――“腕の振り”といっても、それを速くするためにはすべての筋力を使うんですね。
鍵谷 投げるのは上半身だけではなく、下半身から始まって、体幹に伝わって最後に腕という形になるので、体全体の筋力が必要になってきますね。
――鍵谷選手は、これまでどんなトレーニングを積んできたのでしょうか?
鍵谷 高校時代はとにかく走りました。ウエイトトレーニングは冬場だけでしたね。年間を通じてのウエイトは、大学に入ってからです。今は、ウエイトと走り込みを両立しながら取り組んでいます。主に、スクワット、ベンチプレス、デッドリフトで大きな筋肉を鍛えて、あとは細かな筋肉も鍛えるのも忘れずにやっていますね。
――ウエイトトレーニングは、週何回のペースでやっていたのでしょうか?
鍵谷 下半身の場合、1日やって2日空けます。その間に上半身、下半身の違うメニューを取り入れたりしています。
「北海高校時代はとにかく走り込みました」
――ちなみに、鍵谷選手の場合、スクワットではどのくらいの重量を持って、行っているのでしょうか?
鍵谷 大学1年の時は110キロでしたが、だんだん重さも上げられるようになって今は180キロですね。8回~12回を1セットとしています。同じ重さと回数で、もう1セットとなると、体力的に難しいですが、8~12回できる重さに減らして、3セットはやりますね。
――体幹を鍛えるためには、どんなトレーニングをしているのですか?
鍵谷 一番は腹筋ですね。メニューは腹筋を鍛えるために、色んな種類のメニューを取り入れていますが、これは毎日続けていて、一日最低でも400回~500回はやっています。また他のトレーニングや練習でも、股関節周りを締める意識で常に練習しています。
――肩周りはどのように鍛えられているのでしょうか?
鍵谷 TRX(サスペンショントレーニング)という器具を使ってやったり、チューブトレーニング、ダンベルなどを使ってやっています。他にも、うつ伏せの状態から、肩甲骨を寄せて上げるトレーニングなど何種類か行っています
[page_break:高校時代の背筋力は260キロ!当時の練習法とは?]高校時代の背筋力は260キロ!当時の練習法とは?
――高校時代は走るメニューが多かったといういことですが、どれくらい走っていたのですか?
鍵谷 平日の授業が終わった後、ポール間は最低10本(片道)。これはノルマの数で、あとは自主練習で、プラス10本走りました。または、ロングで8キロ走ったり。
走るメニューでは必ずタイムを測っていて、大体30分ちょっとでしたね。僕は走るのが得意ではなく、いつも順位は後ろから数える方が速かったですね(笑)
「グラウンドの雪割りで背筋力をアップ」
――走るのが苦手ながらも、毎日、自主練習では欠かさずに走っていたのですね。
鍵谷 そうですね、走ることの大切さは、高校の監督さん(平川敦監督)から教わりました。『投手は投げ込みよりも、走り込みが優先』という考えを持った監督さんでしたので、練習試合の時も、試合で投げない投手はポール間を走ったりしていました。走ることが習慣になっていたんです。
――今、振り返って、毎日と走ることによって、投手としてどんなことが得られたかなと思いますか?
鍵谷 もちろん体力もついて、心肺機能も強くなりますし、そして気持ちが強くなりますね。『きつい』と思っていても、そこから走りを続けることで、メンタルが強くなるんです。
――鍵谷選手は、高校時代から背筋力が200キロ以上あると伺いましたが、なぜ当時からそんなに背筋力が高かったのでしょうか?
鍵谷 高校時代は、MAXで260キロまで背筋力が出たことがあります。当時は雪が降る土地柄だったので、グラウンドの雪割りといって、グラウンドにある雪をどける作業が、練習中にありました。雪を固めて、四角形にして、それを持ち上げてグラウンドの外に置く作業を冬の間ずっと繰り返すんですよね。
固めた雪は本当に重くて、それを何十回も繰り返すので、自然と背筋が鍛えられていきました。もちろん、これはトレーニングではなくて、早く雪をどかさないとグラウンドで練習が出来ないので、練習前に必ずやっていたことです。
――雪が多いとなると、冬の練習では多くの工夫をされていたのではないでしょうか?
鍵谷 僕たちのチームは、冬になると、外でクロスカントリーをやっていました。室内では、ティーバッティングを集中的にやっていましたね。うちの投手陣は、野手と同じくらいの打撃練習をやらないといけなくて、早打ちのティー、足を開いてのティーなどを1日1000球ほど打っていました。
――徹底した打撃練習によって、ピッチングにも生きたことはありますでしょうか?
鍵谷 足の使い方は似ているところがあると思いますね。また、強い打球を打つには股関節を意識しなければならないので、下半身を鍛えること。さらに、ピッチングと同様で、“下半身を意識する”ということを確認するには良い練習だと思います。
――先ほどのお話しされていた『クロスカントリー』は、かなりスタミナがつくトレーニングになるのではないでしょうか?
鍵谷 そうですね。雪が降る地域に住む選手はスキーがおススメです。自分は小さい時からスキーを良くやっていました。怪我の可能性もあるので、慣れないと危険なんですけど、大学に入ってからも、帰省するとスキーに行っていましたね。
そこでは、ただ滑るだけではなく、斜面から降りた後はリフトを使わず、スキー板を持ちながら歩いて上に登る。そこからまた滑って、また歩きながら上に登って滑る。それを繰り返す練習をしました。本当にきついですが、自分が出来る範囲でぜひやってみてほしいトレーニングですね。
質の高い速球を投げるためには
中央大学時代の鍵谷選手
――最後に、ピッチングについて、もう少しお伺いしたいと思います。力のある真っ直ぐを投げる鍵谷選手ですが、ボールに効率よく力を伝えるコツは何かありますか?
鍵谷 なるべく体が開かないようにすることですね。開くとボールが見やすくなったり、シュート回転してしまうので、左肩がギリギリまで開かずに、前で離すことを意識しています。でも、まだまだ前で離すことが出来ると思うので、そこは今の課題ですね。
――それは投球練習から意識しているんですか?
鍵谷 キャッチボールから意識したほうがいいですね。キャッチボールの意識が低い選手はうまくならないと思いますし、良いチームや選手はキャッチボールがしっかり出来ていますよね。
また、60メートルぐらいから、山なりではなく、ライナー性で強く低いボールを投げることも、ボールの勢いを増すには良い練習の一つだと思います。
遠投にしても、無理して遠くへ投げる必要はなくて、反動は使わずにちゃんとしたフォームで投げられる距離で、遠投をやった方が個人的にはいいと思っています。
――高校から大学に入り、レベルが上がったことで、ピッチングフォームで変化した部分はありますか?
鍵谷 まず意識を変えたのは、球の勢いで勝負するのではなく、コントロールの良さと、テンポ良く投げることでした。フォームも、ワインドアップからコントロールを意識して、セットポジションに変えました。高校の時は猫背気味だったですけど、真っすぐ立つなど、細かな所でも変化をつけていきました。
――鍵谷投手は北海高校から中央大に入り、2学年上には澤村拓一投手(巨人)や山崎雄飛投手(東京ガス)と出会ったことで、プラスになった部分は大きかったですか?
鍵谷 大きかったですね!お手本となる投手の方々が身近にいましたので、そういう方に追い付くためにはどうすればいいか、先輩たちがどんな練習をしているかを、自分で観察して、『一緒に練習やっていいですか?』と頼んで、一緒にトレーニングをやらせてもらったりしました。
そのうちに、先輩方からも『一緒にトレーニングやろうぜ』と声をかけてもらって、そういった時間は自分の中でもとてもプラスになっています。
高校球児へメッセージ
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――高校生の皆さんに向けて、自分の夢を叶えるために、どんなことを日頃から意識して考えた方がいいのかメッセージをお願いします。
鍵谷 なるべく自分で考えて、この練習は何のためにやるのかを理解した方がいいと思います。やらされたメニューをただやるのではなくて、この練習は何のためにやっているのか。それを聞いたり、自分の中で意識してやることですごく変わっていくと思います。継続して、本気で取り組めば、甲子園に行くことやプロになるという夢は叶うと僕は思います。
鍵谷陽平投手、ありがとうございました。
高校・大学時代の練習やトレーニング法、とても参考になりました!毎日の練習で何を考えて取り組むのか。ここが大きな差になっていくのですね。
鍵谷選手のプロ入り後の活躍も、応援しております!