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スピード向上プログラム part2

2012.11.19

殖栗正登のベースボールトレーニング&リコンディショニング

第75回 スピード向上プログラム part22012年11月19日

爆発的パワープログラム

皆さんこんにちは。ベースボールトレーナーの殖栗正登です。前回に続いて特別編として、スピード向上に必要なトレーニングに関してお話します。

パワーとは仕事✕時間で表されます。もっと分けると力 ✕ 距離 ÷ 時間 となり、スピードトレーニングを考える場合、パワートレーニングは絶対に必要です。

なぜかと言うと、速く走る高くジャンプする、速く投げるなどのスポーツ能力はすべて力を素早く発揮して伝える能力と関係しているからです。また筋肉には、タイプ1の遅筋タイプ、2a、2ab、2bの速筋に分かれており、遺伝子で割合は決まっています。また筋の発火はタイプの1、2a、2ab、2bの順番で起きるので、これらの筋のすべてを動員するには、外部抵抗に打ち勝つ努力が必要です。そのために、1 ウェイトトレーニング 2 プライオメトリクス 3 スピードトレーニングの順でタイプ2bの筋を刺激して最大限の力を発揮するプログラムをたてる必要があります。

[mobile]動画の解説はPCからチェック!
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[page_break:準備期のトレーニング]

準備期のトレーニング

爆発的なパワーを発揮するためのトレーニングに入る前に、準備期のトレーニングについて知っておいてください。特に11~13歳の若いアスリートやトレーニングを行ってないアスリートには8~12週間を必要とします。1 コアストレングス 2 可動性 3 筋持久力 (高いレベルの筋力維持) 4 無酸素能力 90秒以下 5 身体組成(筋肉と脂肪の割合) 6 有酸素能力といった身体のベーシックをつくっていく必要があります。(ただし、パワー系アスリートは、トレーニングの中心にはしない事)

筋力の改善

そしていよいよトレーニングを開始します。最大筋力は1回で発揮できる最大の筋力のこと、相対的筋力は体重1キログラムあたりに発揮できる筋力のことを言います。静的筋力はある姿勢を安定させる筋力、伸張性筋力とは、筋が伸張されながらはたらく筋力で、ストップ力、カット、方向転換が必要です。

スピードトレーニング

次の段階は、パワーの基礎にある、スピードのある筋力を競技特性に適用する事ですが、トレーニングで改善させるのは、

1 筋力発揮の立ち上がり(最大筋力の発揮までの時間を速くすること)
2 爆発的筋力発揮(力の発揮の効率を高める)
3 ストレッチショートニングサイクル(0秒25以内での筋力発揮)

の3つです。

ストレングストレーニングに鍛えた筋力をいかに短時間で発揮できるかが、ウェートトレーニングとスポーツにおけるパワーの発揮へと転換する大きいポイントであり、スプリントなら0.1秒(コンタクトタイム)、バウンティングは0.2秒、テプスジャンプは0.3秒、10k~20k かついだスクワットジャンプ 0.4秒が目安になります。

もっと重さを担げばコンタクトタイムは長くなるのですが、それは立ち上がりの筋力の発揮時間を遅くし、野球という競技に即した爆発的筋力の発揮とはいえません。

■トレーニングのポイントは、1 まずコア筋力を鍛え、2 次に最大筋力を高め、3 次に相対筋力を高め、4 動的筋力を鍛える(エキセント)、5 弾性筋力(連続ジャンプやリバウンドジャンプでSSC)を高めて、ストレングストレーニングで鍛えた土台を実戦で使える形に変えていくといった流れになります。

スピードトレーニングとパワートレーニング

最終的にはこのスピードトレーニングを行います。とてもシンプルで、目的に対して全身を短時間で動かす能力を鍛えていきます。

スピードを改善させる要素は、

1 加速度の増大
2 絶対的速度(max speed)
3 スピード、持続力
4 特殊スピード

最大の爆発的なパワーを得るには時間がかかります。遺伝による筋の割合もありますし、何よりも成長期は骨の発達が優先なので、絶対的な筋力がMAXになるのに人それぞれの差があるのです。特に大型選手は日本人の場合、筋量が少ないのでピークを迎える年齢は後になってくるでしょう。

[page_break:爆発的なパワートレーニング]

爆発的なパワートレーニング

爆発的パワートレーニングの代表は全身の筋力を一気に出すトレーニングを最大か最大下で行います。

1 スターアップ
2 ハイブル
3 プッシュブレス
4 スプリットブレス
5 スクワットジャンプ
6 フライングスプリット
7 プッシュbox パワー
8 ケトルベルスィング

9 ダンベル パワーローテーション

と進めていきます。1日のプログラムを組む時に、できれば、ウェート、プライオメトリクス、スピードは統合した「コンプレックストレーニング」をお勧めします。簡単に言うと、4~6週で漸進的にプログラムを進める方法です。

爆発的に全身の筋力を一気に出し、プライオメトリクスでは短時間で最大の力を出させ、スピードトレーニングではスプリントなら300~600mを超えないよう質を高め、絶対的な速度をあげていくとか大切です。

野球におけるパワー

パワー発揮には「アサイリック型」「サイクリック型」があり、野球は前者です。パワーの発揮が単発で、最大になります。近い競技には、

・砲丸投げ、円盤投げ、ハンマー投げ、やり投げ
・アメフトのライン
・オリンピックのウェイトリフトティング
・走り高跳び、走り幅跳び、三段跳び
・体操競技
・バレーボール
・飛び込み

などがあります。これらの筋力を高めるには筋力向上が必須であり、筋力と加速がベースなので、そこに動作のスピードをあげるトレーニングはより大切で、軽い負担での素早い動作のトレーニングが必要です。

後者はパワー動作を繰り返すスポーツで、

・ダウンヒルスキー
・アイスホッケー
・スピードスケート
・短距離走
・ボクシング
・ラクロス
・水球
・自転車競技
・短小路水泳
・格闘技

・フェイシング

などで、1R(1回の筋力発揮量):30%~50%ほどのダイナミックな動きのエクササイズを、セット時間のレストを長く取り、パワーの持続性のトレーニングを行います。

これを見ても、野球に必要なクロストレーニング(あるスポーツの競技力向上のために、その他のスポーツあるいはトレーニングを行うこと)が何かがわかるかと思います。前者のスポーツ成績の良いアスリートは野球のパワー向上も高いとも言えます。

なので、野球のフィールドテスト(1筋力テスト、2 垂直跳び、3 30m走 or 10m走、4 メディシンボールスロー)は欠かせません。逆に言えばここにかかれていない長距離的なスポーツなど野球のパフォーマンスを向上させる要素の低いコンディショニングトレーニングであり、優先順位の低いトレーニングと言えます。

▶スピード向上プログラム part3に続く。

(解説・殖栗正登

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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