Column

投球後のコンディショニング

2012.10.30

ピッチング後のコンディショニングは痛みの有無で変わる

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

投手が投げ終わった後に、肩や肘をアイシングしている姿はさほど珍しいものではなくなりました。甲子園大会では必ずといっていいほど、投手がアイシングを行いながらインタビューの受け答えをしている光景が見られます。
アイシングは疲労回復の目的や痛み・違和感を広げないようにするための対策として取り入れられていますが、今回は、投球後のコンディショニングについて考えてみたいと思います。

アイシングについては「必ず行う」という選手や「関節や筋肉が硬くなるから行わない」という選手など、個人によってさまざまです。何事においてもメリット・デメリットがありますので、そういったことを理解し、何を優先させるかがポイントになります。メリットとしては患部の炎症症状、痛みの感覚を抑えること、デメリットとしては筋肉や関節部分が冷やす前に比べて硬くなるため、しばらくの間は動かしづらいことや、局所の血流が抑えられるため、治癒促進効果が遅くなってしまうことなどがあげられます(詳しくは「投げた後に氷で冷やすのはなぜ?」を参照)。

アイシングを行う場面として考えられるのは、
1) クーリングダウン:痛みはなくても熱感や組織内に細かな損傷があるのでこれを放置せず、疲労を回復させる(ケガ予防)
2) 外傷後の応急処置:ケガをした際に起こる炎症がなるべく広がらないようにする。痛みの軽減(RICE処置
3) リハビリテーションの補助:患部を動かした際に起こる微細ストレスや炎症症状を軽減し、早期回復を目指す
といった場合です。

アイシングを取り入れるかどうかは個人にゆだねることが多いのですが、
●過去にケガをした部位がある場合はアイシングを勧める
●現時点で痛みがある選手は「必ず」行うようにする
●リハビリテーションの過程で起こる痛みに対しては、リハビリテーション後に行う
●痛みはないけど疲労の蓄積がある場合は、いつもよりも短めにアイシングを行う
といったことをアドバイスしています。


ジョギングで血流を良くし、疲労回復に努めよう

ではまったく痛みのない選手の場合はどうすればよいでしょうか。これは日頃からアイシングを行ってみて、翌日のコンディションをあらかじめ確認しておく必要があると思います。
アイシングをして「筋肉がかたまった感じがして動きづらい」と感じるようであれば、アイシング以外の方法を試していけばよいと思いますし、「特に変わらない」「疲労感が軽減された」と感じるようであれば、続けてみるとよいでしょう。

肩周辺部の筋肉についても、定期的にトレーニングを行うことをオススメします。特に関節の近くで働く筋肉(いわゆるインナーマッスルと呼ばれる小さな筋肉群)を動かすことは、局所の血流をよくして疲労回復につながるだけではなく、筋肉そのものの強化にもなります。これも投球前に行うほうがいいという選手、投げ終わった後に行いたいという選手がいますので、ぜひ自分にあったタイミングで行うようにしてみてください。投球前に行うメリットとしてはインナーマッスルを引き締めて肩の安定性を高めること、投球後に行うメリットとしては、局所の血流をよくして疲労物質を取り除く効果が期待できることなどがあげられます。またインナーマッスルは小さな筋肉なので、投球前後どちらともにトレーニングを行うことも可能です(実際のトレーニング方法については「正しくインナーマッスルを鍛える」を参照)。

もう一つ取り入れてもらいたいコンディショニングとしては、クールダウンを兼ねたジョギング・ランニングを習慣化してほしいということです。肩や肘に痛みがある場合についても、アイシングによって局所の血流は抑え、疲労回復には全身の血流を促進させることが不可欠です。なるべく時間をかけて仲間と話しながらでもいいのでジョギングを行い、ストレッチをしてから練習を終えるようにしましょう。

【投球後のコンディショニング】
●アイシングのメリット・デメリットを理解する
●投球後に痛みがあれば炎症と痛みの軽減を優先してアイシングを行う
●普段から投球後のコンディショニングについて、いろいろと試してみる
●肩関節を内部で支えるインナーマッスルを鍛える
●投球前と投球後でインナーマッスルのトレーニング意義は変わる
●クールダウンを兼ねたジョギングを行い疲労回復につとめる

(文=西村 典子

次回、第56回公開は11月15日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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