試合レポート

美里工vs宮古工・伊良部連合

2012.09.11

美里工vs宮古工・伊良部連合 | 高校野球ドットコム

宮古工・伊良部連合

沖縄県高校野球史上初の連合チームは、ほろ苦さの中にも達成感が見られた

沖縄宮古工業高校は2011年の秋季と2012年の春季、伊良部高校は2012年の春季で、共に部員不足という事情から県大会不出場を余儀なくされた。最後の夏は両校無事出場したものの、3年生の引退後に待っていたのはまたもや部員不足。離島の抱える一番の課題といっても過言ではないだろう。だが今回は両校の合同チームという形で出場を認めようという高野連の粋な計らいで、沖縄宮古工業高校の7選手と伊良部高校の6選手が晴れて秋の県大会の舞台に立つことが出来た。
とはいえ宮古島と伊良部島では簡単に集うことも出来ないだろう。合同練習もままならないままぶっつけ本番的な側面も予想されたが何の何の。試合序盤はその合同ナインの大健闘が光った。

エンジ色のアンダーシャツに純白が映える沖縄宮古工ナインと、縦縞の伊良部ナインが一緒に整列。守備に着いた沖縄県高校野球史初となる連合ナインに、球審のプレイという声と開始を告げるサイレンが高らかに鳴り響いた。

注目の試合序盤は合同チームの健闘が光った

先発のマウンドを預かったのは崎原拓海(沖縄宮古工1年)。目を見張るようなストレートは無いが、175cmの長身をさらに生かすようにグローブを高く上げて一気に振り下ろしていく。先頭打者をピッチャーゴロに打ち取ると緊張感がいくらか解けたのだろう。以下レフトフライ、ファーストゴロと三者凡退に斬って取る最上のスタートを切った。

2回表はニ死二塁でショートゴロ、3回表には一死一・三塁と攻めたてられるがここもショートゴロに打ち取り、三塁走者を三本塁間で挟殺するなど粘投でゼロを並べていく。

するとその裏、ショートへの強襲ヒットとライト前ヒットで塁を埋めた合同チーム。しかし次打者ショートゴロとなるが、併殺を焦った送球がライトへ転がる悪送球となる。これで一死満塁と思ったのだが併殺を逃れた一塁走者が二塁ベースをオーバーラン。三塁ベース上にいる走者を見て慌てて戻ろうとしたが、美里工のライトがこれを見逃さずショートへ転送。ランダンプレーに押し出されるようにしてホームへ走った三塁上にいた走者を挟殺した。合同チームにとっては何とももったいないプレーではあったが、これも普段集えないことからくる薄くならざるを得ない意思疎通の、一つの悲しさなのかも知れない。


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美里工先発 伊波友和

ようやく目覚めた美里工打線

大会抽選直前の8月28日から9月2日まで神奈川県遠征に出掛けていた美里工ナイン。藤嶺藤沢横浜横浜隼人慶應義塾らそうそうたる強豪の胸を借りて精力的に動きこの日に備えた。

だが蓋を開けてみたら3回を終了して0ー0。美里工神谷嘉宗監督は
「動きがね。固かったよね。大会初戦(の緊張)ということもあったのだけど、ここまで詰め込んできたから、まだ(疲労が)抜けきれていないみたいだね。」
と語ったように、工業高校大会や先の神奈川遠征など、中身の濃い夏休みを過ごしてきた分、特に1年生にとっては今まで経験したことのない疲れはあったのだろう。しかし3回裏のピンチで逆にようやく目覚める。4回表の一死後から、5番花城航の右中間突破三塁打を皮切りに怒涛の6連打が飛び出し大量5得点を奪うと、5回以降も着実に得点を重ねて7回コールド勝ちを収めた。

投手陣も先発の伊波友和宮城諒太島袋倫の1年生トリオの全員を投げさせることが出来たことは2回戦を見据えた上でも良かっただろう。序盤は健闘の連合チームも4回以降は意気消沈しノーヒットだったのは残念だったが、喜瀬民男監督も「結果はともかく試合が出来たことは彼らにとっても良かったでしょう。(再び合同として)あり得るかも知れませんね。」とナインの気持ちを代弁した。

大会に出るために練習を積んでも、部員不足で出られないとなればつまらない青春の1ページにもなりかねない。結果はほろ苦いデビューとなったが、普段は違うチームに属している彼らの、試合後に共に写真に収まった精悍な顔つきを見ると、やりきった達成感にも似たものを感じることが出来たこの日であった。

(文=當山雅通

美里工       宮工・伊良部
守備位置 氏名 打順 守備位置 氏名
右翼 松堂 正 1番 遊撃 本村泰樹
中堅 神田大輝 2番 一塁 渡久山尚紀
左翼 島袋 優 3番 中堅 川田 諒
三塁 高江洲大夢 4番 捕手 善平丈一朗
一塁 花城 航 5番 三塁 木下勝利
遊撃 内間幹也 6番 二塁 根間 翔
二塁 比嘉恵次郎 7番 右翼 新里隆介
投手 伊波友和 8番 投手 崎原拓海
捕手 與那嶺 翔 9番 左翼 渡久山伸太郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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