那賀vs日高中津

強攻、強攻！

昨秋、県優勝の那賀が序盤の猛攻で主導権を握り、追い上げる日高中津を振り切った。

0対0で迎えた2回表の那賀の攻撃。1番の小槙進介(3年)が四球で出塁すると、2番の才力雅仁(3年)が打席に向かった。セオリー通りなら、ここは送りバントとなるはずだが、構えはヒッティング。
カウントが2ボール0ストライクになってもサインは同じだった。

「バントは考えていませんでした。才力は打力もあるし、足も使える。だから打って繋いでいこうと。練習試合でも同じケースでバントはさせていません」

高津亮監督の信頼通り、才力は3球目のストレートを思い切り振り抜いた。打球はセンターを深々と破り、二塁打。小槙が生還し、喉から手が出るほど欲しかった先制点を挙げた。

4回にも同じような場面があった。先頭の高島紘輔(3年)が内野安打で出塁すると、迎えた毛利昴人(3年)も初球を強いライナーでレフトに運び、後ろの打者に繋いだ。
「相手が前進シフトを敷いてくるのが分かったので、引っ張らずにショートの頭の上を越える打球を打とうと心掛けました」という毛利の理想通りの当たりだった。
無死・一、二塁とチャンスが広がり、ここから3点を加えることになる。
「これまでの（和歌山大会の）2日間の試合を見ていて、どのチームもまだ打線が爆発していないと思ったんです。だから、良い意味で攻撃からリズムを作りたかった」と話した高津監督。

もちろん、全くバントをしていないわけではない。必要な場面ではきっちり犠打を決め、スコアリングポジションに走者を進めている。
犠打だけでなく、ここという場面できっちりヒットを繋いで得点に結びつけられるのはそれだけ指揮官と選手との間に信頼関係が築き上げられているということだ。

昨秋、那賀は県大会で優勝を果たしながら近畿大会の初戦で水口に0対2で敗れた。当時、最も打率が低かった才力は、打撃の非力さを痛感し、冬場に1日1000スイングを日課にしてバットを振ってきたという。
「気がつけばバットを振っているという感じでした。でも打たないと夏は勝てない。今までやってきたことの成果が少しでも出たのかも知れないです」と胸を張った。

“攻撃型”野球で初戦を突破したが、まだ先は長い。この先も独自のスタイルを貫き、頂点を目指す。

スターティングメンバー
【日高中津】
2兼氏尊史　
6宮戸涼介　
5夏見宏季　(主将)
3井上翔太　
9稲森柊介　
8井原雄飛
4新田雄規
1杉本篤史
7佐藤良樹

【那賀】　
5小槙進介　(主将)
6才力雅仁
3北野智大
1福井真元
7岩崎淳史
9高島紘輔
2毛利昴人
4山本祥
8河﨑大起

(文＝沢井史)