Column

重心移動~下半身編~(8)

2012.07.10

久保田正一本気の心技体

『運動学・解剖学的観点から考えた投球フォーム、重心移動~下半身編~(8)』

 沖縄、北海道を皮切りに夏の大会が開幕し、全国ではすでに『高校野球』を終えた球児がいます。『高校野球』で何を学んだのか?それはこれからの人生で活かされます。いや、活かされるかどうか?結果論で考えるのではなく、やはり『高校野球』をしていたときから『高校野球』が終わった後のことまで考えて『高校野球』をしていたのか?ということが重要であると思います。そうです、いつも言っている『目的意識』(コラム第4回参照)です。

 まだ野球を続ける選手もいれば、野球を辞める選手もいるでしょう。選手として野球はしないけど、指導者やサポートする側として関わり続ける選手もいるでしょう。これからそれぞれの道を歩んでゆく。必ず『高校野球』をやったことを今後に活かしてほしい。誇りに持ってほしい。たくさんの人に『高校野球』の素晴らしさを伝えてほしい。ただそれだけを願います。

 前回は正しいスクワットを説明させて頂きましたが、今回は投球動作に繋がるスクワットを説明したいと思います。

 前回の復習をさえて頂くと、重要なのは股関節をしっかり使って(曲げて)スクワットできているか。それと背筋です。猫背のように背筋が曲がらないように真っ直ぐした状態でスクワットしなければなりません。それを踏まえた上でこれからのスクワットをして頂ければと思います。

 少し投球動作に話を戻しますが、現在の話の流れは重心移動。軸足で支えた状態で投球方向に重心移動している時の話でした。だから重要なのは軸足での支えです。軸足でしっかりとした支えがあるから下半身の力を骨盤から上への回転動作に繋げることができるのです。


 そこでスクワットの話に戻しますが、軸足でしっかりと支えるために、一回スクワットの姿勢をとった後に、軸足(右投げであれば右脚)に体重をかけていきます。(写真(1))軸足に10、全体重かけることから始めます。高校生であれば支えることができるかもしれませんが、小中学生はこの時点でフラフラする選手もいるので、その場合はどれくらい体重をかけてトレーニングを行うかが選手によって変わってきます。


写真(1) 一回スクワットの姿勢をとった後に、軸足に体重をかける

 そして全体重をかけたなら、その状態から踏み出し足(右投げなら左脚)を上げます。(写真(2))この片脚スクワットでまずは正しい姿勢でのスクワットからの片脚スクワットに移行していきます。いきなり片脚スクワットをしてもいいのですが、何度も言うように正しい姿勢でしなければ全く意味がありません。段階的に少しずつ行っていきましょう。


写真(2) 踏み出し足を上げまる。


 そして次に片脚スクワットでの応用編に移るのですが、ここで注意して欲しいのが、踏み出し足(右投げであれば左脚)の状態です。通常片脚スクワットは写真のように上げた足を後ろに上げる場合がほとんどです。(写真(3))別にこの動作が必要なトレーニングであれば、この片脚スクワットでも構わないのですが、今は投球動作、中でも重心移動のためのトレーニングです。重心移動の際に踏み出し足を後ろへ上げることはありません。


写真(3)


 
 そこで踏み出し足を前に上げた状態での片脚スクワットが重要になるのです。(写真(4))しかしこの片脚スクワットは『猫背になり易い』という注意点があるのです。踏み出し足を上げると、どうしても骨盤は後ろへ回転し、猫背になろうとします。(写真(5))しかし踏み出し足の股関節と支持している軸足の股関節をしっかりと曲げることができれば骨盤は後ろに転がることなく、正しい姿勢で片脚スクワットを行うことができます。


写真(4)踏み出し足を前に上げた状態での片脚スクワットが重要


写真(5)

 重心が後方(背中側)のまま重心移動をしている選手をよく見ます。このような選手は踏み出し足を前に出した状態で、軸足の股関節を曲げることができないことが原因の場合がほとんどです。

 軸足の蹴りを使って骨盤を回転させることで腕の振りの力を出す投球動作をしたいなら、軸足に重心がしっかりと乗っている状態で重心移動する必要があります。

 次回は今回説明した片脚スクワットを投球動作のどこで利用するのか?正しい重心位置での投球フォームを説明させて頂きます!

 さ~熱い夏の戦いが始まります!今年は何試合観戦し、何人の投手を分析することができるでしょうか?(笑)

(文・写真:久保田 正一) 

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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