試合レポート

早稲田摂陵vs春日丘

2012.07.14

ワクワクした2時間54分の激闘

イニングスコアを見ても、先が読めないワクワクするような展開だったが、決着は得点が入ればゲームが終わってしまう9回裏に訪れた。

じゃんけんに勝って後攻だった早稲田摂陵の9回。一死から、7番佐伯光陽(3年)が2球目をファウルするが、これが打撃妨害になって出塁する。
続く8番はこの日2安打3打点の佐藤陽史(2年)だったが、入道美之監督は送りバントの策をとった。
佐藤が送り、二死二塁。大阪春日丘の三番手・今北紘陽(2年)に対し、声をかけるバックの3年生野手陣。
だが、今北は9番眞木大介(2年)をストレートの四球で歩かせてしまう。そして1番佐久間徹(2年)に対しても、初球のファウルの後、ボールが4球続き満塁となってしまった。
そして2番出口裕貴(2年)の初球、短く持ったバットが振りぬかれ、打球は一塁線を破った。
2時間54分の激闘。粘りに粘った大阪春日丘だったが、ここで力尽きた。

泣き崩れるピッチャーの今北。キャッチャーでキャプテンの川本竜(3年)もあふれる涙を抑えきれなかった。
「ミスがねぇ・・・」と肩を落とした神前俊彦監督。
2年生投手に、献身的に声をかけ励まし続けてきたキャプテンも、知らず知らずのうちに気持ちが前に出すぎていた。結果的にはそれが痛恨の打撃妨害になってしまった。
キャプテンの姿には、その悔しさがみじみでていた。


勝敗につながったのは最後の場面ではあるが、神前監督は、「立ち上がりの差」と敗因を挙げた。
早稲田摂陵は佐藤、大阪春日丘は最近の調子が最も良かった新田雄大が先発のマウンドに上がった。両投手に共通するのは、2年生だということ。

『3年生にとって最後の大会』
そのマウンドを任される2年生投手。その重圧は計り知れないものがあるだろう。

立ち上がり、両投手は好対照だった。佐藤は第1球でストライクを取り、三者凡退でベンチに戻ってきた。
逆に新田は、1番の佐久間をストレートの四球で歩かせてしまう。2番出口は送りバントを仕掛けるが、処理をした新田が悪送球。取れるべきアウトを取れず、動揺した表情を浮かべていた。
タイムを取って伝令を送った指揮官。バックを守るのは全て3年生。マウンドを託した2年生を献身的に盛り立てる。
しかし送りバントで一死二、三塁となったあと、4番福川祐成(3年)に二塁打を浴びて2点が早稲田摂陵に入った。
「送りバントの時の守りが一番大事だぞと常に練習をしていた。(送りバントは)相手がアウトを一つくれるのだからと常に言っていたが、それができなかった」と話した指揮官。

それでも、まだ1回が終わったばかり。打撃に自信を持っていたチームだ。2回に4番の川本がレフトへ一発を放ち、反撃を開始した。
しかし、イニングスコアを見てもわかるとおり、同点にまでは追いつくが、逆転をしきれなかった。
神前監督は「マラソンと同じですよね。先頭を走るランナーに追いつくが、最後には引き離されるような」とゲームを例えた。

ただ、この1年積み重ねてきた攻撃力は見事に発揮した。
“たられば”は禁物だが、もしサヨナラゲームがなくて、もう1イニング攻撃できていたのなら、追いついていたように思える。
それだけ見ている人たちをワクワクさせてくれるゲームだった。

3年生にとってこのゲーム(高校野球)の延長戦はないが、人生ではまだまだ先のイニングの方が遥かに長い。同点、逆転にできる機会はまだ何度もあるはずだ。

スターティングメンバー
【大阪春日丘】
6柴田一路
9畔取大輔
3尾島将吾
2川本竜 (主将)
8赤坂優志
7油谷逸希
4藤岡敦也
5岡本和也
1新田雄大

早稲田摂陵
7佐久間徹
4出口裕貴
8吉岡頌平 (主将)
2福川祐成
9北原尚希
3小松駿佑
6佐伯光陽
1佐藤陽史
5眞木大介

(文=編集部)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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