Column

県立中部商業高校(沖縄)

2012.04.27

野球部訪問 第63回 県立中部商業高校(沖縄)

 2002年夏に初めて甲子園に出場し、2004年にも2回目の甲子園出場を果たした中部商昨年(2011年)の夏は、沖縄大会で決勝まで勝ち残った。惜しくも1点差で敗れたが、その時の主力が現チームにも数名残っている。
 今年3月末で、これまで中部商を率いてきた盛根一美監督が定年退職し、後を引き継いだのが、部長を務めてきた宮城隼人監督。
 宮城監督は、母校でもある浦添商や、八重山商工でも指導者としての勉強を積んできた。そんな宮城新監督の目指すこれからの中部商の野球とは?また、この夏の思いを語っていただきました。

3人の名監督から学んだもの

“中部商業の監督してこの4月から就任した宮城隼人監督”

 宮城監督は、浦添商を卒業後は名桜大に進学。2003年に母校に教員として戻ってきた。

「のちに甲子園でベスト4(2010年)まで行った神谷嘉宗先生の元で3年間勉強させて頂きました。見習いという感じでしたね」

 その後、石垣島に渡り、八重山商工に赴任。そこで、伊志嶺吉盛監督と出会った。宮城監督が赴任したその年に、八重山商工は九州大会で準優勝した。当時は、エース大嶺祐太(現・千葉ロッテ)を擁していたチームで、春と夏の甲子園に連続出場を果たした。

 3年を経て、その後、中部商への異動。そこでは、沖縄高校野球の名将の一人である盛根監督のもとで、部長として3年間務めた。そして、この春より、同校の監督に就任した。

 宮城監督は、商業科の教諭であるため、基本的には同科のある学校にしか回らない。そう考えると、「運良く、この道に行くようになっているのかな」と宮城監督は振り返る。
 甲子園で勝利した経験がある師の下で学び、宮城監督はそれぞれの監督から、多くのことを学んできた。

「神谷先生からは『勝利への執念』を教えて頂きました。目標達成するにはどうすればよいかの前に、まずそれを達成する気持ちを持っているのか。選手たちの気持ちを高める指導をされる。そして、次に『甲子園優勝』という目標を掲げたら、そのためにどうすべきなのかというのを明確的にし、そこに対しての練習を徹底的に行なっていました。今でもその考えは僕の中で生きています」

 八重山商工の伊志嶺監督の指導では、こんなことに驚いたという。
「ふつうは、『雨に濡れたら着替えなさい』と言うけれど、八重山商工の場合は着替えないんです。それは、試合中であれば雨に濡れても、すぐに着替えられる状況じゃないっていうのもあっての指導だったと思うんですけど、そういった部分ではじめは驚きました。また、ウォーミングアップもそんなにやらないで、すぐに練習を始める。あまりにも、(母校であり前任校の)浦添商と違っていたので、最初は正直『いいのかな?』と思いました。同じ高校野球でも何でこんなにも違うのだろうか?というカルチャーショックがありましたね」

 それでも、伊志嶺監督が鍛えたチームは、県内だけでなく甲子園でも勝ち続けていった。
「伊志嶺監督の指導からは、なにより『根性』が大切だと学びました。八重山商工は、練習量が半端じゃ無くて、朝5時半から練習が始まるんです。とにかく練習、練習。
 また、身体を強くするために、色々な種類のトレーニングがあるんですが、どれも、実際に野球をしながらトレーニングに結びつけていくんですよね。だから腹筋や背筋といった(基本的な)ことをやっているのを見たことが無いですね。そうやって作り上げたチームで、全国でも勝つことができる。自分にとっては驚かされることばかりで、とてもいい勉強になりました」

 その後の中部商での盛根監督の教えも含め、宮城監督は指導者としての基礎を9年間で培ってきた。

[page_break:今後、目指していく中部商野球とは?]

今後、目指していく中部商野球とは?

“元気のいい中部商業のナインたち”

 2012年3月、春季沖縄県大会でチームは初戦敗退。その後、4月1日より、正式に宮城監督が中部商野球部監督に就任した。これからどんなチームを目指していこうと考えているのか。

「打てなくても、点を取れるチームになっていければと思います。相手のピッチャーが『こういうチームが嫌い』と思うようなチームを目指したいですね。打てなくても走塁を鍛えて、塁をかき回すチームを作り上げたいです」

 その根幹になる部分を宮城監督はこう付け加えた。

 

「軟式野球でプレーすると感じることなんですが、軟式だとあまり打てないんですよね。そこで、何で勝負するかと考えると、やっぱり走塁とか、打てない中でいかに点が取れるかということを考えていくわけです。
例えばリードを大きく取れば、ピッチャーがバッターに集中するのを削ぐことができる。だからそういったリードの面から、考えていきたいんですよね。とにかく、ヒットエンドランとか、相手の守備を動かして、こちらのペースに持ち込む野球がしたいですね」。

昨夏準Vの記録を超えたい

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“声を出す選手陣”

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 昨夏、中部商沖縄大会決勝戦まで進んだが、実は昨春の県大会初戦ではコールド負けを喫している。そのため、夏はノーシードとなったが、そこからの快進撃をみせた。

 宮城監督は話す。

「この春も初戦で負けて、あらためて『お前たちの目標は何なの?』と聞いたら、『最低でも甲子園』。最高で『甲子園で優勝したい』という声があがったんです。だから、最低でも沖縄で1位にならなきゃいけないんですよね。
 生徒たちがそれほどの熱意を持っていて、最低でも甲子園に行くための取り組みをしていく覚悟があるんだと伝えてくれたので、僕らもそれを達成できるための指導をしていきたい。この春から新しい職員(コーチ)に、那覇商業の監督をされていた平良隆訓、宮古総合実業から転勤となった宮里友也(新規採用)、外部コーチの宮里豊の4名で選手を引っ張っていきたいと考えています」

 そんな宮城監督について、選手たちはこう語った。

 「監督は部員との距離が近い存在でいてくれるので、提案もしやすく、僕らが力を発揮しやすい雰囲気をつくってくれます。秋と春に結果を残せなかったけど、夏は全員が一つになれば、どこのチームにもチャンスがあると思うので頑張っていきたいです」(牧田啓佑主将)

 投手陣の柱は、山城和也投手。さらに、クリーンナップ3番・亀川盛斗選手、4番・森根清也選手、5番・備瀬稜也選手が並ぶ。ここに夏に向けて、チーム全体で走力も磨いて、さらに高い攻撃力を備えていきたいところ。

 6月中旬に夏の大会が始まる沖縄。気がつけばもう2カ月を切った。夏が初采配となる新監督の問いかけに、選手が応える。新しい中部商の野球スタイルに注目だ。

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(取材・構成=編集部

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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