試合レポート

明徳義塾vs高知中央

2012.04.05

明徳義塾vs高知中央 | 高校野球ドットコム 

明徳義塾先発・福丈幸(3年)

知略策略が飛び交った前哨戦

 2002年夏の全国制覇はじめ、甲子園出場22回(春10回・夏12回)で通算37勝21敗(歴代6位)。四国、いや全国でも屈指の名将として知られる明徳義塾・馬淵史郎監督。

一方過去に、関西(岡山)、沖縄尚学(沖縄)、岡山県作陽(岡山)で監督を歴任し、関西沖縄尚学では甲子園出場8回(春5回・夏3回)。俊足を誇る比屋根渉(東京ヤクルト)、伊志嶺翔太(千葉ロッテ)など、特色を持った選手育成に定評のある高知中央・角田篤敏監督。この百戦錬磨の士が一塁側、三塁側ベンチに控える準決勝では、知略戦略が飛び交う戦いが繰り広げられた。

試合後の表情もその雰囲気がそこかしこに見られた。
「力の半分も出ていない。もうちょっといい試合ができると思ったが・・・」と眉間に皺を寄せたのは勝った3年ぶり14度目の決勝進出を収めた明徳義塾・馬淵監督。指揮官の不満はごもっともである。

例えば打で言えば、3回表の先制点は2番・今里征馬(遊撃手・3年)の内野安打。4回表の2点目は7番・大西輝幸(右翼手・3年)のスクイズと、さすがの細かい野球が光った反面、一塁手の西岡貴成、左翼手の宋皞均(ソン・ホキュン)といった2年生4・5番の状態は今イチ。前後に走れる選手がそろう中で、2年生中軸の責任感、意識改革が課題となって露呈した形になった。

加えてこれが今大会4試合中3回目の先発となった福丈幸(3年)も「疲れあって体が流れる」(馬淵監督)バランスの悪さもあり、ストレートのスピードは131キロ止まり。持ち前の投球術が要所で冴えて完投勝利は収めたが、春先は制球力が定まらなかった大型左腕・小方聖稀(2年)の復調、右肩痛が完全に癒えず春季大会は登録外となったサイドハンド・福永智之(3年)の復帰までは、しばらく孤軍奮闘が続きそう。「甲子園に出たらベスト8までいくチームを作る」名将のプランはまだ半ばにあることがうかがわれた。


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3回表の先制内野安打含む4打数3安打の明徳義塾2番・今里征馬(遊撃手・3年)

対して「課題が色々見えた」と明るい表情を浮かべたのは高知中央・角田監督。注目大型右腕の田川賢吾(3年)は先発回避。まずは彼を後々ダメージを残す、明徳義塾特有「持球戦」から回避させるミッションをこなした上で、なおかつ7回からマウンドに上げ、相手打線の特徴を実戦を通じ学ばせることにも成功。

「気持ちが引いてしまった」と指揮官が評した打線も相手の9安打に迫る8安打を放つなど、「足にやられた」一点を除けば、全てに力の差を感じたこれまでの対戦からは格段の進歩が見られた敗戦だったといえよう。

ただ、これはあくまでの現時点の評価。2年前の明徳義塾は5月から7月にかけて急激な伸びを示した例もあるし、高知中央は個のポテンシャルは高いとはいえ、その領域はいまだ未開発の部分が多い。では夏の高知県覇権獲得へ向け、両指揮官は今後どんなタクトを振るっていくのか?実に楽しみである。

はたして今回の前哨戦がどんな収穫をもたらしたか、その結論は夏の高知大会で導き出されることだろう。

(文=寺下友徳)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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