試合レポート

浦和学院vs三重

2012.03.27

エース三浦、涙の2失点

 試合後の通路下。指名選手としてお立ち台に上った三重のエース・三浦浩太郎(3年)は、溢れる涙を抑えられないでいた。。
「自分が点さえ与えなければ、まだ戦っていた・・・」と絞り出すように発した背番号1。。
6回まではノーヒット。沖田展男監督が、「絶好調だった」と讃えたほど、三浦の気合十分のピッチングは、浦和学院打線を完璧に封じていた。

だが浦和学院のエース・佐藤拓也(3年)も負けず、味方打線は三浦を援護できない。よどみない流れの、緊迫した投手戦で試合は終盤に入った。

7回、先頭の3番佐藤がチーム初ヒットとなる二塁打を放つ。この辺りから浦和学院打線が牙を向き始めた。徐々に力みが見られ投球フォームが崩れがちになる三浦は制球が安定しなくなっていた。沖田監督はジェスチャーを交えながら「力を抜け」と指示を送ると、このピンチは何とか凌いだ。

しかし8回、先頭の9番緑川皐太朗(3年)を四球で歩かせ、再びピンチを迎える。1死後、2番林﨑龍也(3年)が送りバントを決めて2死2塁で打席は佐藤。。
キャッチャーの小林大輝(3年)はベンチの指示もあり、佐藤と勝負しない策を選んだ。。
「ここまできたら1点勝負」と口を揃えるバッテリー。走者を溜めることになるが、『1点も2点も同じ』という強い意志の表れだった。。
佐藤を歩かせ1、2塁となって打席は4番笹川晃平(3年)。

バッテリーはこの笹川に全神経を使って勝負に挑んだ。
ボール、ストライク、ボール、空振り、ファウルでカウントは2ボール2ストライク。。
6球目、三浦が渾身の力を込めて内角へ投じた球が、笹川の体に当たった。帽子を取った三浦の表情は、明らかに悔しそうだった。打者を追い込みながら、痛恨の死球。


満塁となって初戦の8番からこの日は5番に上がった山根佑太(2年)が打席へ。。
「最初から思い切って振っていけ」と森士監督から指示されていた山根。小林はマスク越しに「振ってくる」と読み、ウラを突いて打ち気を逸らそうと考えていた。

三浦が投じた初球、小林の読みは当たった。しかし、ほんの少しだけコースが甘くなった。これを逃さずバットを振り切った山根の打球がライト前へ落ち、二人が生還。待望の先取点が浦和学院に入り、結局これが決勝点となった。
「自分としては悪くない球だったように思う」と打った打者を讃えたのはキャッチャーの小林。三浦は「(打たれてしまう)自分の弱さ」と唇を噛みしめた。

終盤に三浦に見られた力み。浦和学院の打線がそこを突いた形だが、力みにつながる伏線は6回2死からの四球にあったように思える。
それまでパーフェクトピッチングだった三浦が、9番の緑川を歩かせてしまった場面だ。ボール3となりながら、ストライクを2つ取って、フルカウント。6球目、三浦のスライダーは絶妙なコースで、緑川は手を出せなかったが、わずかに低く判定はボール。ストライクの確信があり、ベンチに帰りかけた三浦はその判定に、少しだけ体制を崩した。

「あそこでバランスを崩したとかはないです」と本人は影響を否定したが、次の1番竹村春樹(2年)にも四球を与えるなど、若干の動揺があったのではないだろうか。ほんのちょっとしたメンタルの変動が、勝敗の分かれ目だったように思える。
しかし三浦のピッチングに関する質問に丁寧に答えていた小林は最後にきっぱりと言い切った。
「野球は点取りゲーム。三浦がどんな良いピッチングをしても、得点できないとやっぱり勝てない」。
他の選手も、打てなかった自分たちに責任を感じ、見殺しにしてしまったエースを庇っていたのが印象的だった。

(文=松倉雄太)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.09

【熊本】九州学院は城北と文徳の勝者と対戦<NHK旗組み合わせ>

2024.05.09

プロスカウトは190センチ超の大型投手、遊撃手、150キロ超右腕に熱視線!この春、浮上した逸材は?【ドラフト候補リスト・春季大会最新版】

2024.05.09

「指導者はどこにいる?」九里学園(山形)が 選手主体の”考える野球”で成果着々

2024.05.09

【新潟】日本文理、開志学園、帝京長岡、関根学園が4強<春季県大会>

2024.05.09

【北海道】駒大苫小牧がコールド発進、立命館慶祥、知内も勝利<春季全道大会支部予選>

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.06

【2024年夏 全国地方大会シード校一覧】現在27地区が決定!

2024.05.06

センバツV・健大高崎は夏も強い! Wエース抜きで県大会優勝、投打に新戦力が台頭中!

2024.05.06

【関東】山梨学院と常総学院がそれぞれ優勝、出場校の対戦が確定<春季大会>

2024.05.06

【春季埼玉県大会】花咲徳栄4回に一挙10得点!20得点を奪った花咲徳栄が昌平を破り優勝!

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.21

【兵庫】須磨翔風がコールドで8強入り<春季県大会>