第64回秋季東北地区高等学校野球大会総括(下)
第64回秋季東北地区高等学校野球大会総括(下)2011年11月03日
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[目次]
1.2試合連続のサヨナラ勝ちを決めた花巻東などが準決勝へ
2.大会はクライマックスに突入
3.諦めない姿勢が際立った大会
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2試合連続のサヨナラ勝ちを決めた花巻東などが準決勝へ
花巻東・小原大樹
10日も2球場で、準々決勝2試合ずつが行われた。
こまちスタジアムの第1試合は酒田南-光星学院。試合序盤は0-0だったが、4回裏、光星学院の攻撃で試合は動いた。先制点は押し出し四球。さらに、一塁手の野選で2点目。なおも一死満塁で1番・天久翔斗(2年)がレフト左に2点タイムリー。2番・村瀬大樹(2年)のバントを酒田南の先発・会田隆一郎(2年)が送球エラー。一死満塁で3番・田村龍弘(2年)が右中間へ2点タイムリーを放って畳み掛け、5回にも相手の失策や田村の2点タイムリーなどで4点を加えた。来年のドラフト候補を擁するチーム同士の戦いで接戦が予想されたが、終わってみれば、光星学院が10-0の5回コールドで酒田南を下した。
2試合目は花巻東-学法福島。昨年は初戦で対戦し、4-3で学法福島が勝利していた。花巻東にとってはリベンジマッチ。しかし、花巻東は1回表にいきなり先制を許してしまう。学法福島の谷地哉耶(2年)を打ち崩せず、1-0のまま試合は進んでいった。逆に、学法福島も初回の1点のみで、その後は花巻東の好守に阻まれてゼロ行進。そして、8回裏、花巻東は佐々木隆のタイムリーヒットで同点に追いつくと、9回裏、一死二塁でキャプテンの大沢がセンター前へサヨナラヒット。花巻東は2試合連続のサヨナラ劇で準決勝に勝ちあがった。
[stadium]八橋球場[/stadium]では聖光学院が東海大山形に6-0で、青森山田が古川学園に6-2で勝利し、準決勝に進出した。
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[目次]
1.2試合連続のサヨナラ勝ちを決めた花巻東などが準決勝へ
2.大会はクライマックスに突入
3.諦めない姿勢が際立った大会
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大会はクライマックスに突入
光星学院・城間竜兵
東日本大震災から7ヶ月目の11日。こまちスタジアムで準決勝2試合が行われた。
第1試合は今大会屈指の好カード、光星学院―花巻東。1回表、光星学院は2死無走者から3番・田村龍弘(2年)がレフトスタンドへソロアーチをかけ、先制した。この流れで行くのかと思われたが、その裏、花巻東は、準々決勝まで2番を打っていた大沢が1番打者としてレフトへ二塁打を放って出塁。光星学院・仲井監督はここでいきなり、先発・伊藤裕貴(2年)から城間竜兵(2年)に代えた。一死二塁で、甲子園後、初のスタメン(レフト)出場の3番・大谷が左中間へタイムリーを放って、あっさり同点に追いついた。さらに四球と安打で一死満塁。6番・田中大樹(2年)の打球は、なんと、レフトスタンドへ吸い込まれていった。逆転のグランドスラム。4回には二死一塁で大沢が右翼線にタイムリーヒットを放って突き放した。
光星学院も黙っていない。5回。打者一巡で3得点。6回には一死二塁で田村がこの日2本目となるホームランを、またも大谷の頭上を越えるレフトへ放った。同点。
粘り強く、しぶとい花巻東はその裏、一死一、二塁でまたも、大沢がレフトオーバーの2点タイムリーで逆転したが、8回、光星学院は田村のサードゴロの間に1点を返し、さらに相手の失策で同点に追いついた。そして、9回。一死一、三塁で1番・天久のライト前ヒットで勝ち越し。シーソーゲームに終止符が打たれ、光星学院が2年連続の決勝進出を決めた。
2試合目は聖光学院―青森山田。1回表に聖光学院が3点を奪い、5回にも1点を加えた。青森山田は6回にタイムリーと犠飛で2点を返し、その後も小刻みにピッチャーを代えるも、聖光学院は8、9回にも1点ずつを加点。6-2で下し、聖光学院は4年ぶりの決勝に進出した。
12日は10時から決勝が行われた。光星学院―聖光学院。
先制したのは聖光学院だった。1回裏、1番・齋藤湧貴(2年)が光星学院・金沢湧紀(2年)の初球をレフトスタンドへ運んだ。しかし、4回、光星学院の反撃が始まった。一死から4番・北條史也(2年)がセンター前ヒット、5番・大杉諒暢(2年)がサードの失策で出塁。7番・城間が死球で二死満塁から8番・木村拓弥(2年)のセンターオーバーの2点タイムリーで逆転に成功。5回には北條のレフト前タイムリーで追加点を奪った。金沢は聖光学院打線を2安打に抑えて完封。投打のかみ合った光星学院が3年ぶりの優勝を飾った。
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[目次]
1.2試合連続のサヨナラ勝ちを決めた花巻東などが準決勝へ
2.大会はクライマックスに突入
3.諦めない姿勢が際立った大会
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諦めない姿勢が際立った大会
光星学院、3年ぶり3度目の優勝
今年の秋季東北大会で全17試合中、延長になった試合は2試合。サヨナラゲームは3試合。そして、逆転勝ちした試合は6試合だった。随所に諦めない姿勢が光り、最後まで食らいつく執念があった。
その中で、優勝した光星学院、準優勝した聖光学院は「新チーム」とは思えない戦いぶりだった。各々がやるべきことを理解し、遂行していた。バットを振る力もあったし、タイムリーがほしい場面でしっかりと還せた。投手力も、他校の一枚も二枚も上手だった。聖光学院の場合は、この秋を見据えてBチーム時代からしっかりと土台作りをしてきた賜物。光星学院は、前チームから中心だった選手もいるが、ベンチ外だった2年生もしっかりと練習を積んできた成果だ。両校ともただ強いから勝ったのではなく、「自分たちの代」になる前から準備をしていた結果がちゃんと出たように思う。
準決勝の後、聖光学院・斎藤監督は「夏も強い気持ちを持って臨みながら、(敗れた)無念さがある。震災は特別に意識している。震災から1年後にセンバツがあることは、意識した部分」と話した。光星学院・仲井監督は決勝の後、明治神宮大会に臨むにあたり、「東北の代表として、東北の野球が全国で通用するような試合をしたい」と意気込んだ。
前には進んでいるものの、復興には10数年かかると言われており、まだまだ時間を要する。東北に生きる人々は、それぞれの立場と役割の中で復興に向かっている。高校野球もその1つだ。例年、東北地方からは東北大会の優勝校と準優勝校がセンバツに選ばれている。斎藤監督が言うように、来春のセンバツの頃は、ちょうど、震災から1年。今大会の優勝校にも準優勝校にも「光」という字が校名に入っているのは偶然とは思えない。もし、来春のセンバツに出場することになれば、東北を明るく照らす戦いぶりを期待したい。
(文=高橋昌江)