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第93回全国高校野球選手権大会総括(2/3)

2011.08.25

第93回全国高校野球選手権大会総括(2/3)2011年08月25日

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【目次】

強打と粘り強さをみせた日大三と、光星学院の躍進

感動を与えた能代商業と、攻めのチームに転換した作新学院
花巻東・大谷、智弁学園・青山、山梨学院・小林…来年も逸材ぞろい!(近日公開!!)

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感動を与えた能代商業と、攻めのチームに転換した作新学院

第93回全国高校野球選手権大会総括(2/3) | 高校野球ドットコム

14年ぶりに初戦突破を果たした能代商(秋田)

 今年の出場校の中で、前評判を覆すほどの活躍を残したのは秋田の能代商業だった。これまで、秋田県勢は13年連続で甲子園の初戦で敗退していたが、今年14年ぶりに初戦突破を果たすと、2回戦では、英明に2対0で勝利。甲子園で2勝を挙げ、3回戦まで進出した。
 能代商業は昨年、鹿児島実業に15-0で惨敗した。その悔しさから「甲子園の借りは甲子園で返す」を合言葉に練習を重ねた。これまでの秋田代表のチームの印象というと、好投手を擁するが打撃力は低く、消極的な攻めも垣間見えた。しかし、一度全国のレベルを体感した能代商業は、鹿児島実業のスイング、打球の速さを肌で実感したことで、到達すべき攻撃の姿勢を学んだ。

 新チーム以降は、とにかくバットを振り、同時に基礎体力もつけ直してきた。そして、消極的な打撃から積極的な打撃へ。打てる球をしっかりと打ち、昨年には見られなかった打球も見られるようになった。そして、神村学園英明といずれもレベルの高い投手を擁するチームを破っていったのだ。
3回戦では如水館に延長戦の末、惜敗したが、攻守ともに積極的なプレーをみせ、甲子園の観客からは大きな拍手を送られた。
 また、エース保坂祐樹はこの一年間、ボールのキレを追い求めた。球速は昨年とほぼ変わらず120キロ台。最速で131キロ。数字に変化はなくても、昨年よりもキレのあるストレートが低めに、そして両サイドへと決まり、相手打者が振り遅れている場面が何度もあった。英明の主砲・中内大登が空振りを繰り返す姿を見て、スピードはなくてもコントロール、変化球の切れ、配球さえしっかりしていれば強打者でも抑えられるということを保坂は教えてくれた。


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打ち勝つ野球へ進化した作新学院

 また、49年ぶりに準決勝まで進んだ作新学院は、これまでの守備型のチームから殻を破った。作新学院といえば、投手を中心に守り勝つ野球が伝統でもあった。しかし、今年は柱となる投手が不在だったため、打ち勝つ野球への脱皮を図ったのだ。

 栃木大会ではその成果が表れ、予選6試合で59得点。甲子園でもまた、福井商唐津商八幡商、智弁学園といずれも投手力の高いチーム相手に打ち勝ってきた。

 もちろん、伝統でもある堅い守りは健在だった。しっかりとした守りこそが、攻撃のリズムを作っていったことは確かだ。

 高校野球は、投手を中心に守り勝つ野球でチームを作り上げていくことが多いが、投手力が高くても、打撃力が低いままでは、全国の舞台では勝ち上がることは難しい。それならば、作新学院のように打撃戦を制するだけの高い打力を持つチームに転換していく考えも必要だろう。

 そこで、大切なことはただ打力を強化するだけでなく、積極的な戦術も必要だ。作新学院の28歳とまだ若い小針監督が、失敗を恐れずに次々に強行策を仕掛けていった采配もまた見事だった。

 最後に、24年ぶりのベスト8進出を決めた習志野からも学ぶべき野球があった。優勝校・日大三と準々決勝で対戦し0対5で敗れたが、王者を倒すだけの力を最も擁していたチームだったといっても過言ではないだろう。彼らは、隙がなく安定した試合運びで、ここまで勝ち進んできた。
 投手陣はマウンド捌きが優れ、試合を作るのが上手い。またクイック、フィールディング、牽制といった細かい技術もみせた。守備では内外野ともに安定した守りで、引き締まった試合を展開していった。

 そして何より、習志野の走塁は今大会でもトップクラスだった。どの選手も塁に出れば次の塁をすかさず狙う姿勢が見られた。相手のミスを逃さず、一気に畳み掛ける。実は、昨年までの習志野といえば、その走塁や守備に対する意識はそこまで高くはなかった。しかし、この一年で守備・走塁のレベルは見違えるまで向上した。こうした隙のない野球を続けることで、全国でも勝ち進めるチームに成長できたのだろう。

(文=編集部)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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