試合レポート

習志野vs金沢

2011.08.17

試合巧者・習志野

 試合巧者が勝つか、剛腕が勝つか。
大会11日目第1試合は習志野(千葉)対金沢(石川)の対決。習志野は安定した試合運びで3回戦まで勝ち進んできた。
金沢は剛腕・釜田 佳直が前評判通りの実力を発揮し、勝ち上がってきた。一挙に畳みかける集中打がある習志野とはいえ、釜田を打ち崩すのは難しく、ロースコアが予想された。それだけに習志野は、先発投手に誰を送り出すのかが重要になる。

この日、習志野在原 一稀を先発に送り込んだ。
在原は千葉大会で4試合に登板。21回三分の1を投げて3失点と抜群の安定感を誇り、左のエース格である。
在原はスピードこそ130キロ前後と速くないが、スライダー、カーブを器用に投げ分けていき、初回は三者凡退に抑える上々の立ち上がり。
一方で釜田もまだエンジンがかからないが、140キロ中盤の速球とスライダーで習志野打線を封じていく。

先にチャンスを作ったのは習志野。一死から9番在原がセンター前ヒット。さらに宮内のヒットで続き、ワンアウト1、2塁。2番の片桐が三振で、3番福山。福山はレフト前ヒット。在原は躊躇なく三塁を回る。
三塁コーチャーも迷いなく手を回した。越田はバックホームするも、間に合わず。習志野は、釜田から貴重な1点を入れる。


しかし、1点を取られてからの釜田は圧巻だった。
尻上がりに球速を上げていき、最速153キロに到達。
それだけではない。150キロを超える速球が高めにすっぽ抜けることは少なく、140キロ台後半の速球と130キロ後半のキレ味抜群のスライダー。それが見事に外角にコントロールされていく。習志野の打者は完ぺきに封じ込まれていた。

金沢は、7回の表。一死二塁からチャンスを作る。ここで1番櫻吉。櫻吉はカーブを流し打ってレフト前ヒット。二塁走者は生還。これで1対1の同点に追いつく。しかし習志野の守りがクレバーだったのはここからだ。皆川はクロスプレーを諦め、すぐに二塁へ送球。打者走者の櫻吉は二塁でタッチアウト。同点にとどめた。
金沢にとっては同点に追いつき、尚もチャンスを広げたい場面。
しかしその反撃を断った中継プレーは見事であった。


しかし同点によって釜田が息を吹き返したことは間違いない。
先頭の斎藤を135キロの高速スライダーで空振り三振に切って取ると、代打の田中もショートゴロ。あっという間に二死になる。
ここで先ほどの打席でヒットを打っている在原に回る。在原は125キロの縦の変化球をセンター前にはじき返す。そして1番宮内は四球で歩き、1、2塁。片桐はカウント1-2からスライダーを引っ張りレフト前ヒット。これにより1点を勝ち越す。
点を取られたあとに習志野はすぐさま勝ち越しに成功。前の回で、相手の2点目を防ぎ、その裏に自ら1点を得した鮮やかな7回の表裏だった。

そして9回表、在原の完投まであと1イニング。4番石田が四球で歩くと、5番越田が送り、ワンアウト二塁。6番魚野が103キロのカーブをおっつけてレフト前ヒット。ただチャンスを拡げるヒットだと思うが、レフトの福山は予め前進して守っていた。定位置なら間違いなく同点。
福山のポジショニングが、またも習志野は小さな傷で済んだ。だが、続くランナー1、3塁のピンチにここで習志野は在原を諦め、木村を送る。

打者は8番田代。田代はここでセーフティスクイズ。しかし打球が強く投手の正面へ。三塁走者は戻ろうとするが、木村―田中と渡りツーアウト。
そして9番丹保は一、二塁間へ鋭い当たり。抜けそうな打球だったが、中村が横っ跳びキャッチ。

習志野が試合巧者ぶりを発揮し、ベスト8進出を決めた。守りでは随所に好プレーを見せ、得点を防いだ。そして攻撃では単打から果敢な走塁で釜田から2点を取る巧さも見せた。
次は日大三と対戦する。

(文=河嶋宗一)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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